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マタイ傳
🔝
〘1㌻〙
第1章
1
アブラハムの
子
こ
、ダビデの
子
こ
、イエス・キリストの
系圖
けいづ
。
2
アブラハム、イサクを
生
う
み、イサク、ヤコブを
生
う
み、ヤコブ、ユダとその
兄弟
きゃうだい
らとを
生
う
み、
3
ユダ、タマルによりてパレスとザラとを
生
う
み、パレス、エスロンを
生
う
み、エスロン、アラムを
生
う
み、
4
アラム、アミナダブを
生
う
み、アミナダブ、ナアソンを
生
う
み、ナアソン、サルモンを
生
う
み、
5
サルモン、ラハブによりてボアズを
生
う
み、ボアズ、ルツによりてオベデを
生
う
み、オベデ、エツサイを
生
う
み、
6
エツサイ、ダビデ
王
わう
を
生
う
めり。
ダビデ、ウリヤの
妻
つま
たりし
女
をんな
によりてソロモンを
生
う
み、
7
ソロモン、レハベアムを
生
う
み、レハベアム、アビヤを
生
う
み、アビヤ、アサを
生
う
み、
8
アサ、ヨサパテを
生
う
み、ヨサパテ、ヨラムを
生
う
み、ヨラム、ウジヤを
生
う
み、
9
ウジヤ、ヨタムを
生
う
み、ヨタム、アハズを
生
う
み、アハズ、ヒゼキヤを
生
う
み、
10
ヒゼキヤ、マナセを
生
う
み、マナセ、アモンを
生
う
み、アモン、ヨシヤを
生
う
み、
11
バビロンに
移
うつ
さるる
頃
ころ
、ヨシヤ、エコニヤとその
兄弟
きゃうだい
らとを
生
う
めり。
12
バビロンに
移
うつ
されて
後
のち
、エコニヤ、サラテルを
生
う
み、サラテル、ゾロバベルを
生
う
み、
13
ゾロバベル、アビウデを
生
う
み、アビウデ、エリヤキムを
生
う
み、エリヤキム、アゾルを
生
う
み、
14
アゾル、サドクを
生
う
み、サドク、アキムを
生
う
み、アキム、エリウデを
生
う
み、
15
エリウデ、エレアザルを
生
う
み、エレアザル、マタンを
生
う
み、マタン、ヤコブを
生
う
み、
16
ヤコブ、マリヤの
夫
をっと
ヨセフを
生
う
めり。
此
こ
のマリヤよりキリストと
稱
とな
ふるイエス
生
うま
れ
給
たま
へり。
1㌻
17
されば
總
すべ
て
世
よ
をふる
事
こと
、アブラハムよりダビデまで
十四代
じふよだい
、ダビデよりバビロンに
移
うつ
さるるまで
十四代
じふよだい
、バビロンに
移
うつ
されてよりキリストまで
十四代
じふよだい
なり。
18
イエス・キリストの
誕生
たんじゃう
は
左
さ
のごとし。その
母
はは
マリヤ、ヨセフと
許嫁
いひなづけ
したるのみにて、
未
いま
だ
偕
とも
にならざりしに、
聖󠄄
せい
靈
れい
によりて
孕
みごも
り、その
孕
みごも
りたること
顯
あらは
れたり。
19
夫
をっと
ヨセフは
正
たゞ
しき
人
ひと
にして
之
これ
を
公然
おほやけ
にするを
好
この
まず、
私
ひそか
に
離緣
りえん
せんと
思
おも
ふ。
20
斯
かく
て、これらの
事
こと
を
思
おも
ひ
囘
めぐ
らしをるとき、
視
み
よ、
主
しゅ
の
使
つかひ
、
夢
ゆめ
に
現
あらは
れて
言
い
ふ『ダビデの
子
こ
ヨセフよ、
妻
つま
マリヤを
納󠄃
い
るる
事
こと
を
恐
おそ
るな。その
胎
たい
に
宿
やど
る
者
もの
は
聖󠄄
せい
靈
れい
によるなり。
〘1㌻〙
21
かれ
子
こ
を
生
う
まん、
汝
なんぢ
その
名
な
をイエスと
名
な
づくべし。
己
おの
が
民
たみ
をその
罪
つみ
より
救
すく
ひ
給
たま
ふ
故
ゆゑ
なり』
22
すべて
此
こ
の
事
こと
の
起󠄃
おこ
りしは、
預言者
よげんしゃ
によりて
主
しゅ
の
云
い
ひ
給
たま
ひし
言
ことば
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
曰
いは
く、
23
『
視
み
よ、
處女
をとめ
みごもりて
子
こ
を
生
う
まん。 その
名
な
はインマヌエルと
稱
とな
へられん』
之
これ
を
釋
と
けば、
神
かみ
われらと
偕
とも
に
在
いま
すといふ
意󠄃
こゝろ
なり。
24
ヨセフ
寐
ねむり
より
起󠄃
お
き、
主
しゅ
の
使
つかひ
の
命
めい
ぜし
如
ごと
くして
妻
つま
を
納󠄃
い
れたり。
25
されど
子
こ
の
生
うま
るるまでは、
相
あひ
知
し
る
事
こと
なかりき。
斯
かく
てその
子
こ
をイエスと
名
な
づけたり。
第2章
1
イエスはヘロデ
王
わう
の
時
とき
、ユダヤのベツレヘムに
生
うま
れ
給
たま
ひしが、
視
み
よ、
東
ひがし
の
博士
はかせ
たちエルサレムに
來
きた
りて
言
い
ふ、
2
『ユダヤ
人
びと
の
王
わう
とて
生
うま
れ
給
たま
へる
者
もの
は、
何處
いづこ
に
在
いま
すか。
我
われ
ら《[*]》
東
ひがし
にてその
星
ほし
を
見
み
たれば、
拜
はい
せんために
來
きた
れり』[*或は「その星の上れるを見たれば」と譯す。]
3
ヘロデ
王
わう
これを
聞
き
きて
惱
なや
みまどふ、エルサレムも
皆
みな
然
しか
り。
4
王
わう
、
民
たみ
の
祭司長
さいしちゃう
・
學者
がくしゃ
らを
皆
みな
あつめて、キリストの
何處
いづこ
に
生
うま
るべきを
問
と
ひ
質
たゞ
す。
5
かれら
言
い
ふ『ユダヤのベツレヘムなり。それは
預言者
よげんしゃ
によりて、
2㌻
6
「ユダの
地
ち
ベツレヘムよ、
汝
なんぢ
は ユダの《[*]》
長
をさ
等
たち
の
中
うち
にて
最
いと
小
ちひさ
き
者
もの
にあらず、
汝
なんぢ
の
中
うち
より
一人
ひとり
の
君
きみ
いでて、 わが
民
たみ
イスラエルを
牧
ぼく
せん」と
錄
しる
されたるなり』[*或は「町」と譯す。]
7
ここにヘロデ
密
ひそか
に
博士
はかせ
たちを
招
まね
きて、
星
ほし
の
現
あらは
れし
時
とき
を
詳細
つまびらか
にし、
8
彼
かれ
らをベツレヘムに
遣󠄃
つかは
さんとして
言
い
ふ『
徃
ゆ
きて
幼兒
をさなご
のことを
細
こまか
にたづね、
之
これ
にあはば
我
われ
に
吿
つ
げよ。
我
われ
も
徃
ゆ
きて
拜
はい
せん』
9
彼
かれ
ら
王
わう
の
言
ことば
をききて
徃
ゆ
きしに、
視
み
よ、
前󠄃
さき
に《[*]》
東
ひがし
にて
見
み
し
星
ほし
、
先
さき
だちゆきて、
幼兒
をさなご
の
在
いま
すところの
上
うへ
に
止
とゞま
る。[*或は「その上れるを見たる星」と譯す。]
10
かれら
星
ほし
を
見
み
て、
歡喜
よろこび
に
溢󠄃
あふ
れつつ、
11
家
いへ
に
入
い
りて、
幼兒
をさなご
のその
母
はは
マリヤと
偕
とも
に
在
いま
すを
見
み
、
平󠄃伏
ひれふ
して
拜
はい
し、かつ
寶
たから
の
匣
はこ
をあけて、
黄金
わうごん
・
乳󠄃香
にうかう
・
沒藥
もつやく
など
禮物
れいもつ
を
獻
さゝ
げたり。
12
斯
かく
て
夢
ゆめ
にてヘロデの
許
もと
に
返󠄄
かへ
るなとの
御吿
みつげ
を
蒙
かうむ
り、ほかの
路
みち
より
己
おの
が
國
くに
に
去
さ
りゆきぬ。
13
その
去
さ
り
徃
ゆ
きしのち、
視
み
よ、
主
しゅ
の
使
つかひ
、
夢
ゆめ
にてヨセフに
現
あらは
れていふ『
起󠄃
お
きて、
幼兒
をさなご
とその
母
はは
とを
携
たづさ
へ、エジプトに
逃󠄄
のが
れ、わが
吿
つ
ぐるまで
彼處
かしこ
に
留
とゞま
れ。ヘロデ
幼兒
をさなご
を
索
もと
めて
亡
ほろぼ
さんとするなり』
14
ヨセフ
起󠄃
お
きて、
夜
よ
の
間
ま
に
幼兒
をさなご
とその
母
はは
とを
携
たづさ
へて、エジプトに
去
さ
りゆき、
〘2㌻〙
15
ヘロデの
死
し
ぬるまで
彼處
かしこ
に
留
とゞま
りぬ。これ
主
しゅ
が
預言者
よげんしゃ
によりて『
我
われ
エジプトより
我
わ
が
子
こ
を
呼
よ
び
出
いだ
せり』と
云
い
ひ
給
たま
ひし
言
ことば
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
16
爰
こゝ
にヘロデ、
博士
はかせ
たちに
賺
すか
されたりと
悟
さと
りて、
甚
はなは
だしく
憤
いきど
ほり、
人
ひと
を
遣󠄃
つかは
し、
博士
はかせ
たちに
由
よ
りて
詳細
つまびらか
にせし
時
とき
を
計
はか
り、ベツレヘム
及
およ
び
凡
すべ
てその
邊
ほとり
の
地方
ちはう
なる
二
に
歳
さい
以下
いか
の
男
をとこ
の
兒
こ
をことごとく
殺
ころ
せり。
17
ここに
預言者
よげんしゃ
エレミヤによりて
云
い
はれたる
言
ことば
は
成就
じゃうじゅ
したり。
曰
いは
く、
18
『
聲
こゑ
ラマにありて
聞
きこ
ゆ、
慟哭
なげき
なり、いとどしき
悲哀
かなしみ
なり。 ラケル
己
おの
が
子
こ
らを
歎
なげ
き、
子
こ
等
ら
のなき
故
ゆゑ
に
慰
なぐさ
めらるるを
厭
いと
ふ』
3㌻
19
ヘロデ
死
し
にてのち、
視
み
よ、
主
しゅ
の
使
つかひ
、
夢
ゆめ
にてエジプトなるヨセフに
現
あらは
れて
言
い
ふ、
20
『
起󠄃
お
きて、
幼兒
をさなご
とその
母
はは
とを
携
たづさ
へ、イスラエルの
地
ち
にゆけ。
幼兒
をさなご
の
生命
いのち
を
索
もと
めし
者
もの
どもは
死
し
にたり』
21
ヨセフ
起󠄃
お
きて、
幼兒
をさなご
とその
母
はは
とを
携
たづさ
へ、イスラエルの
地
ち
に
到
いた
りしに、
22
アケラオその
父󠄃
ちち
ヘロデに
代
かわ
りて、ユダヤを
治
をさ
むと
聞
き
き、
彼處
かしこ
に
徃
ゆ
くことを
恐
おそ
る。また
夢
ゆめ
にて
御吿
みつげ
を
蒙
かうむ
り、ガリラヤの
地方
ちはう
に
退󠄃
しりぞ
き、
23
ナザレといふ
町
まち
に
到
いた
りて
住󠄃
す
みたり。これは
預言者
よげんしゃ
たちに
由
よ
りて、
彼
かれ
はナザレ
人
びと
と
呼
よば
れん、と
云
い
はれたる
言
ことば
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
第3章
1
その
頃
ころ
バプテスマのヨハネ
來
きた
り、ユダヤの
荒野
あらの
にて
敎
をしへ
を
宣
の
べて
言
い
ふ
2
『なんぢら
悔改
くいあらた
めよ、
天國
てんこく
は
近󠄃
ちか
づきたり』
3
これ
預言者
よげんしゃ
イザヤによりて、
斯
か
く
云
い
はれし
人
ひと
なり、
曰
いは
く 『
荒野
あらの
に
呼
よば
はる
者
もの
の
聲
こゑ
す 「
主
しゅ
の
道󠄃
みち
を
備
そな
へ、 その
路
みち
すぢを
直
なほ
くせよ」』
4
このヨハネは
駱駝
らくだ
の
毛織衣
けおりごろも
をまとひ、
腰
こし
に
皮
かは
の
帶
おび
をしめ、
蝗
いなご
と
野蜜
のみつ
とを
食󠄃
しょく
とせり。
5
爰
こゝ
にエルサレム
及
およ
びユダヤ
全󠄃國
ぜんこく
またヨルダンの
邊
ほとり
なる
全󠄃地方
ぜんちはう
の
人々
ひとびと
、ヨハネの
許
もと
に
出
い
できたり、
6
罪
つみ
を
言
い
ひ
表
あらは
し、ヨルダン
川
がは
にてバプテスマを
受
う
けたり。
7
ヨハネ、パリサイ
人
びと
およびサドカイ
人
びと
のバプテスマを
受
う
けんとて、
多
おほ
く
來
きた
るを
見
み
て、
彼
かれ
らに
言
い
ふ『
蝮
まむし
の
裔
すゑ
よ、
誰
た
が
汝
なんぢ
らに、
來
きた
らんとする
御怒
みいかり
を
避󠄃
さ
くべき
事
こと
を
示
しめ
したるぞ。
8
さらば
悔改
くいあらため
に
相應
ふさは
しき
果
み
を
結
むす
べ。
9
汝
なんぢ
ら「われらの
父󠄃
ちち
にアブラハムあり」と
心
こゝろ
のうちに
言
い
はんと
思
おも
ふな。
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
神
かみ
は
此
これ
らの
石
いし
よりアブラハムの
子
こ
らを
起󠄃
おこ
し
得給
えたま
ふなり。
〘3㌻〙
10
斧
をの
ははや
樹
き
の
根
ね
に
置
お
かる。されば
凡
すべ
て
善
よ
き
果
み
を
結
むす
ばぬ
樹
き
は、
伐
き
られて
火
ひ
に
投
な
げ
入
い
れらるべし。
11
我
われ
は
汝
なんぢ
らの
悔改
くいあらため
のために、
水
みづ
にてバプテスマを
施
ほどこ
す。されど
我
われ
より
後
のち
にきたる
者
もの
は、
我
われ
よりも
能力
ちから
あり、
我
われ
はその
鞋
くつ
をとるにも
足
た
らず、
彼
かれ
は
聖󠄄
せい
靈
れい
と
火
ひ
とにて
汝
なんぢ
らにバプテスマを
施
ほどこ
さん。
4㌻
12
手
て
には
箕
み
を
持
も
ちて
禾場
うちば
をきよめ、その
麥
むぎ
は
倉
くら
に
納󠄃
をさ
め、
殼
から
は
消󠄃
き
えぬ
火
ひ
にて
燒
や
きつくさん』
13
爰
こゝ
にイエス、ヨハネにバプテスマを
受
う
けんとて、ガリラヤよりヨルダンに
來
きた
り
給
たま
ふ。
14
ヨハネ
之
これ
を
止
とゞ
めんとして
言
い
ふ『われは
汝
なんぢ
にバプテスマを
受
う
くべき
者
もの
なるに、
反
かへ
つて
我
われ
に
來
きた
り
給
たま
ふか』
15
イエス
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
今
いま
は
許
ゆる
せ、われら
斯
か
く
正
たゞ
しき
事
こと
をことごとく
爲遂󠄅
しと
ぐるは、
當然
たうぜん
なり』ヨハネ
乃
すなは
ち
許
ゆる
せり。
16
イエス、バプテスマを
受
う
けて
直
たゞ
ちに
水
みづ
より
上
あが
り
給
たま
ひしとき、
視
み
よ、
天
てん
ひらけ、
神
かみ
の
御靈
みたま
の、
鴿
はと
のごとく
降
くだ
りて
己
おの
が
上
うへ
にきたるを
見
み
給
たま
ふ。
17
また
天
てん
より
聲
こゑ
あり、
曰
いは
く『これは
我
わ
が
愛
いつく
しむ
子
こ
、わが
悅
よろこ
ぶ
者
もの
なり』
第4章
1
爰
こゝ
にイエス
御靈
みたま
によりて
荒野
あらの
に
導󠄃
みちび
かれ
給
たま
ふ、
惡魔󠄃
あくま
に
試
こゝろ
みられんと
爲
す
るなり。
2
四十
しじふ
日
にち
、
四十
しじふ
夜
や
、
斷食󠄃
だんじき
して、
後
のち
に
飢󠄄
う
ゑたまふ。
3
試
こゝろ
むる
者
もの
きたりて
言
い
ふ『なんぢ
若
も
し
神
かみ
の
子
こ
ならば、
命
めい
じて
此
これ
等
ら
の
石
いし
をパンと
爲
な
らしめよ』
4
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『「
人
ひと
の
生
い
くるはパンのみに
由
よ
るにあらず、
神
かみ
の
口
くち
より
出
い
づる
凡
すべ
ての
言
ことば
に
由
よ
る」と
錄
しる
されたり』
5
ここに
惡魔󠄃
あくま
イエスを
聖󠄄
せい
なる
都
みやこ
につれゆき、
宮
みや
の
頂上
いたゞき
に
立
た
たせて
言
い
ふ、
6
『なんぢもし
神
かみ
の
子
こ
ならば
己
おの
が
身
み
を
下
した
に
投
な
げよ。それは 「なんぢの
爲
ため
に
御使
みつかひ
たちに
命
めい
じ
給
たま
はん。
彼
かれ
ら
手
て
にて
汝
なんぢ
を
支
さゝ
へ、その
足
あし
を
石
いし
にうち
當
あ
つること
無
な
からしめん」と
錄
しる
されたるなり』
7
イエス
言
い
ひたまふ『「
主
しゅ
なる
汝
なんぢ
の
神
かみ
を
試
こゝろ
むべからず」と、また
錄
しる
されたり』
5㌻
8
惡魔󠄃
あくま
またイエスを
最
いと
高
たか
き
山
やま
につれゆき、
世
よ
のもろもろの
國
くに
と、その
榮華
えいぐわ
とを
示
しめ
して
言
い
ふ、
9
『なんぢ
若
も
し
平󠄃伏
ひれふ
して
我
われ
を
拜
はい
せば、
此
これ
等
ら
を
皆
みな
なんぢに
與
あた
へん』
10
爰
こゝ
にイエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『サタンよ、
退󠄃
しりぞ
け「
主
しゅ
なる
汝
なんぢ
の
神
かみ
を
拜
はい
し、ただ
之
これ
にのみ
事
つか
へ
奉
まつ
るべし」と
錄
しる
されたるなり』
11
ここに
惡魔󠄃
あくま
は
離
はな
れ
去
さ
り、
視
み
よ、
御使
みつかひ
たち
來
きた
り
事
つか
へぬ。
12
イエス、ヨハネの
囚
とら
はれし
事
こと
をききて、ガリラヤに
退󠄃
しりぞ
き、
〘4㌻〙
13
後
のち
ナザレを
去
さ
りて、ゼブルンとナフタリとの
境
さかひ
なる
海邊
うみべ
のカペナウムに
到
いた
りて
住󠄃
す
み
給
たま
ふ。
14
これは
預言者
よげんしゃ
イザヤによりて
云
い
はれたる
言
ことば
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
曰
いは
く
15
『ゼブルンの
地
ち
、ナフタリの
地
ち
、
海
うみ
の
邊
ほとり
、ヨルダンの
彼方
かなた
、
異邦人
いはうじん
のガリラヤ、
16
暗󠄃
くら
きに
坐
ざ
する
民
たみ
は、
大
おほい
なる
光
ひかり
を
見
み
、
死
し
の
地
ち
と
死
し
の
蔭
かげ
とに
坐
ざ
する
者
もの
に、
光
ひかり
のぼれり』
17
この
時
とき
よりイエス
敎
をしへ
を
宣
の
べはじめて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
悔改
くいあらた
めよ、
天國
てんこく
は
近󠄃
ちか
づきたり』
18
斯
かく
て、ガリラヤの
海邊
うみべ
をあゆみて、
二人
ふたり
の
兄弟
きゃうだい
ペテロといふシモンとその
兄弟
きゃうだい
アンデレとが、
海
うみ
に
網
あみ
打
う
ちをるを
見
み
給
たま
ふ、かれらは
漁人
すなどりびと
なり。
19
これに
言
い
ひたまふ『
我
われ
に
從
したが
ひきたれ、
然
さ
らば
汝
なんぢ
らを
人
ひと
を
漁
すなど
る
者
もの
となさん』
20
かれら
直
たゞ
ちに
網
あみ
をすてて
從
したが
ふ。
21
更
さら
に
進󠄃
すゝ
みゆきて、
又󠄂
また
ふたりの
兄弟
きゃうだい
、ゼベダイの
子
こ
ヤコブとその
兄弟
きゃうだい
ヨハネとが、
父󠄃
ちち
ゼベダイとともに
舟
ふね
にありて
網
あみ
を
繕
つくろ
ひをるを
見
み
て
呼
よ
び
給
たま
へば、
22
直
たゞ
ちに
舟
ふね
と
父󠄃
ちち
とを
置
お
きて
從
したが
ふ。
23
イエス
徧
あまね
くガリラヤを
巡󠄃
めぐ
り、
會堂
くわいだう
にて
敎
をしへ
をなし、
御國
みくに
の
福音󠄃
ふくいん
を
宣
の
べつたへ、
民
たみ
の
中
うち
のもろもろの
病
やまひ
、もろもろの
疾患
わづらひ
をいやし
給
たま
ふ。
6㌻
24
その
噂
うはさ
あまねくシリヤに
廣
ひろ
まり、
人々
ひとびと
すべての
惱
なや
めるもの、
即
すなは
ちさまざまの
病
やまひ
と
苦痛
くるしみ
とに
罹
かゝ
れるもの、
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたるもの、
癲癇
てんかん
および
中風
ちゅうぶ
の
者
もの
などを
連
つ
れ
來
きた
りたれば、イエス
之
これ
を
醫
いや
したまふ。
25
ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ
及
およ
びヨルダンの
彼方
かなた
より
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
きたり
從
したが
へり。
第5章
1
イエス
群衆
ぐんじゅう
を
見
み
て、
山
やま
にのぼり、
座
ざ
し
給
たま
へば、
弟子
でし
たち
御許
みもと
にきたる。
2
イエス
口
くち
をひらき、
敎
をし
へて
言
い
ひたまふ、
3
『
幸福
さいはひ
なるかな、
心
こゝろ
の
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
。
天國
てんこく
はその
人
ひと
のものなり。
4
幸福
さいはひ
なるかな、
悲
かな
しむ
者
もの
。その
人
ひと
は
慰
なぐさ
められん。
5
幸福
さいはひ
なるかな、
柔和
にうわ
なる
者
もの
。その
人
ひと
は
地
ち
を
嗣
つ
がん。
6
幸福
さいはひ
なるかな、
義
ぎ
に
飢󠄄
う
ゑ
渇
かわ
く
者
もの
。その
人
ひと
は
飽󠄄
あ
くことを
得
え
ん。
7
幸福
さいはひ
なるかな、
憐憫
あはれみ
ある
者
もの
。その
人
ひと
は
憐憫
あはれみ
を
得
え
ん。
8
幸福
さいはひ
なるかな、
心
こゝろ
の
淸
きよ
き
者
もの
。その
人
ひと
は
神
かみ
を
見
み
ん。
9
幸福
さいはひ
なるかな、
平󠄃和
へいわ
ならしむる
者
もの
。その
人
ひと
は
神
かみ
の
子
こ
と
稱
とな
へられん。
10
幸福
さいはひ
なるかな、
義
ぎ
のために
責
せ
められたる
者
もの
。
天國
てんこく
はその
人
ひと
のものなり。
11
我
わ
がために、
人
ひと
なんぢらを
罵
のゝし
り、また
責
せ
め、
詐
いつは
りて
各樣
さまざま
の
惡
あ
しきことを
言
い
ふときは、
汝
なんぢ
ら
幸福
さいはひ
なり。
〘5㌻〙
12
喜
よろこ
びよろこべ、
天
てん
にて
汝
なんぢ
らの
報
むくい
は
大
おほい
なり。
汝
なんぢ
等
ら
より
前󠄃
さき
にありし
預言者
よげんしゃ
たちをも、
斯
か
く
責
せ
めたりき。
13
汝
なんぢ
らは
地
ち
の
鹽
しほ
なり、
鹽
しほ
もし
效力
かうりょく
を
失
うしな
はば、
何
なに
をもてか
之
これ
に
鹽
しほ
すべき。
後
のち
は
用
よう
なし、
外
そと
にすてられて
人
ひと
に
蹈
ふ
まるるのみ。
14
汝
なんぢ
らは
世
よ
の
光
ひかり
なり。
山
やま
の
上
うへ
にある
町
まち
は
隱
かく
るることなし。
15
また
人
ひと
は
燈火
ともしび
をともして
升
ます
の
下
した
におかず、
燈臺
とうだい
の
上
うへ
におく。
斯
かく
て
燈火
ともしび
は
家
いへ
にある
凡
すべ
ての
物
もの
を
照
てら
すなり。
16
斯
かく
のごとく
汝
なんぢ
らの
光
ひかり
を
人
ひと
の
前󠄃
まへ
にかがやかせ。これ
人
ひと
の
汝
なんぢ
らが
善
よ
き
行爲
おこなひ
を
見
み
て、
天
てん
にいます
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
を
崇
あが
めん
爲
ため
なり。
7㌻
17
われ
律法
おきて
また
預言者
よげんしゃ
を
毀
こぼ
つために
來
きた
れりと
思
おも
ふな。
毀
こぼ
たんとて
來
きた
らず、
反
かへ
つて
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
18
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
天
てん
地
ち
の
過󠄃
す
ぎ
徃
ゆ
かぬうちに、
律法
おきて
の
一點
いってん
、
一畫
いっかく
も
廢
すた
ることなく、
悉
ことご
とく
全󠄃
まった
うせらるべし。
19
この
故
ゆゑ
にもし
此
これ
等
ら
のいと
小
ちひさ
き
誡命
いましめ
の
一
ひと
つをやぶり、
且
かつ
その
如
ごと
く
人
ひと
に
敎
をし
ふる
者
もの
は、
天國
てんこく
にて
最
いと
小
ちひさ
き
者
もの
と
稱
とな
へられ、
之
これ
を
行
おこな
ひ、かつ
人
ひと
に
敎
をし
ふる
者
もの
は、
天國
てんこく
にて
大
おほい
なる
者
もの
と
稱
とな
へられん。
20
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
汝
なんぢ
らの
義
ぎ
、
學者
がくしゃ
・パリサイ
人
びと
に
勝󠄃
まさ
らずば、
天國
てんこく
に
入
い
ること
能
あた
はず。
21
古
いにし
への
人
ひと
に「
殺
ころ
すなかれ、
殺
ころ
す
者
もの
は
審判󠄄
さばき
にあふべし」と
云
い
へることあるを
汝
なんぢ
等
ら
きけり。
22
然
さ
れど
我
われ
は
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、すべて
兄弟
きゃうだい
を
怒
いか
る
者
もの
は、
審判󠄄
さばき
にあふべし。また
兄弟
きゃうだい
に
對
むか
ひて、
愚
おろか
者
もの
よといふ
者
もの
は、
衆議
しゅうぎ
にあふべし。また
痴者
しれもの
よといふ
者
もの
は、ゲヘナの
火
ひ
にあふべし。
23
この
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
もし
供物
そなへもの
を
祭壇
さいだん
にささぐる
時
とき
、そこにて
兄弟
きゃうだい
に
怨
うら
まるる
事
こと
あるを
思
おも
ひ
出
いだ
さば、
24
供物
そなへもの
を
祭壇
さいだん
のまへに
遺󠄃
のこ
しおき、
先
ま
づ
徃
ゆ
きて、その
兄弟
きゃうだい
と
和睦
わぼく
し、
然
しか
るのち
來
きた
りて、
供物
そなへもの
をささげよ。
25
なんぢを
訴
うった
ふる
者
もの
とともに
途󠄃
みち
に
在
あ
るうちに、
早
はや
く
和解
わかい
せよ。
恐
おそ
らくは、
訴
うった
ふる
者
もの
なんぢを
審判󠄄
さばき
人
びと
にわたし、
審判󠄄
さばき
人
びと
は
下役
したやく
にわたし、
遂󠄅
つひ
になんぢは
獄
ひとや
に
入
い
れられん。
26
誠
まこと
に、
汝
なんぢ
に
吿
つ
ぐ、
一
いち
厘
りん
も
殘
のこ
りなく
償
つぐの
はずば、
其處
そこ
をいづること
能
あた
はじ。
27
「
姦淫
かんいん
するなかれ」と
云
い
へることあるを
汝
なんぢ
等
ら
きけり。
28
されど
我
われ
は
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、すべて
色情󠄃
しきじゃう
を
懷
いだ
きて
女
をんな
を
見
み
るものは、
旣
すで
に
心
こゝろ
のうち
姦淫
かんいん
したるなり。
29
もし
右
みぎ
の
目
め
なんぢを
躓
つまづ
かせば、
抉
くじ
り
出
いだ
して
棄
す
てよ、
五體
ごたい
の
一
ひと
つ
亡
ほろ
びて、
全󠄃身
ぜんしん
ゲヘナに
投
な
げ
入
い
れられぬは
益
えき
なり。
8㌻
30
もし
右
みぎ
の
手
て
なんぢを
躓
つまづ
かせば、
切
き
りて
棄
す
てよ、
五體
ごたい
の
一
ひと
つ
亡
ほろ
びて、
全󠄃身
ぜんしん
ゲヘナに
徃
ゆ
かぬは
益
えき
なり。
〘6㌻〙
31
また「
妻
つま
をいだす
者
もの
は
離緣狀
りえんじゃう
を
與
あた
ふべし」と
云
い
へることあり。
32
されど
我
われ
は
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
淫行
いんかう
の
故
ゆゑ
ならで
其
そ
の
妻
つま
をいだす
者
もの
は、これに
姦淫
かんいん
を
行
おこな
はしむるなり。また
出
いだ
されたる
女
をんな
を
娶
めと
るものは、
姦淫
かんいん
を
行
おこな
ふなり。
33
また
古
いにし
への
人
ひと
に「いつはり
誓
ちか
ふなかれ、なんぢの
誓
ちかひ
は
主
しゅ
に
果
はた
すべし」と
云
い
へる
事
こと
あるを
汝
なんぢ
ら
聞
き
けり。
34
されど
我
われ
は
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
一切
いっさい
ちかふな、
天
てん
を
指
さ
して
誓
ちか
ふな、
神
かみ
の
御座
みくら
なればなり。
35
地
ち
を
指
さ
して
誓
ちか
ふな、
神
かみ
の
足臺
あしだい
なればなり。エルサレムを
指
さ
して
誓
ちか
ふな、
大君
おほきみ
の
都
みやこ
なればなり。
36
己
おの
が
頭
かしら
を
指
さ
して
誓
ちか
ふな、なんぢ
頭髮
かみのけ
一筋
ひとすじ
だに
白
しろ
くし、また
黑
くろ
くし
能
あた
はねばなり。
37
ただ
然
しか
り
然
しか
り、
否
いな
否
いな
といへ、
之
これ
に
過󠄃
す
ぐるは
惡
あく
より
出
い
づるなり。
38
「
目
め
には
目
め
を、
齒
は
には
齒
は
を」と
云
い
へることあるを
汝
なんぢ
ら
聞
き
けり。
39
されど
我
われ
は
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
惡
あ
しき
者
もの
に
抵抗
てむか
ふな。
人
ひと
もし
汝
なんぢ
の
右
みぎ
の
頬
ほほ
をうたば、
左
ひだり
をも
向
む
けよ。
40
なんぢを
訟
うった
へて
下衣
したぎ
を
取
と
らんとする
者
もの
には、
上衣
うはぎ
をも
取
と
らせよ。
41
人
ひと
もし
汝
なんぢ
に
一里
いちり
ゆくことを
强
し
ひなば、
共
とも
に
二里
にり
ゆけ。
42
なんぢに
請󠄃
こ
ふ
者
もの
にあたへ、
借
か
らんとする
者
もの
を
拒
こば
むな。
43
「なんぢの
隣
となり
を
愛
あい
し、なんぢの
仇
あた
を
憎
にく
むべし」と
云
い
へることあるを
汝
なんぢ
等
ら
きけり。
44
されど
我
われ
は
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
汝
なんぢ
らの
仇
あた
を
愛
あい
し、
汝
なんぢ
らを
責
せ
むる
者
もの
のために
祈
いの
れ。
45
これ
天
てん
にいます
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
の
子
こ
とならん
爲
ため
なり。
天
てん
の
父󠄃
ちち
は、その
日
ひ
を
惡
あ
しき
者
もの
のうへにも、
善
よ
き
者
もの
のうへにも
昇
のぼ
らせ、
雨
あめ
を
正
たゞ
しき
者
もの
にも、
正
たゞ
しからぬ
者
もの
にも
降
ふ
らせ
給
たま
ふなり。
9㌻
46
なんぢら
己
おのれ
を
愛
あい
する
者
もの
を
愛
あい
すとも
何
なに
の
報
むくい
をか
得
う
べき、
取税人
しゅぜいにん
も
然
しか
するにあらずや。
47
兄弟
きゃうだい
にのみ
挨拶
あいさつ
すとも
何
なに
の
勝󠄃
まさ
ることかある、
異邦人
いはうじん
も
然
しか
するにあらずや。
48
然
さ
らば
汝
なんぢ
らの
天
てん
の
父󠄃
ちち
の
全󠄃
まった
きが
如
ごと
く、
汝
なんぢ
らも
全󠄃
まった
かれ。
第6章
1
汝
なんぢ
ら
見
み
られんために
己
おの
が
義
ぎ
を
人
ひと
の
前󠄃
まへ
にて
行
おこな
はぬやうに
心
こゝろ
せよ。
然
しか
らずば、
天
てん
にいます
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
より
報
むくい
を
得
え
じ。
2
さらば
施濟
ほどこし
をなすとき、
僞善者
ぎぜんしゃ
が
人
ひと
に
崇
あが
められんとて
會堂
くわいだう
や
街
ちまた
にて
爲
な
すごとく、
己
おの
が
前󠄃
まへ
にラッパを
鳴
なら
すな。
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
彼
かれ
らは
旣
すで
にその
報
むくい
を
得
え
たり。
3
汝
なんぢ
は
施濟
ほどこし
をなすとき、
右
みぎ
の
手
て
のなすことを
左
ひだり
の
手
て
に
知
し
らすな。
4
是
これ
はその
施濟
ほどこし
の
隱
かく
れん
爲
ため
なり。
然
さ
らば
隱
かく
れたるに
見
み
たまふ
汝
なんぢ
の
父󠄃
ちち
は
報
むく
い
給
たま
はん。
5
なんぢら
祈
いの
るとき、
僞善者
ぎぜんしゃ
の
如
ごと
くあらざれ。
彼
かれ
らは
人
ひと
に
顯
あらは
さんとて、
會堂
くわいだう
や
大路
おほじ
の
角
かど
に
立
た
ちて
祈
いの
ることを
好
この
む。
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、かれらは
旣
すで
にその
報
むくい
を
得
え
たり。
〘7㌻〙
6
なんぢは
祈
いの
るとき、
己
おの
が
部屋
へや
にいり、
戶
と
を
閉
と
ぢて、
隱
かく
れたるに
在
いま
す
汝
なんぢ
の
父󠄃
ちち
に
祈
いの
れ。さらば
隱
かく
れたるに
見
み
給
たま
ふなんぢの
父󠄃
ちち
は
報
むく
い
給
たま
はん。
7
また
祈
いの
るとき、
異邦人
いはうじん
の
如
ごと
く
徒
いたづ
らに
言
ことば
を
反復
くりかへ
すな。
彼
かれ
らは
言
ことば
多
おほ
きによりて
聽
き
かれんと
思
おも
ふなり。
8
さらば
彼
かれ
らに
效
なら
ふな、
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
は
求
もと
めぬ
前󠄃
さき
に、なんぢらの
必要󠄃
ひつえう
なる
物
もの
を
知
し
りたまふ。
9
この
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
らは
斯
か
く
祈
いの
れ。「
天
てん
にいます
我
われ
らの
父󠄃
ちち
よ、
願
ねがは
くは、
御名
みな
の《[*]》
崇
あが
められん
事
こと
を。[*或は「聖󠄄とせられん事を」と譯す。]
10
御國
みくに
の
來
きた
らんことを。
御意󠄃
みこゝろ
の
天
てん
のごとく、
地
ち
にも
行
おこな
はれん
事
こと
を。
11
我
われ
らの
日用
にちよう
の
糧
かて
を
今日
けふ
もあたへ
給
たま
へ。
10㌻
12
我
われ
らに
負󠄅債
おひめ
ある
者
もの
を
我
われ
らの
免
ゆる
したる
如
ごと
く、
我
われ
らの
負󠄅債
おひめ
をも
免
ゆる
し
給
たま
へ。
13
我
われ
らを
嘗試
こころみ
に
遇󠄃
あ
はせず、《[*]》
惡
あく
より
救
すく
ひ
出
いだ
したまへ」[*或は「惡しき者」と譯す。異本一三の末に「國と威力と榮光とは、とこしへに汝のものなればなり、アァメン」と云ふ句あり。]
14
汝
なんぢ
等
ら
もし
人
ひと
の
過󠄃失
あやまち
を
免
ゆる
さば、
汝
なんぢ
らの
天
てん
の
父󠄃
ちち
も
汝
なんぢ
らを
免
ゆる
し
給
たま
はん。
15
もし
人
ひと
を
免
ゆる
さずば、
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
も
汝
なんぢ
らの
過󠄃失
あやまち
を
免
ゆる
し
給
たま
はじ。
16
なんぢら
斷食󠄃
だんじき
するとき、
僞善者
ぎぜんしゃ
のごとく、
悲
かな
しき
面容
おももち
をすな。
彼
かれ
らは
斷食󠄃
だんじき
することを
人
ひと
に
顯
あらは
さんとて、その
顏
かほ
色
いろ
を
害󠄅
そこな
ふなり。
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
彼
かれ
らは
旣
すで
にその
報
むくい
を
得
え
たり。
17
なんぢは
斷食󠄃
だんじき
するとき、
頭
かしら
に
油
あぶら
をぬり、
顏
かほ
をあらへ。
18
これ
斷食󠄃
だんじき
することの
人
ひと
に
顯
あらは
れずして、
隱
かく
れたるに
在
いま
す
汝
なんぢ
の
父󠄃
ちち
にあらはれん
爲
ため
なり。さらば
隱
かく
れたるに
見
み
たまふ
汝
なんぢ
の
父󠄃
ちち
は
報
むく
い
給
たま
はん。
19
なんぢら
己
おの
がために
財寶
たから
を
地
ち
に
積
つ
むな、ここは
蟲
むし
と
錆
さび
とが
損
そこな
ひ、
盜人
ぬすびと
うがちて
盜
ぬす
むなり。
20
なんぢら
己
おの
がために
財寶
たから
を
天
てん
に
積
つ
め、かしこは
蟲
むし
と
錆
さび
とが
損
そこな
はず、
盜人
ぬすびと
うがちて
盜
ぬす
まぬなり。
21
なんぢの
財寶
たから
のある
所󠄃
ところ
には、なんぢの
心
こゝろ
もあるべし。
22
身
み
の
燈火
ともしび
は
目
め
なり。この
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
の
目
め
ただしくば、
全󠄃身
ぜんしん
あかるからん。
23
然
さ
れど、なんぢの
目
め
あしくば、
全󠄃身
ぜんしん
くらからん。もし
汝
なんぢ
の
內
うち
の
光
ひかり
、
闇
やみ
ならば、その
闇
やみ
いかばかりぞや。
24
人
ひと
は
二人
ふたり
の
主
しゅ
に
兼󠄄
かね
事
つか
ふること
能
あた
はず、
或
あるひ
は、これを
憎
にく
み、かれを
愛
あい
し、
或
あるひ
は、これに
親
した
しみ、かれを
輕
かろ
しむべければなり。
汝
なんぢ
ら
神
かみ
と
富
とみ
とに
兼󠄄
かね
事
つか
ふること
能
あた
はず。
25
この
故
ゆゑ
に
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
何
なに
を
食󠄃
くら
ひ、
何
なに
を
飮
の
まんと
生命
いのち
のことを
思
おも
ひ
煩
わづら
ひ、
何
なに
を
著
き
んと
體
からだ
のことを
思
おも
ひ
煩
わづら
ふな。
生命
いのち
は
糧
かて
にまさり、
體
からだ
は
衣
ころも
に
勝󠄃
まさ
るならずや。
26
空󠄃
そら
の
鳥
とり
を
見
み
よ、
播
ま
かず、
刈
か
らず、
倉
くら
に
收
をさ
めず、
然
しか
るに
汝
なんぢ
らの
天
てん
の
父󠄃
ちち
は、これを
養󠄄
やしな
ひたまふ。
汝
なんぢ
らは
之
これ
よりも
遙
はるか
に
優
すぐ
るる
者
もの
ならずや。
27
汝
なんぢ
らの
中
うち
たれか
思
おも
ひ
煩
わづら
ひて《[*]》
身
み
の
長
たけ
一尺
いっしゃく
を
加
くは
へ
得
え
んや。[*或は「その生命を寸陰も延べ得んや」と譯す。]
11㌻
28
又󠄂
また
なにゆゑ
衣
ころも
のことを
思
おも
ひ
煩
わづら
ふや。《[*]》
野
の
の
百合
ゆり
は
如何
いか
にして
育
そだ
つかを
思
おも
へ、
勞
らう
せず、
紡
つむ
がざるなり。[*或は「野の花」と譯す。]
〘8㌻〙
29
然
さ
れど
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
榮華
えいぐわ
を
極
きは
めたるソロモンだに、その
服󠄃裝
よそほひ
この
花
はな
の
一
ひと
つにも
及
し
かざりき。
30
今日
けふ
ありて
明日
あす
、
爐
ろ
に
投
な
げ
入
い
れらるる
野
の
の
草
くさ
をも、
神
かみ
はかく
裝
よそほ
ひ
給
たま
へば、まして
汝
なんぢ
らをや、ああ
信仰
しんかう
うすき
者
もの
よ。
31
さらば
何
なに
を
食󠄃
くら
ひ、
何
なに
を
飮
の
み、
何
なに
を
著
き
んとて
思
おも
ひ
煩
わづら
ふな。
32
是
これ
みな
異邦人
いはうじん
の
切
せつ
に
求
もと
むる
所󠄃
ところ
なり。
汝
なんぢ
らの
天
てん
の
父󠄃
ちち
は
凡
すべ
てこれらの
物
もの
の
汝
なんぢ
らに
必要󠄃
ひつえう
なるを
知
し
り
給
たま
ふなり。
33
まづ
神
かみ
の
國
くに
と
神
かみ
の
義
ぎ
とを
求
もと
めよ、
然
さ
らば
凡
すべ
てこれらの
物
もの
は
汝
なんぢ
らに
加
くは
へらるべし。
34
この
故
ゆゑ
に
明日
あす
のことを
思
おも
ひ
煩
わづら
ふな、
明日
あす
は
明日
あす
みづから
思
おも
ひ
煩
わづら
はん。
一日
いちにち
の
苦勞
くらう
は
一日
いちにち
にて
足
た
れり。
第7章
1
なんぢら
人
ひと
を
審
さば
くな、
審
さば
かれざらん
爲
ため
なり。
2
己
おの
がさばく
審判󠄄
さばき
にて
己
おのれ
もさばかれ、
己
おの
がはかる
量
はかり
にて
己
おのれ
も
量
はか
らるべし。
3
何
なに
ゆゑ
兄弟
きゃうだい
の
目
め
にある《[*]》
塵
ちり
を
見
み
て、おのが
目
め
にある
梁木
うつばり
を
認󠄃
みと
めぬか。[*或は「木屑」と譯す。四、五節なるも同じ。]
4
視
み
よ、おのが
目
め
に
梁木
うつばり
のあるに、いかで
兄弟
きゃうだい
にむかひて、
汝
なんぢ
の
目
め
より
塵
ちり
をとり
除
のぞ
かせよと
言
い
ひ
得
え
んや。
5
僞善者
ぎぜんしゃ
よ、まづ
己
おの
が
目
め
より
梁木
うつばり
をとり
除
のぞ
け、さらば
明
あきら
かに
見
み
えて
兄弟
きゃうだい
の
目
め
より
塵
ちり
を
取
と
りのぞき
得
え
ん。
6
聖󠄄
せい
なる
物
もの
を
犬
いぬ
に
與
あた
ふな。また
眞珠
しんじゅ
を
豚
ぶた
の
前󠄃
まへ
に
投
な
ぐな。
恐
おそ
らくは
足
あし
にて
蹈
ふ
みつけ、
向
む
き
返󠄄
かへ
りて
汝
なんぢ
らを
噛
か
みやぶらん。
7
求
もと
めよ、
然
さ
らば
與
あた
へられん。
尋󠄃
たづ
ねよ、さらば
見出
みいだ
さん。
門
もん
を
叩
たゝ
け、さらば
開
ひら
かれん。
8
すべて
求
もと
むる
者
もの
は
得
え
、たづぬる
者
もの
は
見
み
いだし、
門
もん
をたたく
者
もの
は
開
ひら
かるるなり。
9
汝
なんぢ
等
ら
のうち、
誰
たれ
かその
子
こ
パンを
求
もと
めんに
石
いし
を
與
あた
へ、
12㌻
10
魚
うを
を
求
もと
めんに
蛇
へび
を
與
あた
へんや。
11
然
さ
らば、
汝
なんぢ
ら
惡
あ
しき
者
もの
ながら、
善
よ
き
賜物
たまもの
をその
子
こ
らに
與
あた
ふるを
知
し
る。まして
天
てん
にいます
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
は、
求
もと
むる
者
もの
に
善
よ
き
物
もの
を
賜
たま
はざらんや。
12
然
さ
らば
凡
すべ
て
人
ひと
に
爲
せ
られんと
思
おも
ふことは、
人
ひと
にも
亦
また
その
如
ごと
くせよ。これは
律法
おきて
なり、
預言者
よげんしゃ
なり。
13
狹
せま
き
門
もん
より
入
い
れ、
滅
ほろび
にいたる
門
もん
は
大
おほ
きく、その
路
みち
は
廣
ひろ
く、
之
これ
より
入
い
る
者
もの
おほし。
14
生命
いのち
にいたる
門
もん
は
狹
せま
く、その
路
みち
は
細
ほそ
く、
之
これ
を
見
み
出
いだ
す
者
もの
すくなし。
〘9㌻〙
15
僞
にせ
預言者
よげんしゃ
に
心
こゝろ
せよ、
羊
ひつじ
の
扮裝
よそほひ
して
來
きた
れども、
內
うち
は
奪
うば
ひ
掠
かす
むる
豺狼
おほかみ
なり。
16
その
果
み
によりて
彼
かれ
らを
知
し
るべし。
茨
いばら
より
葡萄
ぶだう
を、
薊
あざみ
より
無花果
いちぢく
をとる
者
もの
あらんや。
17
斯
か
く、すべて
善
よ
き
樹
き
は
善
よ
き
果
み
をむすび、
惡
あ
しき
樹
き
は
惡
あ
しき
果
み
をむすぶ。
18
善
よ
き
樹
き
は
惡
あ
しき
果
み
を
結
むす
ぶこと
能
あた
はず、
惡
あ
しき
樹
き
はよき
果
み
を
結
むす
ぶこと
能
あた
はず。
19
すべて
善
よ
き
果
み
を
結
むす
ばぬ
樹
き
は、
伐
き
られて
火
ひ
に
投
な
げ
入
い
れらる。
20
然
さ
らば、その
果
み
によりて
彼
かれ
らを
知
し
るべし。
21
我
われ
に
對
むか
ひて
主
しゅ
よ
主
しゅ
よといふ
者
もの
、ことごとくは
天國
てんこく
に
入
い
らず、ただ
天
てん
にいます
我
わ
が
父󠄃
ちち
の
御意󠄃
みこゝろ
をおこなふ
者
もの
のみ、
之
これ
に
入
い
るべし。
22
その
日
ひ
おほくの
者
もの
、われに
對
むか
ひて「
主
しゅ
よ
主
しゅ
よ、
我
われ
らは
汝
なんぢ
の
名
な
によりて
預言
よげん
し、
汝
なんぢ
の
名
な
によりて
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひいだし、
汝
なんぢ
の
名
な
によりて
多
おほ
くの
能力
ちから
ある
業
わざ
を
爲
な
ししにあらずや」と
言
い
はん。
23
その
時
とき
われ
明白
あらは
に
吿
つ
げん「われ
斷
た
えて
汝
なんぢ
らを
知
し
らず、
不法
ふはふ
をなす
者
もの
よ、
我
われ
を
離
はな
れされ」と。
24
さらば
凡
すべ
て
我
わ
がこれらの
言
ことば
をききて
行
おこな
ふ
者
もの
を、
磐
いは
の
上
うへ
に
家
いへ
をたてたる
慧󠄄
さと
き
人
ひと
に
擬
なずら
へん。
25
雨
あめ
ふり
流
ながれ
漲
みなぎ
り、
風
かぜ
ふきてその
家
いへ
をうてど
倒
たふ
れず、これ
磐
いは
の
上
うへ
に
建
た
てられたる
故
ゆゑ
なり。
26
すべて
我
わ
がこれらの
言
ことば
をききて
行
おこな
はぬ
者
もの
を、
沙
すな
の
上
うへ
に
家
いへ
を
建
た
てたる
愚
おろか
なる
人
ひと
に
擬
なずら
へん。
13㌻
27
雨
あめ
ふり
流
ながれ
漲
みなぎ
り、
風
かぜ
ふきて
其
そ
の
家
いへ
をうてば、
倒
たふ
れてその
顚倒
たふれ
はなはだし』
28
イエスこれらの
言
ことば
を
語
かた
りをへ
給
たま
へるとき、
群衆
ぐんじゅう
その
敎
をしへ
に
驚
をどろ
きたり。
29
それは
學者
がくしゃ
らの
如
ごと
くならず、
權威
けんゐ
ある
者
もの
のごとく
敎
をし
へ
給
たま
へる
故
ゆゑ
なり。
第8章
1
イエス
山
やま
を
下
くだ
り
給
たま
ひしとき、
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
これに
從
したが
ふ。
2
視
み
よ、
一人
ひとり
の
癩病人
らいびゃうにん
みもとに
來
きた
り、
拜
はい
して
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
御意󠄃
みこゝろ
ならば、
我
われ
を
潔󠄄
きよ
くなし
給
たま
ふを
得
え
ん』
3
イエス
手
て
をのべ、
彼
かれ
につけて『わが
意󠄃
こゝろ
なり、
潔󠄄
きよ
くなれ』と
言
い
ひ
給
たま
へば、
癩病
らいびゃう
ただちに
潔󠄄
きよま
れり。
4
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『つつしみて
誰
たれ
にも
語
かた
るな、ただ
徃
ゆ
きて
己
おのれ
を
祭司
さいし
に
見
み
せ、モーセが
命
めい
じたる
供物
そなへもの
を
獻
さゝ
げて、
人々
ひとびと
に
證
あかし
せよ』
5
イエス、カペナウムに
入
い
り
給
たま
ひしとき、
百卒長
ひゃくそつちゃう
きたり、
6
請󠄃
こ
ひていふ『
主
しゅ
よ、わが
僕
しもべ
、
中風
ちゅうぶ
を
病
や
み、
家
いへ
に
臥
ふ
しゐて
甚
いた
く
苦
くる
しめり』
7
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
徃
ゆ
きて
醫
いや
さん』
8
百卒長
ひゃくそつちゃう
こたへて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
我
われ
は
汝
なんぢ
をわが
屋根
やね
の
下
した
に
入
い
れ
奉
まつ
るに
足
た
らぬ
者
もの
なり。ただ
御言
みことば
のみを
賜
たま
へ、さらば
我
わ
が
僕
しもべ
はいえん。
9
我
われ
みづから
權威
けんゐ
の
下
した
にある
者
もの
なるに、
我
わ
が
下
した
にまた
兵卒
へいそつ
ありて、
此
これ
に「ゆけ」と
言
い
へば
徃
ゆ
き、
彼
かれ
に「きたれ」と
言
い
へば
來
きた
り、わが
僕
しもべ
に「これを
爲
な
せ」といへば
爲
な
すなり』
〘10㌻〙
10
イエス
聞
き
きて
怪
あや
しみ、
從
したが
へる
人々
ひとびと
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
斯
かゝ
る
篤
あつ
き
信仰
しんかう
はイスラエルの
中
うち
の
一人
ひとり
にだに
見
み
しことなし。
11
又󠄂
また
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
多
おほ
くの
人
ひと
、
東
ひがし
より
西
にし
より
來
きた
り、アブラハム、イサク、ヤコブとともに
天國
てんこく
の
宴
えん
につき、
12
御國
みくに
の
子
こ
らは
外
そと
の
暗󠄃
くら
きに
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
され、そこにて
哀哭
なげき
・
切齒
はがみ
することあらん』
14㌻
13
イエス
百卒長
ひゃくそつちゃう
に『ゆけ、
汝
なんぢ
の
信
しん
ずるごとく
汝
なんぢ
になれ』と
言
い
ひ
給
たま
へば、このとき
僕
しもべ
いえたり。
14
イエス、ペテロの
家
いへ
に
入
い
り、その
外姑
しうとめ
の
熱
ねつ
を
病
や
みて
臥
ふ
しをるを
見
み
、
15
その
手
て
に
觸
さは
り
給
たま
へば、
熱
ねつ
去
さ
り、
女
をんな
おきてイエスに
事
つか
ふ。
16
夕
ゆふべ
になりて、
人々
ひとびと
、
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたる
者
もの
をおほく
御許
みもと
につれ
來
きた
りたれば、イエス
言
ことば
にて
靈
れい
を
逐󠄃
お
ひいだし、
病
や
める
者
もの
をことごとく
醫
いや
し
給
たま
へり。
17
これは
預言者
よげんしゃ
イザヤによりて『かれは
自
みづか
ら
我
われ
らの
疾患
わずらひ
をうけ、
我
われ
らの
病
やまひ
を
負󠄅
お
ふ』と
云
い
はれし
言
ことば
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
18
さてイエス
群衆
ぐんじゅう
の
己
おのれ
を
環
めぐ
れるを
見
み
て、ともに
彼方
かなた
の
岸
きし
に
徃
ゆ
かんことを
弟子
でし
たちに
命
めい
じ
給
たま
ふ。
19
一人
ひとり
の
學者
がくしゃ
きたりて
言
い
ふ『
師
し
よ
何處
いづこ
にゆき
給
たま
ふとも、
我
われ
は
從
したが
はん』
20
イエス
言
い
ひたまふ『
狐
きつね
は
穴󠄄
あな
あり、
空󠄃
そら
の
鳥
とり
は
塒
ねぐら
あり、
然
さ
れど
人
ひと
の
子
こ
は
枕
まくら
する
所󠄃
ところ
なし』
21
また
弟子
でし
の
一人
ひとり
いふ『
主
しゅ
よ、
先
ま
づ
徃
ゆ
きて
我
わ
が
父󠄃
ちち
を
葬
はうむ
ることを
許
ゆる
したまへ』
22
イエス
言
い
ひたまふ『
我
われ
に
從
したが
へ、
死
し
にたる
者
もの
にその
死
し
にたる
者
もの
を
葬
はうむ
らせよ』
23
かくて
舟
ふね
に
乘
の
り
給
たま
へば、
弟子
でし
たちも
從
したが
ふ。
24
視
み
よ、
海
うみ
に
大
おほい
なる
暴風
あらし
おこりて、
舟
ふね
、
波
なみ
に
蔽
おほ
はるるばかりなるに、イエスは
眠
ねむ
りゐ
給
たま
ふ。
25
弟子
でし
たち
御許
みもと
にゆき、
起󠄃
おこ
して
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
救
すく
ひたまへ、
我
われ
らは
亡
ほろ
ぶ』
26
彼
かれ
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『なにゆゑ
臆
おく
するか、
信仰
しんかう
うすき
者
もの
よ』
乃
すなは
ち
起󠄃
お
きて、
風
かぜ
と
海
うみ
とを
禁
いまし
め
給
たま
へば、
大
おほい
なる
凪
なぎ
となりぬ。
27
人々
ひとびと
あやしみて
言
い
ふ『こは
如何
いか
なる
人
ひと
ぞ、
風
かぜ
も
海
うみ
も
從
したが
ふとは』
28
イエス
彼方
かなた
にわたり、ガダラ
人
びと
の
地
ち
にゆき
給
たま
ひしとき、
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたる
二人
ふたり
のもの、
墓
はか
より
出
い
できたりて
之
これ
に
遇󠄃
あ
ふ。その
猛
たけ
きこと
甚
はなは
だしく、
其處
そこ
の
途󠄃
みち
を
人
ひと
の
過󠄃
す
ぎ
得
え
ぬほどなり。
29
視
み
よ、かれら
叫
さけ
びて
言
い
ふ『
神
かみ
の
子
こ
よ、われら
汝
なんぢ
と
何
なに
の
關係
かゝはり
あらん、
未
いま
だ
時
とき
いたらぬに、
我
われ
らを
責
せ
めんとて
此處
ここ
にきたり
給
たま
ふか』
15㌻
30
遙
はるか
にへだたりて
多
おほ
くの
豚
ぶた
の
一
ひと
群
むれ
、
食󠄃
しょく
しゐたりしが、
31
惡鬼
あくき
ども
請󠄃
こ
ひて
言
い
ふ『もし
我
われ
らを
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
さんとならば、
豚
ぶた
の
群
むれ
に
遣󠄃
つかは
したまへ』
〘11㌻〙
32
彼
かれ
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『ゆけ』
惡鬼
あくき
いでて
豚
ぶた
に
入
い
りたれば、
視
み
よ、その
群
むれ
みな
崖
がけ
より
海
うみ
に
駈
か
け
下
くだ
りて、
水
みづ
に
死
し
にたり。
33
飼
か
ふ
者
もの
ども
逃󠄄
に
げて
町
まち
にゆき、すべての
事
こと
と
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたりし
者
もの
の
事
こと
とを
吿
つ
げたれば、
34
視
み
よ、
町
まち
人
ひと
こぞりてイエスに
逢
あ
はんとて
出
い
できたり、
彼
かれ
を
見
み
て、この
地方
ちはう
より
去
さ
り
給
たま
はんことを
請󠄃
こ
へり。
第9章
1
イエス
舟
ふね
にのり、
渡
わた
りて
己
おの
が
町
まち
にきたり
給
たま
ふ。
2
視
み
よ、
中風
ちゅうぶ
にて
床
とこ
に
臥
ふ
しをる
者
もの
を、
人々
ひとびと
みもとに
連
つ
れ
來
きた
れり。イエス
彼
かれ
らの
信仰
しんかう
を
見
み
て、
中風
ちゅうぶ
の
者
もの
に
言
い
ひたまふ『
子
こ
よ、
心
こゝろ
安
やす
かれ、
汝
なんぢ
の
罪
つみ
ゆるされたり』
3
視
み
よ、
或
ある
學者
がくしゃ
ら
心
こゝろ
の
中
うち
にいふ『この
人
ひと
は
神
かみ
を
瀆
けが
すなり』
4
イエスその
思
おもひ
を
知
し
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ『
何
なに
ゆゑ
心
こゝろ
に
惡
あ
しき
事
こと
をおもふか。
5
汝
なんぢ
の
罪
つみ
ゆるされたりと
言
い
ふと、
起󠄃
お
きて
步
あゆ
めと
言
い
ふと、
孰
いづれ
か
易
やす
き。
6
人
ひと
の
子
こ
、
地
ち
にて
罪
つみ
を
赦
ゆる
す
權威
けんゐ
あることを
汝
なんぢ
らに
知
し
らせん
爲
ため
に』――ここに
中風
ちゅうぶ
の
者
もの
に
言
い
ひ
給
たま
ふ――『
起󠄃
お
きよ、
床
とこ
をとりて
汝
なんぢ
の
家
いへ
にかへれ』
7
彼
かれ
おきて、その
家
いへ
にかへる。
8
群衆
ぐんじゅう
これを
見
み
ておそれ、
斯
かゝ
る
能力
ちから
を
人
ひと
にあたへ
給
たま
へる
神
かみ
を
崇
あが
めたり。
9
イエス
此處
ここ
より
進󠄃
すゝ
みて、マタイといふ
人
ひと
の
收税所󠄃
しうぜいしょ
に
坐
ざ
しをるを
見
み
て『
我
われ
に
從
したが
へ』と
言
い
ひ
給
たま
へば、
立
た
ちて
從
したが
へり。
10
家
いへ
にて
食󠄃事
しょくじ
の
席
せき
につき
居給
ゐたま
ふとき、
視
み
よ、
多
おほ
くの
取税人
しゅぜいにん
・
罪人
つみびと
ら
來
きた
りて、イエス
及
およ
び
弟子
でし
たちと
共
とも
に
列
つらな
る。
16㌻
11
パリサイ
人
びと
これを
見
み
て
弟子
でし
たちに
言
い
ふ『なに
故
ゆゑ
なんぢらの
師
し
は、
取税人
しゅぜいにん
・
罪人
つみびと
らと
共
とも
に
食󠄃
しょく
するか』
12
之
これ
を
聞
き
きて
言
い
ひたまふ『
健
すこや
かなる
者
もの
は
醫者
いしゃ
を
要󠄃
えう
せず、ただ
病
や
める
者
もの
これを
要󠄃
えう
す。
13
なんぢら
徃
ゆ
きて
學
まな
べ「われ
憐憫
あはれみ
を
好
この
みて、
犧牲
いけにへ
を
好
この
まず」とは
如何
いか
なる
意󠄃
こゝろ
ぞ。
我
われ
は
正
たゞ
しき
者
もの
を
招
まね
かんとにあらで、
罪人
つみびと
を
招
まね
かんとて
來
きた
れり』
14
爰
こゝ
にヨハネの
弟子
でし
たち
御許
みもと
にきたりて
言
い
ふ『われらとパリサイ
人
びと
は《[*]》
斷食󠄃
だんじき
するに、
何
なに
故
ゆゑ
なんぢの
弟子
でし
たちは
斷食󠄃
だんじき
せぬか』[*異本「しばしば斷食󠄃するに」とあり。]
15
イエス
言
い
ひたまふ『
新郎
はなむこ
の
友
とも
だち、
新郎
はなむこ
と
偕
とも
にをる
間
あひだ
は、
悲
かな
しむことを
得
え
んや。されど
新郎
はなむこ
をとらるる
日
ひ
きたらん、その
時
とき
には
斷食󠄃
だんじき
せん。
16
誰
たれ
も
新
あたら
しき
布
ぬの
の
裂
きれ
を
舊
ふる
き
衣
ころも
につぐことは
爲
せ
じ、
補
おぎな
ひたる
裂
きれ
は、その
衣
ころも
をやぶりて、
破綻
ほころび
さらに
甚
はなは
だしかるべし。
17
また
新
あたら
しき
葡萄酒
ぶだうしゅ
をふるき
革嚢
かはぶくろ
に
入
い
るることは
爲
せ
じ。もし
然
しか
せば
嚢
ふくろ
はりさけ、
酒
さけ
ほどばしり
出
い
でて、
嚢
ふくろ
もまた
廢
すた
らん。
新
あたら
しき
葡萄酒
ぶだうしゅ
は
新
あたら
しき
革嚢
かはぶくろ
にいれ、
斯
かく
て
兩
ふたつ
ながら
保
たも
つなり』
〘12㌻〙
18
イエス
此
これ
等
ら
のことを
語
かた
りゐ
給
たま
ふとき、
視
み
よ、
一人
ひとり
の
司
つかさ
きたり、
拜
はい
して
言
い
ふ『わが
娘
むすめ
いま
死
し
にたり。
然
さ
れど
來
きた
りて
御手
みて
を
之
これ
におき
給
たま
はば
活
い
きん』
19
イエス
起󠄃
た
ちて
彼
かれ
に
伴󠄃
ともな
ひ
給
たま
ふに、
弟子
でし
たちも
從
したが
ふ。
20
視
み
よ、
十
じふ
二年
にねん
血漏
ちらう
を
患
わづら
ひゐたる
女
をんな
、イエスの
後
うしろ
にきたりて、
御衣
みころも
の
總
ふさ
にさはる。
21
それは
御衣
みころも
にだに
觸
さは
らば
救
すく
はれんと
心
こゝろ
の
中
うち
にいへるなり。
22
イエスふりかへり、
女
をんな
を
見
み
て
言
い
ひたまふ『
娘
むすめ
よ、
心
こゝろ
安
やす
かれ、
汝
なんぢ
の
信仰
しんかう
なんぢを
救
すく
へり』
女
をんな
この
時
とき
より
救
すく
はれたり。
23
斯
かく
てイエス
司
つかさ
の
家
いへ
にいたり、
笛
ふえ
ふく
者
もの
と
騷
さわ
ぐ
群衆
ぐんじゅう
とを
見
み
て
言
い
ひたまふ、
24
『
退󠄃
しりぞ
け、
少女
せうじょ
は
死
し
にたるにあらず、
寐
い
ねたるなり』
人々
ひとびと
イエスを
嘲笑
あざわら
ふ。
25
群衆
ぐんじゅう
の
出
いだ
されし
後
のち
、いりてその
手
て
をとり
給
たま
へば、
少女
せうじょ
おきたり。
17㌻
26
この
聲聞
きこえ
あまねく
其
そ
の
地
ち
に
弘
ひろま
りぬ。
27
イエス
此處
ここ
より
進󠄃
すゝ
みたまふ
時
とき
、ふたりの
盲人
めしひ
さけびて『ダビデの
子
こ
よ、
我
われ
らを
憫
あはれ
みたまへ』と
言
い
ひつつ
從
したが
ふ。
28
イエス
家
いへ
にいたり
給
たま
ひしに、
盲人
めしひ
ども
御許
みもと
に
來
きた
りたれば、
之
これ
に
言
い
ひたまふ『
我
われ
この
事
こと
をなし
得
う
と
信
しん
ずるか』
彼
かれ
等
ら
いふ『
主
しゅ
よ、
然
しか
り』
29
爰
こゝ
にイエスかれらの
目
め
に
觸
さは
りて
言
い
ひたまふ『なんぢらの
信仰
しんかう
のごとく
汝
なんぢ
らに
成
な
れ』
30
乃
すなは
ち
彼
かれ
らの
目
め
あきたり。イエス
嚴
きび
しく
戒
いまし
めて
言
い
ひたまふ『
愼
つゝし
みて
誰
たれ
にも
知
し
らすな』
31
されど
彼
かれ
ら
出
い
でて、
徧
あまね
くその
地
ち
にイエスの
事
こと
をいひ
弘
ひろ
めたり。
32
盲人
めしひ
どもの
出
い
づるとき、
視
み
よ、
人々
ひとびと
、
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたる
啞者
おふし
を
御許
みもと
につれきたる。
33
惡鬼
あくき
おひ
出
いだ
されて
啞者
おふし
ものいひたれば、
群衆
ぐんじゅう
あやしみて
言
い
ふ『かかる
事
こと
は
未
いま
だイスラエルの
中
うち
に
顯
あらは
れざりき』
34
然
しか
るにパリサイ
人
びと
いふ『かれは
惡鬼
あくき
の
首
かしら
によりて
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
すなり』
35
イエス
徧
あまね
く
町
まち
と
村
むら
とを
巡󠄃
めぐ
り、その
會堂
くわいだう
にて
敎
をし
へ、
御國
みくに
の
福音󠄃
ふくいん
を
宣
の
べつたへ、
諸般
もろもろ
の
病
やまひ
、もろもろの
疾患
わずらひ
をいやし
給
たま
ふ。
36
また
群衆
ぐんじゅう
を
見
み
て、その
牧
か
ふ
者
もの
なき
羊
ひつじ
のごとく
惱
なや
み、
且
かつ
た《[*]》ふるるを
甚
いた
く
憫
あはれ
み、[*或は「散る」と譯す。]
37
遂󠄅
つひ
に
弟子
でし
たちに
言
い
ひたまふ『
收穫
かりいれ
はおほく
勞動人
はたらきびと
はすくなし。
38
この
故
ゆゑ
に
收穫
かりいれ
の
主
しゅ
に
勞動人
はたらきびと
をその
收穫場
かりいれば
に
遣󠄃
つかは
し
給
たま
はんことを
求
もと
めよ』
第10章
1
斯
かく
てイエスその
十二
じふに
弟子
でし
を
召
め
し、
穢
けが
れし
靈
れい
を
制
せい
する
權威
けんゐ
をあたへて、
之
これ
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
し、もろもろの
病
やまひ
、もろもろの
疾患
わずらひ
を
醫
いや
すことを
得
え
しめ
給
たま
ふ。
〘13㌻〙
18㌻
2
十二
じふに
使徒
しと
の
名
な
は
左
さ
のごとし。
先
ま
づペテロといふシモン
及
およ
びその
兄弟
きゃうだい
アンデレ、ゼベダイの
子
こ
ヤコブ
及
およ
びその
兄弟
きゃうだい
ヨハネ、
3
ピリポ
及
およ
びバルトロマイ、トマス
及
およ
び
取税人
しゅぜいにん
マタイ、アルパヨの
子
こ
ヤコブ
及
およ
びタダイ、
4
熱心
ねっしん
黨
たう
のシモン
及
およ
びイスカリオテのユダ、このユダはイエスを
賣
う
りし
者
もの
なり。
5
イエスこの
十二
じふに
人
にん
を
遣󠄃
つかは
さんとて、
命
めい
じて
言
い
ひたまふ。
『
異邦人
いはうじん
の
途󠄃
みち
にゆくな、
又󠄂
また
サマリヤ
人
びと
の
町
まち
に
入
い
るな。
6
寧
むし
ろイスラエルの
家
いへ
の
失
う
せたる
羊
ひつじ
にゆけ。
7
徃
ゆ
きて
宣
の
べつたへ「
天國
てんこく
は
近󠄃
ちか
づけり」と
言
い
へ。
8
病
や
める
者
もの
をいやし、
死
し
にたる
者
もの
を
甦
よみが
へらせ、
癩病人
らいびゃうにん
をきよめ、
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひいだせ。
價
あたひ
なしに
受
う
けたれば
價
あたひ
なしに
與
あた
へよ。
9
帶
おび
のなかに
金
きん
・
銀
ぎん
または
錢
ぜに
をもつな。
10
旅
たび
の
嚢
ふくろ
も、
二
に
枚
まい
の
下衣
したぎ
も、
鞋
くつ
も、
杖
つゑ
ももつな。
勞動人
はたらきびと
の、その
食󠄃物
しょくもつ
を
得
う
るは
相應
ふさは
しきなり。
11
何
いづ
れの
町
まち
、いづれの
村
むら
に
入
い
るとも、その
中
うち
にて
相應
ふさは
しき
者
もの
を
尋󠄃
たづ
ねいだして、
立
た
ち
去
さ
るまでは
其處
そこ
に
留
とゞま
れ。
12
人
ひと
の
家
いへ
に
入
い
らば
平󠄃安
へいあん
を
祈
いの
れ。
13
その
家
いへ
もし
之
これ
に
相應
ふさは
しくば、
汝
なんぢ
らの
祈
いの
る
平󠄃安
へいあん
は、その
上
うへ
に
臨
のぞ
まん。もし
相應
ふさは
しからずば、その
平󠄃安
へいあん
は、なんぢらに
歸
かへ
らん。
14
人
ひと
もし
汝
なんぢ
らを
受
う
けず、
汝
なんぢ
らの
言
ことば
を
聽
き
かずば、その
家
いへ
、その
町
まち
を
立
た
ち
去
さ
るとき、
足
あし
の
塵
ちり
をはらへ。
15
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
審判󠄄
さばき
の
日
ひ
には、その
町
まち
よりもソドム、ゴモラの
地
ち
のかた
耐
た
へ
易
やす
からん。
16
視
み
よ、
我
われ
なんぢらを
遣󠄃
つかは
すは、
羊
ひつじ
を
豺狼
おほかみ
のなかに
入
い
るるが
如
ごと
し。この
故
ゆゑ
に
蛇
へび
のごとく
慧󠄄
さと
く、
鴿
はと
のごとく
素直
すなほ
なれ。
17
人々
ひとびと
に
心
こゝろ
せよ、それは
汝
なんぢ
らを
衆議所󠄃
しゅうぎしょ
に
付
わた
し、
會堂
くわいだう
にて
鞭
むちう
たん。
18
また
汝
なんぢ
等
ら
わが
故
ゆゑ
によりて、
司
つかさ
たち
王
わう
たちの
前󠄃
まへ
に
曵
ひ
かれん。これは
彼
かれ
らと
異邦人
いはうじん
とに
證
あかし
をなさん
爲
ため
なり。
19㌻
19
かれら
汝
なんぢ
らを
付
わた
さば、
如何
いか
になにを
言
い
はんと
思
おも
ひ
煩
わづら
ふな、
言
い
ふべき
事
こと
は、その
時
とき
さづけらるべし。
20
これ
言
い
ふものは
汝
なんぢ
等
ら
にあらず、
其
そ
の
中
うち
にありて
言
い
ひたまふ
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
の
靈
れい
なり。
21
兄弟
きゃうだい
は
兄弟
きゃうだい
を、
父󠄃
ちち
は
子
こ
を
死
し
に
付
わた
し、
子
こ
どもは
親
おや
に
逆󠄃
さから
ひて
之
これ
を
死
し
なしめん。
22
又󠄂
また
なんぢら
我
わ
が
名
な
のために
凡
すべ
ての
人
ひと
に
憎
にく
まれん。されど
終󠄃
をはり
まで
耐
た
へ
忍󠄄
しの
ぶものは
救
すく
はるべし。
23
この
町
まち
にて、
責
せ
めらるる
時
とき
は、かの
町
まち
に
逃󠄄
のが
れよ。
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、なんぢらイスラエルの
町々
まちまち
を
巡󠄃
めぐ
り
盡
つく
さぬうちに
人
ひと
の
子
こ
は
來
きた
るべし。
24
弟子
でし
はその
師
し
にまさらず、
僕
しもべ
はその
主
しゅ
にまさらず、
〘14㌻〙
25
弟子
でし
はその
師
し
のごとく、
僕
しもべ
はその
主
しゅ
の
如
ごと
くならば
足
た
れり。もし
家主
いへあるじ
をベルゼブルと
呼
よ
びたらんには、
况
まし
てその
家
いへ
の
者
もの
をや。
26
この
故
ゆゑ
に、
彼
かれ
らを
懼
おそ
るな。
蔽
おほ
はれたるものに
露
あらは
れぬはなく、
隱
かく
れたるものに
知
し
られぬは
無
な
ければなり。
27
暗󠄃黑
くらき
にて
我
わ
が
吿
つ
ぐることを
光明
あかるき
にて
言
い
へ。
耳
みゝ
をあてて
聽
き
くことを
屋
や
の
上
うへ
にて
宣
の
べよ。
28
身
み
を
殺
ころ
して
靈魂
たましひ
をころし
得
え
ぬ
者
もの
どもを
懼
おそ
るな、
身
み
と
靈魂
たましひ
とをゲヘナにて
滅
ほろぼ
し
得
う
る
者
もの
をおそれよ。
29
二
に
羽
は
の
雀
すゞめ
は
一錢
いっせん
にて
賣
う
るにあらずや、
然
しか
るに
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
の
許
ゆるし
なくば、その
一
いち
羽
は
も
地
ち
に
落
お
つること
無
な
からん。
30
汝
なんぢ
らの
頭
かしら
の
髮
け
までも
皆
みな
かぞへらる。
31
この
故
ゆゑ
におそるな、
汝
なんぢ
らは
多
おほ
くの
雀
すゞめ
よりも
優
すぐ
るるなり。
32
然
さ
れば
凡
おほよ
そ
人
ひと
の
前󠄃
まへ
にて
我
われ
を
言
い
ひあらはす
者
もの
を、
我
われ
もまた
天
てん
にいます
我
わ
が
父󠄃
ちち
の
前󠄃
まへ
にて
言
い
ひ
顯
あらは
さん。
33
されど
人
ひと
の
前󠄃
まへ
にて
我
われ
を
否
いな
む
者
もの
を、
我
われ
もまた
天
てん
にいます
我
わ
が
父󠄃
ちち
の
前󠄃
まへ
にて
否
いな
まん。
34
われ
地
ち
に
平󠄃和
へいわ
を
投
とう
ぜんために
來
きた
れりと
思
おも
ふな、
平󠄃和
へいわ
にあらず、
反
かへ
つて
劍
つるぎ
を
投
とう
ぜん
爲
ため
に
來
きた
れり。
35
それ
我
わ
が
來
きた
れるは
人
ひと
をその
父󠄃
ちち
より、
娘
むすめ
をその
母
はは
より、
嫁
よめ
をその
姑嫜
しゅうとめ
より
分󠄃
わか
たん
爲
ため
なり。
20㌻
36
人
ひと
の
仇
あた
はその
家
いへ
の
者
もの
なるべし。
37
我
われ
よりも
父󠄃
ちち
または
母
はは
を
愛
あい
する
者
もの
は、
我
われ
に
相應
ふさは
しからず。
我
われ
よりも
息子
むすこ
または
娘
むすめ
を
愛
あい
する
者
もの
は、
我
われ
に
相應
ふさは
しからず。
38
又󠄂
また
おのが
十字架
じふじか
をとりて
我
われ
に
從
したが
はぬ
者
もの
は、
我
われ
に
相應
ふさは
しからず。
39
生命
いのち
を
得
う
る
者
もの
は、これを
失
うしな
ひ、
我
わ
がために
生命
いのち
を
失
うしな
ふ
者
もの
は、これを
得
う
べし。
40
汝
なんぢ
らを
受
う
くる
者
もの
は、
我
われ
を
受
う
くるなり。
我
われ
をうくる
者
もの
は、
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
を
受
う
くるなり。
41
預言者
よげんしゃ
たる
名
な
の
故
ゆゑ
に
預言者
よげんしゃ
をうくる
者
もの
は、
預言者
よげんしゃ
の
報
むくい
をうけ、
義人
ぎじん
たる
名
な
のゆゑに
義人
ぎじん
をうくる
者
もの
は、
義人
ぎじん
の
報
むくい
を
受
う
くべし。
42
凡
おほよ
そわが
弟子
でし
たる
名
な
の
故
ゆゑ
に、この
小
ちひさ
き
者
もの
の
一人
ひとり
に
冷
ひやゝ
かなる
水
みづ
一杯
いっぱい
にても
與
あた
ふる
者
もの
は、
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
必
かなら
ずその
報
むくい
を
失
うしな
はざるべし』
第11章
1
イエス
十二
じふに
弟子
でし
に
命
めい
じ
終󠄃
を
へてのち、
町々
まちまち
にて
敎
をし
へ、かつ、
宣傳
のべつた
へんとて、
此處
ここ
を
去
さ
り
給
たま
へり。
2
ヨハネ
牢舍
らうや
にてキリストの
御業
みわざ
をきき、
弟子
でし
たちを
遣󠄃
つかは
して、
3
イエスに
言
い
はしむ『
來
きた
るべき
者
もの
は
汝
なんぢ
なるか、
或
あるひ
は、
他
ほか
に
待
ま
つべきか』
4
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『ゆきて、
汝
なんぢ
らが
見
み
聞
きゝ
する
所󠄃
ところ
をヨハネに
吿
つ
げよ。
5
盲人
めしひ
は
見
み
、
跛者
あしなへ
はあゆみ、
癩病人
らいびゃうにん
は
潔󠄄
きよ
められ、
聾者
みゝしひ
はきき、
死人
しにん
は
甦
よみが
へらせられ、
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
は
福音󠄃
ふくいん
を
聞
き
かせらる。
〘15㌻〙
6
おほよそ
我
われ
に
躓
つまづ
かぬ
者
もの
は
幸福
さいはひ
なり』
7
彼
かれ
らの
歸
かへ
りたるをり、ヨハネの
事
こと
を
群衆
ぐんじゅう
に
言
い
ひ
出
い
でたまふ『なんぢら
何
なに
を
眺
なが
めんとて
野
の
に
出
い
でし、
風
かぜ
にそよぐ
葦
あし
なるか。
8
然
さ
らば
何
なに
を
見
み
んとて
出
い
でし、
柔
やはら
かき
衣
ころも
を
著
き
たる
人
ひと
なるか。
視
み
よ、やはらかき
衣
ころも
を
著
き
たる
者
もの
は
王
わう
の
家
いへ
に
在
あ
り。
21㌻
9
さらば
何
なに
のために
出
い
でし、
預言者
よげんしゃ
を
見
み
んとてか。
然
しか
り、
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
預言者
よげんしゃ
よりも
勝󠄃
まさ
る
者
もの
なり。
10
「
視
み
よ、わが
使
つかひ
をなんぢの
顏
かほ
の
前󠄃
まへ
につかはす。
彼
かれ
は、なんぢの
前󠄃
まへ
に、なんぢの
道󠄃
みち
をそなへん」と
錄
しる
されたるは
此
こ
の
人
ひと
なり。
11
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
女
をんな
の
產
う
みたる
者
もの
のうち、バプテスマのヨハネより
大
おほい
なる
者
もの
は
起󠄃
おこ
らざりき。
然
さ
れど
天國
てんこく
にて
小
ちひさ
き
者
もの
も、
彼
かれ
よりは
大
おほい
なり。
12
バプテスマのヨハネの
時
とき
より
今
いま
に
至
いた
るまで、
天國
てんこく
は
烈
はげ
しく
攻
せ
めらる、
烈
はげ
しく
攻
せ
むる
者
もの
は、これを
奪
うば
ふ。
13
凡
すべ
ての
預言者
よげんしゃ
と
律法
おきて
との
預言
よげん
したるは、ヨハネの
時
とき
までなり。
14
もし
汝
なんぢ
等
ら
わが
言
ことば
をうけんことを
願
ねがは
ば、
來
きた
るべきエリヤは
此
こ
の
人
ひと
なり、
15
耳
みゝ
ある
者
もの
は
聽
き
くべし。
16
われ
今
いま
の
代
よ
を
何
なに
に
比
なずら
へん、
童子
わらべ
、
市場
いちば
に
坐
ざ
し、
友
とも
を
呼
よ
びて、
17
「われら
汝
なんぢ
等
ら
のために
笛
ふえ
吹
ふ
きたれど
汝
なんぢ
ら
踴
をど
らず、
歎
なげ
きたれど
汝
なんぢ
ら
胸
むね
うたざりき」と
言
い
ふに
似
に
たり。
18
それはヨハネ
來
きた
りて、
飮食󠄃
のみくひ
せざれば「
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたる
者
もの
なり」といひ、
19
人
ひと
の
子
こ
、
來
きた
りて
飮食󠄃
のみくひ
すれば「
視
み
よ、
食󠄃
しょく
を
貪
むさぼ
り、
酒
さけ
を
好
この
む
人
ひと
、また
取税人
しゅぜいにん
・
罪人
つみびと
の
友
とも
なり」と
言
い
ふなり。されど
智慧󠄄
ちゑ
は
己
おの
が《[*]》
業
わざ
によりて
正
たゞ
しとせらる』[*異本「子」とあり。]
20
爰
こゝ
にイエス
多
おほ
くの
能力
ちから
ある
業
わざ
を
行
おこな
ひ
給
たま
へる
町々
まちまち
の
悔改
くいあらた
めぬによりて、
之
これ
を
責
せ
めはじめ
給
たま
ふ、
21
『
禍害󠄅
わざはひ
なる
哉
かな
、コラジンよ、
禍害󠄅
わざはひ
なる
哉
かな
、ベツサイダよ、
汝
なんぢ
らの
中
うち
にて
行
おこな
ひたる
能力
ちから
ある
業
わざ
をツロとシドンとにて
行
おこな
ひしならば、
彼
かれ
らは
早
はや
く
荒布
あらぬの
を
著
き
、
灰󠄃
はひ
の
中
なか
にて
悔改
くいあらた
めしならん。
22
されば
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
審判󠄄
さばき
の
日
ひ
にはツロとシドンとのかた
汝
なんぢ
等
ら
よりも
耐
た
へ
易
やす
からん。
23
カペナウムよ、なんぢは
天
てん
にまで
擧
あ
げらるべきか、
黄泉
よみ
にまで
下
くだ
らん。
汝
なんぢ
のうちにて
行
おこな
ひたる
能力
ちから
ある
業
わざ
をソドムにて
行
おこな
ひしならば、
今日
けふ
までも、かの
町
まち
は
遺󠄃
のこ
りしならん。
24
然
さ
れば
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
審判󠄄
さばき
の
日
ひ
にはソドムの
地
ち
のかた
汝
なんぢ
よりも
耐
た
へ
易
やす
からん』
22㌻
25
その
時
とき
イエス
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
天
てん
地
ち
の
主
しゅ
なる
父󠄃
ちち
よ、われ
感謝
かんしゃ
す、
此
これ
等
ら
のことを
智
かしこ
き
者
もの
、
慧󠄄
さと
き
者
もの
にかくして
嬰兒
みどりご
に
顯
あらは
し
給
たま
へり。
26
父󠄃
ちち
よ、
然
しか
り、
斯
かく
の
如
ごと
きは
御意󠄃
みこゝろ
に
適󠄄
かな
へるなり。
27
凡
すべ
の
物
もの
は
我
われ
わが
父󠄃
ちち
より
委
ゆだ
ねられたり。
子
こ
を
知
し
る
者
もの
は
父󠄃
ちち
の
外
ほか
になく、
父󠄃
ちち
をしる
者
もの
は
子
こ
または
子
こ
の
欲
ほっ
するままに
顯
あらは
すところの
者
もの
の
外
ほか
になし。
〘16㌻〙
28
凡
すべ
て
勞
らう
する
者
もの
・
重荷
おもに
を
負󠄅
お
ふ
者
もの
、われに
來
きた
れ、われ
汝
なんぢ
らを
休
やす
ません。
29
我
われ
は
柔和
にうわ
にして
心
こゝろ
卑
ひく
ければ、
我
わ
が
軛
くびき
を
負󠄅
お
ひて
我
われ
に
學
まな
べ、さらば
靈魂
たましひ
に
休息
やすみ
を
得
え
ん。
30
わが
軛
くびき
は
易
やす
く、わが
荷
に
は
輕
かろ
ければなり』
第12章
1
その
頃
ころ
イエス
安息
あんそく
日
にち
に
麥
むぎ
畠
はたけ
をとほり
給
たま
ひしに、
弟子
でし
たち
飢󠄄
う
ゑて
穗
ほ
を
摘
つ
み、
食󠄃
く
ひ
始
はじ
めたるを、
2
パリサイ
人
びと
、
見
み
てイエスに
言
い
ふ『
視
み
よ、なんぢの
弟子
でし
は
安息
あんそく
日
にち
に
爲
す
まじき
事
こと
をなす』
3
彼
かれ
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『ダビデがその
伴󠄃
ともな
へる
人々
ひとびと
とともに
飢󠄄
う
ゑしとき、
爲
な
しし
事
こと
を
讀
よ
まぬか。
4
即
すなは
ち
神
かみ
の
家
いへ
に
入
い
りて、
祭司
さいし
のほかは、
己
おのれ
もその
伴󠄃
ともな
へる
人々
ひとびと
も
食󠄃
くら
ふまじき
供
そなへ
のパンを
食󠄃
くら
へり。
5
また
安息
あんそく
日
にち
に
祭司
さいし
らは
宮
みや
の
內
うち
にて
安息
あんそく
日
にち
を
犯
をか
せども、
罪
つみ
なきことを
律法
おきて
にて
讀
よ
まぬか。
6
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
宮
みや
より
大
おほい
なる
者
もの
ここに
在
あ
り。
7
「われ
憐憫
あはれみ
を
好
この
みて、
犧牲
いけにへ
を
好
この
まず」とは
如何
いか
なる
意󠄃
こころ
かを、
汝
なんぢ
ら
知
し
りたらんには、
罪
つみ
なき
者
もの
を
罪
つみ
せざりしならん。
8
それ
人
ひと
の
子
こ
は
安息
あんそく
日
にち
の
主
しゅ
たるなり』
9
イエス
此處
ここ
を
去
さ
りて、
彼
かれ
らの
會堂
くわいだう
に
入
い
り
給
たま
ひしに、
10
視
み
よ、
片手
かたて
なえたる
人
ひと
あり。
人々
ひとびと
イエスを
訴
うった
へんと
思
おも
ひ、
問
と
ひていふ『
安息
あんそく
日
にち
に
人
ひと
を
醫
いや
すことは
善
よ
きか』
11
彼
かれ
らに
言
い
ひたまふ『
汝
なんぢ
等
ら
のうち
一匹
いっぴき
の
羊
ひつじ
をもてる
者
もの
あらんに、もし
安息
あんそく
日
にち
に
穴󠄄
あな
に
陷
おちい
らば、
之
これ
を
取
と
りあげぬか。
23㌻
12
人
ひと
は
羊
ひつじ
より
優
すぐ
るること
如何
いか
許
ばかり
ぞ。さらば
安息
あんそく
日
にち
に
善
ぜん
をなすは
可
よ
し』
13
爰
こゝ
にかの
人
ひと
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
手
て
を
伸
の
べよ』かれ
伸
の
べたれば、
他
ほか
の
手
て
のごとく
癒󠄄
い
ゆ。
14
パリサイ
人
びと
いでて
如何
いかに
してかイエスを
亡
ほろぼ
さんと
議
はか
る。
15
イエス
之
これ
を
知
し
りて
此處
ここ
を
去
さ
りたまふ。
多
おほ
くの
人
ひと
、したがひ
來
きた
りたれば、ことごとく
之
これ
を
醫
いや
し、
16
かつ
我
われ
を
人
ひと
に
知
し
らすなと
戒
いまし
め
給
たま
へり。
17
これ
預言者
よげんしゃ
イザヤによりて
云
い
はれたる
言
ことば
の
成就
じゃうじゅ
せんためなり。
曰
いは
く、
18
『
視
み
よ、わが
選󠄄
えら
びたる
我
わ
が
僕
しもべ
、 わが
心
こゝろ
の
悅
よろこ
ぶ
我
わ
が
愛
いつく
しむ
者
もの
、
我
われ
わが
靈
れい
を
彼
かれ
に
與
あた
へん、
彼
かれ
は
異邦人
いはうじん
に
正義
せいぎ
を
吿
つ
げ
示
しめ
さん。
19
彼
かれ
は
爭
あらそ
はず、
叫
さけ
ばず、 その
聲
こゑ
を
大路
おほじ
にて
聞
き
く
者
もの
なからん。
20
正義
せいぎ
をして
勝󠄃
かち
遂󠄅
と
げしむるまでは、
傷
そこな
へる
葦
あし
を
折
を
ることなく、
烟
けぶ
れる《[*]》
亞麻󠄃
あま
を
消󠄃
け
すことなからん。[*或は「燈心」と譯す。]
〘17㌻〙
21
異邦人
いはうじん
も
彼
かれ
の
名
な
に
望󠄇
のぞみ
をおかん』
22
ここに
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたる
盲目
めしひ
の
啞者
おふし
を
御許
みもと
に
連
つ
れ
來
きた
りたれば、
之
これ
を
醫
いや
して
啞者
おふし
の
物
もの
言
い
ひ、
見
み
ゆるやうに
爲
な
したまひぬ。
23
群衆
ぐんじゅう
みな
驚
をどろ
きて
言
い
ふ『これはダビデの
子
こ
にあらぬか』
24
然
しか
るにパリサイ
人
びと
ききて
言
い
ふ『この
人
ひと
、
惡鬼
あくき
の
首
かしら
ベルゼブルによらでは
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
すことなし』
25
イエス
彼
かれ
らの
思
おもひ
を
知
し
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ『すべて
分󠄃
わか
れ
爭
あらそ
ふ
國
くに
はほろび、
分󠄃
わか
れ
爭
あらそ
ふ
町
まち
また
家
いへ
はたたず。
26
サタンもしサタンを
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
さば、
自
みづか
ら
分󠄃
わか
れ
爭
あらそ
ふなり。
然
さ
らばその
國
くに
いかで
立
た
つべき。
27
我
われ
もしベルゼブルによりて
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
さば、
汝
なんぢ
らの
子
こ
は
誰
たれ
によりて
之
これ
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
すか。この
故
ゆゑ
に
彼
かれ
らは
汝
なんぢ
らの
審判󠄄
さばき
人
ひと
となるべし。
28
然
さ
れど
我
われ
もし
神
かみ
の
靈
れい
によりて
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
さば、
神
かみ
の
國
くに
は
旣
すで
に
汝
なんぢ
らに
到
いた
れるなり。
29
人
ひと
まづ
强
つよ
き
者
もの
を
縛
しば
らずば、いかで
强
つよ
き
者
もの
の
家
いへ
に
入
い
りて、その
家財
かざい
を
奪
うば
ふことを
得
え
ん、
縛
しば
りて
後
のち
その
家
いへ
を
奪
うば
ふべし。
24㌻
30
我
われ
と
偕
とも
ならぬ
者
もの
は
我
われ
にそむき、
我
われ
とともに
集
あつ
めぬ
者
もの
は
散
ちら
すなり。
31
この
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
人
ひと
の
凡
すべ
ての
罪
つみ
と
瀆
けがし
とは
赦
ゆる
されん、されど
御靈
みたま
を
瀆
けが
すことは
赦
ゆる
されじ。
32
誰
たれ
にても
言
ことば
をもて
人
ひと
の
子
こ
に
逆󠄃
さから
ふ
者
もの
は
赦
ゆる
されん、
然
さ
れど
言
ことば
をもて
聖󠄄
せい
靈
れい
に
逆󠄃
さから
ふ
者
もの
は、この
世
よ
にても
後
のち
の
世
よ
にても
赦
ゆる
されじ。
33
或
あるひ
は
樹
き
をも
善
よ
しとし、
果
み
をも
善
よ
しとせよ。
或
あるひ
は
樹
き
をも
惡
あ
しとし、
果
み
をも
惡
あ
しとせよ。
樹
き
は
果
み
によりて
知
し
らるるなり。
34
蝮
まむし
の
裔
すゑ
よ、なんぢら
惡
あ
しき
者
もの
なるに、
爭
いか
で
善
よ
きことを
言
い
ひ
得
え
んや。それ
心
こゝろ
に
滿
み
つるより
口
くち
に
言
い
はるるなり。
35
善
よ
き
人
ひと
は
善
よ
き
倉
くら
より
善
よ
き
物
もの
をいだし、
惡
あ
しき
人
ひと
は
惡
あ
しき
倉
くら
より
惡
あ
しき
物
もの
をいだす。
36
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
人
ひと
の
語
かた
る
凡
すべ
ての
虛
むな
しき
言
ことば
は、
審判󠄄
さばき
の
日
ひ
に
糺
たゞ
さるべし。
37
それは
汝
なんぢ
の
言
ことば
によりて
義
ぎ
とせられ、
汝
なんぢ
の
言
ことば
によりて
罪
つみ
せらるるなり』
38
爰
こゝ
に
或
あ
る
學者
がくしゃ
・パリサイ
人
びと
ら
答
こた
へて
言
い
ふ『
師
し
よ、われら
汝
なんぢ
の
徴
しるし
を
見
み
んことを
願
ねが
ふ』
39
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
邪曲
よこしま
にして
不義
ふぎ
なる
代
よ
は
徴
しるし
を
求
もと
む、されど
預言者
よげんしゃ
ヨナの
徴
しるし
のほかに
徴
しるし
は
與
あた
へられじ。
40
即
すなは
ち「ヨナが
三日
みっか
三夜
みよ
、
大魚
おほうを
の
腹
はら
の
中
なか
に
在
あ
りし」ごとく、
人
ひと
の
子
こ
も
三日
みっか
三夜
みよ
、
地
ち
の
中
なか
に
在
あ
るべきなり。
41
ニネベの
人
ひと
、
審判󠄄
さばき
のとき
今
いま
の
代
よ
の
人
ひと
とともに
立
た
ちて
之
これ
が
罪
つみ
を
定
さだ
めん、
彼
かれ
らはヨナの
宣
の
ぶる
言
ことば
によりて
悔改
くいあらた
めたり。
視
み
よ、ヨナよりも
勝󠄃
まさ
るもの
此處
ここ
に
在
あ
り。
42
南
みなみ
の
女王
にょわう
、
審判󠄄
さばき
のとき
今
いま
の
代
よ
の
人
ひと
とともに
起󠄃
お
きて
之
これ
が
罪
つみ
を
定
さだ
めん、
彼
かれ
はソロモンの
智慧󠄄
ちゑ
を
聽
き
かんとて
地
ち
の
極
はて
より
來
きた
れり。
視
み
よ、ソロモンよりも
勝󠄃
まさ
る
者
もの
ここに
在
あ
り。
43
穢
けが
れし
靈
れい
、
人
ひと
を
出
い
づるときは、
水
みづ
なき
處
ところ
を
巡󠄃
めぐ
りて
休
やすみ
を
求
もと
む、
而
しか
して
得
え
ず。
〘18㌻〙
44
乃
すなは
ち「わが
出
い
でし
家
いへ
に
歸
かへ
らん」といひ、
歸
かへ
りてその
家
いへ
の、
空󠄃
あ
きて
掃
は
き
淨
きよ
められ、
飾󠄃
かざ
られたるを
見
み
、
45
遂󠄅
つひ
に
徃
ゆ
きて
己
おのれ
より
惡
あ
しき
他
ほか
の
七
なゝ
つの
靈
れい
を
連
つ
れきたり、
共
とも
に
入
い
りて
此處
ここ
に
住󠄃
す
む。されば
其
そ
の
人
ひと
の
後
のち
の
狀
さま
は
前󠄃
まへ
よりも
惡
あ
しくなるなり。
邪曲
よこしま
なる
此
こ
の
代
よ
もまた
斯
かく
の
如
ごと
くならん』
25㌻
46
イエスなほ
群衆
ぐんじゅう
にかたり
居給
ゐたま
ふとき、
視
み
よ、その
母
はは
と
兄弟
きゃうだい
たちと、
彼
かれ
に
物
もの
言
い
はんとて
外
そと
に
立
た
つ。
47
或
ある
人
ひと
イエスに
言
い
ふ『
視
み
よ、なんぢの
母
はは
と
兄弟
きゃうだい
たちと、
汝
なんぢ
に
物
もの
言
い
はんとて
外
そと
に
立
た
てり』
48
イエス
吿
つ
げし
者
もの
に
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『わが
母
はは
とは
誰
たれ
ぞ、わが
兄弟
きゃうだい
とは
誰
たれ
ぞ』
49
斯
かく
て
手
て
をのべ、
弟子
でし
たちを
指
さ
して
言
い
ひたまふ『
視
み
よ、これは
我
わ
が
母
はは
、わが
兄弟
きゃうだい
なり。
50
誰
たれ
にても
天
てん
にいます
我
わ
が
父󠄃
ちち
の
御意󠄃
みこゝろ
をおこなふ
者
もの
は、
即
すなは
ち
我
わ
が
兄弟
きゃうだい
、わが
姉妹
しまい
、わが
母
はは
なり』
第13章
1
その
日
ひ
イエスは
家
いへ
を
出
い
でて、
海邊
うみべ
に
坐
ざ
したまふ。
2
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
みもとに
集
あつま
りたれば、イエスは
舟
ふね
に
乘
の
りて
坐
ざ
したまひ、
群衆
ぐんじゅう
はみな
岸
きし
に
立
た
てり。
3
譬
たとへ
にて
數多
あまた
のことを
語
かた
りて
言
い
ひたまふ、『
視
み
よ、
種
たね
播
ま
く
者
もの
まかんとて
出
い
づ。
4
播
ま
くとき
路
みち
の
傍
かたは
らに
落
お
ちし
種
たね
あり、
鳥
とり
きたりて
啄
ついば
む。
5
土
つち
うすき
磽地
いしぢ
に
落
お
ちし
種
たね
あり、
土
つち
深
ふか
からぬによりて
速󠄃
すみや
かに
萠
も
え
出
い
でたれど、
6
日
ひ
の
昇
のぼ
りし
時
とき
やけて
根
ね
なき
故
ゆゑ
に
枯
か
る。
7
茨
いばら
の
地
ち
に
落
お
ちし
種
たね
あり、
茨
いばら
そだちて
之
これ
を
塞
ふさ
ぐ。
8
良
よ
き
地
ち
に
落
お
ちし
種
たね
あり、
或
あるひ
は
百
ひゃく
倍
ばい
、
或
あるひ
は
六十
ろくじふ
倍
ばい
、
或
あるひ
は
三十
さんじふ
倍
ばい
の
實
み
を
結
むす
べり。
9
耳
みゝ
ある《[*]》
者
もの
は
聽
き
くべし』[*異本「聽く耳」とあり。]
10
弟子
でし
たち
御許
みもと
に
來
きた
りて
言
い
ふ『なにゆゑ
譬
たとへ
にて
彼
かれ
らに
語
かた
り
給
たま
ふか』
11
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらは
天國
てんこく
の
奧義
おくぎ
を
知
し
ることを
許
ゆる
されたれど、
彼
かれ
らは
許
ゆる
されず。
12
それ
誰
たれ
にても、
有
も
てる
人
ひと
は
與
あた
へられて
愈々
いよいよ
豐
ゆたか
ならん。
然
さ
れど
有
も
たぬ
人
ひと
は、その
有
も
てる
物
もの
をも
取
と
らるべし。
13
この
故
ゆゑ
に
彼
かれ
らには
譬
たとへ
にて
語
かた
る、これ
彼
かれ
らは
見
み
ゆれども
見
み
ず、
聞
きこ
ゆれども
聽
き
かず、また
悟
さと
らぬ
故
ゆゑ
なり、
26㌻
14
斯
かく
てイザヤの
預言
よげん
は、
彼
かれ
らの
上
うへ
に
成就
じゃうじゅ
す。
曰
いは
く、 「なんぢら
聞
き
きて
聞
き
けども
悟
さと
らず、
見
み
て
見
み
れども
認󠄃
みと
めず。
15
此
こ
の
民
たみ
の
心
こゝろ
は
鈍
にぶ
く、
耳
みゝ
は
聞
き
くに
懶
ものう
く、
目
め
は
閉
と
ぢたればなり。 これ
目
め
にて
見
み
、
耳
みゝ
にて
聽
き
き、
心
こゝろ
にて
悟
さと
り、
飜
ひるが
へりて、
我
われ
に
醫
いや
さるる
事
こと
なからん
爲
ため
なり」
〘19㌻〙
16
されど
汝
なんぢ
らの
目
め
、なんぢらの
耳
みゝ
は、
見
み
るゆゑに
聞
き
くゆゑに、
幸福
さいはひ
なり。
17
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
多
おほ
くの
預言者
よげんしゃ
・
義人
ぎじん
は、
汝
なんぢ
らが
見
み
る
所󠄃
ところ
を
見
み
んとせしが
見
み
ず、なんぢらが
聞
き
く
所󠄃
ところ
を
聞
き
かんとせしが
聞
き
かざりしなり。
18
然
さ
れば
汝
なんぢ
ら
種
たね
播
ま
く
者
もの
の
譬
たとへ
を
聽
き
け。
19
誰
たれ
にても
天國
てんこく
の
言
ことば
をききて
悟
さと
らぬときは、
惡
あ
しき
者
もの
きたりて、
其
そ
の
心
こゝろ
に
播
ま
かれたるものを
奪
うば
ふ。
路
みち
の
傍
かたは
らに
播
ま
かれしとは
斯
かゝ
る
人
ひと
なり。
20
磽地
いしぢ
に
播
ま
かれしとは、
御言
みことば
をききて、
直
たゞ
ちに
喜
よろこ
び
受
う
くれども、
21
己
おのれ
に
根
ね
なければ
暫
しば
し
耐
た
ふるのみにて、
御言
みことば
のために
艱難
なやみ
あるひは
迫󠄃害󠄅
はくがい
の
起󠄃
おこ
るときは、
直
たゞ
ちに
躓
つまづ
くものなり。
22
茨
いばら
の
中
なか
に
播
ま
かれしとは、
御言
みことば
をきけども、
世
よ
の
心勞
こゝろづかひ
と
財貨
たから
の
惑
まどひ
とに、
御言
みことば
を
塞
ふさ
がれて
實
みの
らぬものなり。
23
良
よ
き
地
ち
に
播
ま
かれしとは、
御言
みことば
をききて
悟
さと
り、
實
み
を
結
むす
びて、
或
あるひ
は
百
ひゃく
倍
ばい
、あるひは
六十
ろくじふ
倍
ばい
、あるひは
三十
さんじふ
倍
ばい
に
至
いた
るものなり』
24
また
他
ほか
の
譬
たとへ
を
示
しめ
して
言
い
ひたまふ『
天國
てんこく
は
良
よ
き
種
たね
を
畑
はた
にまく
人
ひと
のごとし。
25
人々
ひとびと
の
眠
ねむ
れる
間
ま
に、
仇
あた
きたりて
麥
むぎ
のなかに
毒
どく
麥
むぎ
を
播
ま
きて
去
さ
りぬ。
26
苗
なへ
はえ
出
い
でて
實
みの
りたるとき、
毒
どく
麥
むぎ
もあらはる。
27
僕
しもべ
ども
來
きた
りて
家主
いへあるじ
にいふ「
主
しゅ
よ、
畑
はた
に
播
ま
きしは
良
よ
き
種
たね
ならずや、
然
しか
るに
如何
いか
にして
毒
どく
麥
むぎ
あるか」
28
主人
しゅじん
いふ「
仇
あた
のなしたるなり」
僕
しもべ
ども
言
い
ふ「さらば
我
われ
らが
徃
ゆ
きて
之
これ
を
拔
ぬ
き
集
あつ
むるを
欲
ほっ
するか」
29
主人
しゅじん
いふ「いな
恐
おそ
らくは
毒
どく
麥
むぎ
を
拔
ぬ
き
集
あつ
めんとて、
麥
むぎ
をも
共
とも
に
拔
ぬ
かん。
27㌻
30
兩
ふたつ
ながら
收穫
かりいれ
まで
育
そだ
つに
任
まか
せよ。
收穫
かりいれ
のとき
我
われ
かる
者
もの
に「まづ
毒
どく
麥
むぎ
を
拔
ぬ
きあつめて、
焚
や
くために
之
これ
を
束
つか
ね、
麥
むぎ
はあつめて
我
わ
が
倉
くら
に
納󠄃
い
れよ」と
言
い
はん」』
31
また
他
ほか
の
譬
たとへ
を
示
しめ
して
言
い
ひたまふ『
天國
てんこく
は
一粒
ひとつぶ
の
芥種
からしだね
のごとし、
人
ひと
これを
取
と
りてその
畑
はた
に
播
ま
くときは、
32
萬
よろづ
の
種
たね
よりも
小
ちひさ
けれど、
育
そだ
ちては、
他
ほか
の
野菜
やさい
よりも
大
おほき
く、
樹
き
となりて
空󠄃
そら
の
鳥
とり
きたり、
其
そ
の
枝
えだ
に
宿
やど
るほどなり』
33
また
他
ほか
の
譬
たとへ
を
語
かた
りたまふ『
天國
てんこく
はパンだねのごとし、
女
をんな
これを
取
と
りて、
三
さん
斗
と
の
粉
こな
の
中
なか
に
入
い
るれば、
悉
ことご
く
脹
ふく
れいだすなり』
34
イエスすべて
此
これ
等
ら
のことを、
譬
たとへ
にて
群衆
ぐんじゅう
に
語
かた
りたまふ、
譬
たとへ
ならでは
何事
なにごと
も
語
かた
り
給
たま
はず。
35
これ
預言者
よげんしゃ
によりて
云
い
はれたる
言
ことば
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
曰
いは
く、 『われ
譬
たとへ
を
設
まう
けて
口
くち
を
開
ひら
き、
世
よ
の
創
はじめ
より
隱
かく
れたる
事
こと
を
言
い
ひ
出
いだ
さん』
〘20㌻〙
36
爰
こゝ
に
群衆
ぐんじゅう
を
去
さ
らしめて、
家
いへ
に
入
い
りたまふ。
弟子
でし
たち
御許
みもと
に
來
きた
りて
言
い
ふ『
畑
はた
の
毒
どく
麥
むぎ
の
譬
たとへ
を
我
われ
らに
解
と
きたまへ』
37
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『
良
よ
き
種
たね
を
播
ま
く
者
もの
は
人
ひと
の
子
こ
なり、
38
畑
はた
は
世界
せかい
なり、
良
よ
き
種
たね
は
天國
てんこく
の
子
こ
どもなり、
毒
どく
麥
むぎ
は
惡
あ
しき
者
もの
の
子
こ
どもなり、
39
之
これ
を
播
ま
きし
仇
あた
は
惡魔󠄃
あくま
なり、
收穫
かりいれ
は
世
よ
の
終󠄃
をはり
なり、
刈
か
る
者
もの
は
御使
みつかひ
たちなり。
40
されば
毒
どく
麥
むぎ
の
集
あつ
められて
火
ひ
に
焚
や
かるる
如
ごと
く、
世
よ
の
終󠄃
をはり
にも
斯
か
くあるべし。
41
人
ひと
の
子
こ
、その
使
つかひ
たちを
遣󠄃
つかは
さん。
彼
かれ
ら
御國
みくに
の
中
うち
より
凡
すべ
ての
顚躓
つまづき
となる
物
もの
と
不法
ふほふ
をなす
者
もの
とを
集
あつ
めて、
42
火
ひ
の
爐
ろ
に
投
な
げ
入
い
るべし、
其處
そこ
にて
哀哭
なげき
・
切齒
はがみ
することあらん。
43
其
そ
のとき
義人
ぎじん
は、
父󠄃
ちち
の
御國
みくに
にて
日
ひ
のごとく
輝
かゞや
かん。《[*]》
耳
みゝ
ある
者
もの
は
聽
き
くべし。[*異本「聽く耳」とあり。]
44
天國
てんこく
は
畑
はた
に
隱
かく
れたる
寶
たから
のごとし。
人
ひと
、
見出
みいだ
さば
之
これ
を
隱
かく
しおきて、
喜
よろこ
びゆき、
有
も
てる
物
もの
をことごとく
賣
う
りて
其
そ
の
畑
はた
を
買
か
ふなり。
28㌻
45
また
天國
てんこく
は
良
よ
き
眞珠
しんじゅ
を
求
もと
むる
商人
あきうど
のごとし。
46
價
あたひ
たかき
眞珠
しんじゅ
、
一
ひと
つを
見出
みいだ
さば、
徃
ゆ
きて
有
も
てる
物
もの
をことごとく
賣
う
りて、
之
これ
を
買
か
ふなり。
47
また
天國
てんこく
は
海
うみ
におろして、
各樣
さまざま
のものを
集
あつ
むる
網
あみ
のごとし。
48
充
み
つれば
岸
きし
にひきあげ、
坐
ざ
して
良
よ
きものを
器
うつは
に
入
い
れ、
惡
あ
しきものを
棄
す
つるなり。
49
世
よ
の
終󠄃
をはり
にも
斯
か
くあるべし。
御使
みつかひ
たち
出
い
でて、
義人
ぎじん
の
中
なか
より、
惡人
あくにん
を
分󠄃
わか
ちて、
50
之
これ
を
火
ひ
の
爐
ろ
に
投
な
げ
入
い
るべし。
其處
そこ
にて
哀哭
なげき
・
切齒
はがみ
することあらん。
51
汝
なんぢ
等
ら
これらの
事
こと
をみな
悟
さと
りしか』
彼
かれ
等
ら
いふ『
然
しか
り』
52
また
言
い
ひ
給
たま
ふ『この
故
ゆゑ
に、
天國
てんこく
のことを
敎
をし
へられたる
凡
すべ
ての
學者
がくしゃ
は、
新
あたら
しき
物
もの
と
舊
ふる
き
物
もの
とをその
倉
くら
より
出
いだ
す
家主
いへあるじ
のごとし』
53
イエスこれらの
譬
たとへ
を
終󠄃
を
へて
此處
ここ
を
去
さ
りたまふ。
54
己
おの
が
郷
さと
にいたり、
會堂
くわいだう
にて
敎
をし
へ
給
たま
へば、
人々
ひとびと
おどろきて
言
い
ふ『この
人
ひと
はこの
智慧󠄄
ちゑ
と
此
これ
等
ら
の
能力
ちから
とを
何處
いづこ
より
得
え
しぞ。
55
これ
木匠
たくみ
の
子
こ
にあらずや、
其
そ
の
母
はは
はマリヤ、
其
そ
の
兄弟
きゃうだい
はヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダにあらずや。
56
又󠄂
また
その
姉妹
しまい
も
皆
みな
われらと
共
とも
にをるに
非
あら
ずや。
然
しか
るに
此
これ
等
ら
のすべての
事
こと
は
何處
いづこ
より
得
え
しぞ』
57
遂󠄅
つひ
に
人々
ひとびと
かれに
躓
つまづ
けり。イエス
彼
かれ
らに
言
い
ひたまふ『
預言者
よげんしゃ
は、おのが
郷
さと
、おのが
家
いへ
の
外
ほか
にて
尊󠄅
たふと
ばれざる
事
こと
なし』
58
彼
かれ
らの
不
ふ
信仰
しんかう
によりて
其處
そこ
にては
多
おほ
くの
能力
ちから
ある
業
わざ
を
爲
な
し
給
たま
はざりき。
〘21㌻〙
第14章
1
そのころ、
國守
こくしゅ
ヘロデ、イエスの
噂
うはさ
をききて、
2
侍臣
じしん
どもに
言
い
ふ『これバプテスマのヨハネなり。かれ
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へりたり、
然
さ
ればこそ
此
これ
等
ら
の
能力
ちから
その
內
うち
に
働
はたら
くなれ』
3
ヘロデ
先
さき
に
己
おの
が
兄弟
きゃうだい
ピリポの
妻
つま
ヘロデヤの
爲
ため
にヨハネを
捕
とら
へ、
縛
しば
りて
獄
ひとや
に
入
い
れたり。
29㌻
4
ヨハネ、ヘロデに『かの
女
をんな
を
納󠄃
い
るるは
宜
よろ
しからず』と
言
い
ひしに
因
よ
る。
5
斯
かく
てヘロデ、ヨハネを
殺
ころ
さんと
思
おも
へど、
群衆
ぐんじゅう
を
懼
おそ
れたり。
群衆
ぐんじゅう
ヨハネを
預言者
よげんしゃ
とすればなり。
6
然
しか
るにヘロデの
誕生日
たんじゃうび
に
當
あた
り、ヘロデヤの
娘
むすめ
その
席上
せきじゃう
に
舞
まひ
をまひてヘロデを
喜
よろこ
ばせたれば、
7
ヘロデ
之
これ
に
何
なに
にても
求
もと
むるままに
與
あた
へんと
誓
ちか
へり。
8
娘
むすめ
その
母
はは
に
唆
そゝの
かされて
言
い
ふ『バプテスマのヨハネの
首
くび
を
盆󠄃
ぼん
に
載
の
せてここに
賜
たま
はれ』
9
王
わう
、
憂
うれ
ひたれど、その
誓
ちかひ
と
席
せき
に
在
あ
る
者
もの
とに
對
たい
して、
之
これ
を
與
あた
ふることを
命
めい
じ、
10
人
ひと
を
遣󠄃
つかは
し
獄
ひとや
にてヨハネの
首
くび
を
斬
き
り、
11
その
首
くび
を
盆󠄃
ぼん
にのせて
持
も
ち
來
きた
らしめ、
之
これ
を
少女
せうじょ
に
與
あた
ふ。
少女
せうじょ
はこれを
母
はは
に
捧
さゝ
ぐ。
12
ヨハネの
弟子
でし
たち
來
きた
り、
屍體
しかばね
を
取
と
りて
葬
はうむ
り、
徃
ゆ
きて、イエスに
吿
つ
ぐ。
13
イエス
之
これ
を
聞
き
きて
人
ひと
を
避󠄃
さ
け、
其處
そこ
より
舟
ふね
にのりて
寂
さび
しき
處
ところ
に
徃
ゆ
き
給
たま
ひしを、
群衆
ぐんじゅう
ききて
町々
まちまち
より
徒步
かち
にて
從
したが
ひゆく。
14
イエス
出
い
でて
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
を
見
み
、これを
憫
あはれ
みて、その
病
や
める
者
もの
を
醫
いや
し
給
たま
へり。
15
夕
ゆふべ
になりたれば、
弟子
でし
たち
御許
みもと
に
來
きた
りて
言
い
ふ『ここは
寂
さび
しき
處
ところ
、はや
時
とき
も
晩
おそ
し、
群衆
ぐんじゅう
を
去
さ
らしめ、
村々
むらむら
に
徃
ゆ
きて、
己
おの
が
爲
ため
に
食󠄃物
しょくもつ
を
買
か
はせ
給
たま
へ』
16
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『かれら
徃
ゆ
くに
及
およ
ばず、
汝
なんぢ
ら
之
これ
に
食󠄃物
しょくもつ
を
與
あた
へよ』
17
弟子
でし
たち
言
い
ふ『われらが
此處
ここ
にもてるは、
唯
ただ
五
いつ
つのパンと
二
ふた
つの
魚
うを
とのみ』
18
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『それを
我
われ
に
持
も
ちきたれ』
19
斯
かく
て
群衆
ぐんじゅう
に
命
めい
じて、
草
くさ
の
上
うへ
に
坐
ざ
せしめ、
五
いつ
つのパンと
二
ふた
つの
魚
うを
とを
取
と
り、
天
てん
を
仰
あふ
ぎて
祝
しく
し、パンを
裂
さ
きて、
弟子
でし
たちに
與
あた
へ
給
たま
へば、
弟子
でし
たち
之
これ
を
群衆
ぐんじゅう
に
與
あた
ふ。
20
凡
すべ
ての
人
ひと
、
食󠄃
くら
ひて
飽󠄄
あ
く、
裂
さ
きたる
餘
あまり
を
集
あつ
めしに
十二
じふに
の
筐
かご
に
滿
み
ちたり。
21
食󠄃
くら
ひし
者
もの
は、
女
をんな
と
子供
こども
とを
除
のぞ
きて
凡
おほよ
そ
五
ご
千
せん
人
にん
なりき。
30㌻
22
イエス
直
たゞ
ちに
弟子
でし
たちを
强
し
ひて
舟
ふね
に
乘
の
らせ、
自
みづか
ら
群衆
ぐんじゅう
をかへす
間
ま
に、
彼方
かなた
の
岸
きし
に
先
さき
に
徃
ゆ
かしむ。
23
斯
かく
て
群衆
ぐんじゅう
を
去
さ
らしめてのち、
祈
いの
らんとて
窃
ひそか
に
山
やま
に
登
のぼ
り、
夕
ゆふべ
になりて
獨
ひとり
そこにゐ
給
たま
ふ。
24
舟
ふね
ははや《[*]》
陸
をか
より
數丁
すうちゃう
はなれ、
風
かぜ
逆󠄃
さから
ふによりて
波
なみ
に
難
なやま
されゐたり。[*異本「海の眞中に在り」と譯す。]
25
夜明
よあけ
の
四時
よじ
ごろ、イエス
海
うみ
の
上
うへ
を
步
あゆ
みて、
彼
かれ
らに
到
いた
り
給
たま
ひしに、
〘22㌻〙
26
弟子
でし
たち
其
そ
の
海
うみ
の
上
うへ
を
步
あゆ
み
給
たま
ふを
見
み
て
心
こゝろ
騷
さわ
ぎ、
變化
へんげ
の
者
もの
なりと
言
い
ひて
懼
おそ
れ
叫
さけ
ぶ。
27
イエス
直
たゞ
ちに
彼
かれ
らに
語
かた
りて
言
い
ひたまふ『
心
こゝろ
安
やす
かれ、
我
われ
なり、
懼
おそ
るな』
28
ペテロ
答
こた
へて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、もし
汝
なんぢ
ならば
我
われ
に
命
めい
じ、
水
みづ
を
蹈
ふ
みて、
御許
みもと
に
到
いた
らしめ
給
たま
へ』
29
『
來
きた
れ』と
言
い
ひ
給
たま
へば、ペテロ
舟
ふね
より
下
お
り、
水
みづ
の
上
うへ
を
步
あゆ
みてイエスの
許
もと
に
徃
ゆ
く。
30
然
しか
るに
風
かぜ
を
見
み
て
懼
おそ
れ、
沈
しづ
みかかりければ
叫
さけ
びて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
我
われ
を
救
すく
ひたまへ』
31
イエス
直
たゞ
ちに
御手
みて
を
伸
の
べ、これを
捉
とら
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『ああ
信仰
しんかう
うすき
者
もの
よ、
何
なに
ぞ
疑
うたが
ふか』
32
相
あひ
共
とも
に
舟
ふね
に
乘
の
りしとき、
風
かぜ
やみたり。
33
舟
ふね
に
居
を
る
者
もの
どもイエスを
拜
はい
して
言
い
ふ『まことに
汝
なんぢ
は
神
かみ
の
子
こ
なり』
34
遂󠄅
つひ
に
渡
わた
りてゲネサレの
地
ち
に
著
つ
きしに、
35
その
處
ところ
の
人々
ひとびと
イエスを
認󠄃
みと
めて、
徧
あまね
く
四方
しはう
に
人
ひと
をつかはし、
又󠄂
また
すべての
病
や
める
者
もの
を
連
つ
れきたり、
36
ただ
御衣
みころも
の
總
ふさ
にだに
觸
さは
らしめ
給
たま
はんことを
願
ねが
ふ、
觸
さは
りし
者
もの
はみな
醫
いや
されたり。
第15章
1
爰
こゝ
にパリサイ
人
びと
・
學者
がくしゃ
ら、エルサレムより
來
きた
りてイエスに
言
い
ふ、
2
『なにゆゑ
汝
なんぢ
の
弟子
でし
は、
古
いにし
への
人
ひと
の
言傳
いひつたへ
を
犯
をか
すか、
食󠄃事
しょくじ
のときに
手
て
を
洗
あら
はぬなり』
3
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なにゆゑ
汝
なんぢ
らは、また
汝
なんぢ
らの
言傳
いひつたへ
によりて
神
かみ
の
誡命
いましめ
を
犯
をか
すか。
4
即
すなは
ち
神
かみ
は「
父󠄃
ちち
母
はは
を
敬
うやま
へ」と
言
い
ひ「
父󠄃
ちち
または
母
はは
を
罵
のゝし
る
者
もの
は
必
かなら
ず
殺
ころ
さるべし」と
言
い
ひたまへり。
5
然
しか
るに
汝
なんぢ
らは「
誰
たれ
にても
父󠄃
ちち
または
母
はは
に
對
むか
ひて
我
わ
が
負󠄅
お
ふ
所󠄃
ところ
のものは、
供物
そなへもの
となりたりと
言
い
はば、
31㌻
6
父󠄃
ちち
または
母
はは
を
敬
うやま
ふに
及
およ
ばず」と
言
い
ふ。
斯
か
くその
言傳
いひつたへ
によりて
神
かみ
の
言
ことば
を
空󠄃
むな
しうす。
7
僞善者
ぎぜんしゃ
よ、
宜
うべ
なる
哉
かな
イザヤは
汝
なんぢ
らに
就
つ
きて
能
よ
く
預言
よげん
せり。
曰
いは
く、
8
「この
民
たみ
は
口唇
くちびる
にて
我
われ
を
敬
うやま
ふ、
然
さ
れど
其
そ
の
心
こゝろ
は
我
われ
に
遠󠄄
とほ
ざかる。
9
ただ
徒
いたづ
らに
我
われ
を
拜
をが
む。
人
ひと
の
訓誡
いましめ
を
敎
をしへ
とし
敎
をし
へて」』
10
斯
かく
て
群衆
ぐんじゅう
を
呼
よ
び
寄
よ
せて
言
い
ひたまふ『
聽
き
きて
悟
さと
れ。
11
口
くち
に
入
い
るものは
人
ひと
を
汚
けが
さず、
然
さ
れど
口
くち
より
出
い
づるものは、これ
人
ひと
を
汚
けが
すなり』
12
爰
こゝ
に
弟子
でし
たち
御許
みもと
に
來
きた
りていふ『
御言
みことば
をききてパリサイ
人
びと
の
躓
つまづ
きたるを
知
し
り
給
たま
ふか』
13
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『わが
天
てん
の
父󠄃
ちち
の
植
う
ゑ
給
たま
はぬものは、みな
拔
ぬ
かれん。
14
彼
かれ
らを
捨
す
ておけ、
盲人
めしひ
を
手引
てびき
する
盲人
めしひ
なり、
盲人
めしひ
もし
盲人
めしひ
を
手引
てびき
せば、
二人
ふたり
とも
穴󠄄
あな
に
落
お
ちん』
15
ペテロ
答
こた
へて
言
い
ふ『その
譬
たとへ
を
我
われ
らに
解
と
き
給
たま
へ』
〘23㌻〙
16
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらも
今
いま
なほ
悟
さとり
なきか。
17
凡
すべ
て
口
くち
に
入
い
るものは
腹
はら
にゆき、
遂󠄅
つひ
に
厠
かはや
に
棄
す
てらるる
事
こと
を
悟
さと
らぬか。
18
然
さ
れど
口
くち
より
出
い
づるものは
心
こゝろ
より
出
い
づ、これ
人
ひと
を
汚
けが
すものなり。
19
それ
心
こゝろ
より
惡
あ
しき
念
おもひ
いづ、
即
すなは
ち
殺人
ひとごろし
・
姦淫
かんいん
・
淫行
いんかう
・
竊盜
ぬすみ
・
僞證
ぎしょう
・
誹謗
そしり
、
20
これらは
人
ひと
を
汚
けが
すものなり、
然
さ
れど
洗
あら
はぬ
手
て
にて
食󠄃
しょく
する
事
こと
は
人
ひと
を
汚
けが
さず』
21
イエスここを
去
さ
りてツロとシドンとの
地方
ちはう
に
徃
ゆ
き
給
たま
ふ。
22
視
み
よ、カナンの
女
をんな
、その
邊
ほとり
より
出
い
できたり、
叫
さけ
びて『
主
しゅ
よ、ダビデの
子
こ
よ、
我
われ
を
憫
あはれ
み
給
たま
へ、わが
娘
むすめ
、
惡鬼
あくき
につかれて
甚
いた
く
苦
くる
しむ』と
言
い
ふ。
23
されどイエス
一言
ひとこと
も
答
こた
へ
給
たま
はず。
弟子
でし
たち
來
きた
り
請󠄃
こ
ひて
言
い
ふ『
女
をんな
を
歸
かへ
したまへ、
我
われ
らの
後
あと
より
叫
さけ
ぶなり』
24
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
我
われ
はイスラエルの
家
いへ
の
失
う
せたる
羊
ひつじ
のほかに
遣󠄃
つかは
されず』
25
女
をんな
きたり
拜
はい
して
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
我
われ
を
助
たす
けたまへ』
26
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
子供
こども
のパンをとりて、
小狗
こいぬ
に
投
な
げ
與
あた
ふるは
善
よ
からず』
27
女
をんな
いふ『
然
しか
り、
主
しゅ
よ、
小狗
こいぬ
も
主人
しゅじん
の
食󠄃卓
しょくたく
よりおつる
食󠄃屑
たべくず
を
食󠄃
くら
ふなり』
32㌻
28
爰
こゝ
にイエス
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『をんなよ、
汝
なんぢ
の
信仰
しんかう
は
大
おほい
なるかな、
願
ねがひ
のごとく
汝
なんぢ
になれ』
娘
むすめ
この
時
とき
より
癒󠄄
い
えたり。
29
イエス
此處
ここ
を
去
さ
り、ガリラヤの
海邊
うみべ
にいたり、
而
しか
して
山
やま
に
登
のぼ
り、そこに
坐
ざ
し
給
たま
ふ。
30
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
、
跛者
あしなへ
・
不具󠄄
かたは
・
盲人
めしひ
・
啞者
おふし
および
他
ほか
の
多
おほ
くの
者
もの
を
連
つ
れ
來
きた
りて、イエスの
足下
あしもと
に
置
お
きたれば、
醫
いや
し
給
たま
へり。
31
群衆
ぐんじゅう
は、
啞者
おふし
の
物
もの
いひ、
不具󠄄
かたは
の
癒󠄄
い
え、
跛者
あしなへ
の
步
あゆ
み、
盲人
めしひ
の
見
み
えたるを
見
み
て
之
これ
を
怪
あや
しみ、イスラエルの
神
かみ
を
崇
あが
めたり。
32
イエス
弟子
でし
たちを
召
め
して
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
此
こ
の
群衆
ぐんじゅう
をあはれむ、
旣
すで
に
三日
みっか
われと
偕
とも
にをりて
食󠄃
くら
ふべき
物
もの
なし。
飢󠄄
う
ゑたるままにて
歸
かへ
らしむるを
好
この
まず、
恐
おそ
らくは
途󠄃
みち
にて
疲
つか
れ
果
は
てん』
33
弟子
でし
たち
言
い
ふ『この
寂
さび
しき
地
ち
にて、
斯
か
く
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
を
飽󠄄
あ
かしむべき
多
おほ
くのパンを、
何處
いづこ
より
得
う
べき』
34
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『パン
幾
いく
つあるか』
彼
かれ
らいふ『
七
なゝ
つ、また
小
ちひさ
き
魚
うを
すこしあり』
35
イエス
群衆
ぐんじゅう
に
命
めい
じて
地
ち
に
坐
ざ
せしめ、
36
七
なゝ
つのパンと
魚
うを
とを
取
と
り、
謝
しゃ
して
之
これ
をさき
弟子
でし
たちに
與
あた
へ
給
たま
へば、
弟子
でし
たち
之
これ
を
群衆
ぐんじゅう
に
與
あた
ふ。
37
凡
すべ
ての
人
ひと
くらひて
飽󠄄
あ
き、
裂
さ
きたる
餘
あまり
を
拾
ひろ
ひしに、
七
なゝ
つの
籃
かご
に
滿
み
ちたり。
38
食󠄃
くら
ひし
者
もの
は、
女
をんな
と
子供
こども
とを
除
のぞ
きて
四千
しせん
人
にん
なりき。
39
イエス
群衆
ぐんじゅう
をかへし、
舟
ふね
に
乘
の
りてマガダンの
地方
ちはう
に
徃
ゆ
き
給
たま
へり。
〘24㌻〙
第16章
1
パリサイ
人
びと
とサドカイ
人
びと
と
來
きた
りてイエスを
試
こゝろ
み、
天
てん
よりの
徴
しるし
を
示
しめ
さんことを
請󠄃
こ
ふ。
2
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
夕
ゆふべ
には
汝
なんぢ
ら「
空󠄃
そら
あかき
故
ゆゑ
に、
晴
はれ
ならん」と
言
い
ひ、
3
また
朝󠄃
あした
には「そら
赤
あか
くして
曇
くも
る
故
ゆゑ
に、
今日
けふ
は
風雨
あれ
ならん」と
言
い
ふ。なんぢら
空󠄃
そら
の
氣色
けしき
を
見分󠄃
みわ
くることを
知
し
りて、
時
とき
の
徴
しるし
を
見分󠄃
みわ
くること
能
あた
はぬか。
4
邪曲
よこしま
にして
不義
ふぎ
なる
代
よ
は
徴
しるし
を
求
もと
む、
然
さ
れどヨナの
徴
しるし
の
外
ほか
に
徴
しるし
は
與
あた
へられじ』
斯
かく
て
彼
かれ
らを
離
はな
れて
去
さ
り
給
たま
ひぬ。
33㌻
5
弟子
でし
たち
彼方
かなた
の
岸
きし
に
到
いた
りしに、パンを
携
たづさ
ふることを
忘
わす
れたり。
6
イエス
言
い
ひたまふ『
愼
つゝし
みてパリサイ
人
びと
とサドカイ
人
びと
とのパン
種
だね
に
心
こゝろ
せよ』
7
弟子
でし
たち
互
たがひ
に『《[*]》
我
われ
らはパンを
携
たづさ
へざりき』と
語
かた
り
合
あ
ふ。[*或は「これはパンを携へざりし故ならん」と譯す。]
8
イエス
之
これ
を
知
し
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ『ああ
信仰
しんかう
うすき
者
もの
よ、
何
なに
ぞ《[*]》パン
無
な
きことを
語
かた
り
合
あ
ふか。[*或は「パンなき故ならんと語り合ふか」と譯す。]
9
未
いま
だ
悟
さと
らぬか、
五
いつ
つのパンを
五
ご
千
せん
人
にん
に
分󠄃
わか
ちて、その
餘
あまり
を
幾籃
いくかご
ひろひ、
10
また
七
なゝ
つのパンを
四千
しせん
人
にん
に
分󠄃
わか
ちて、その
餘
あまり
を
幾籃
いくかご
ひろひしかを
覺
おぼ
えぬか。
11
我
わ
が
言
い
ひしはパンの
事
こと
にあらぬを
何
なん
ぞ
悟
さと
らざる。
唯
たゞ
パリサイ
人
びと
とサドカイ
人
びと
とのパンだねに
心
こゝろ
せよ』
12
爰
こゝ
に
弟子
でし
たちイエスの
心
こゝろ
せよと
言
い
ひ
給
たま
ひしは、パンの
種
たね
にはあらで、パリサイ
人
びと
とサドカイ
人
びと
との
敎
をしへ
なることを
悟
さと
れり。
13
イエス、ピリポ・カイザリヤの
地方
ちはう
にいたり、
弟子
でし
たちに
問
と
ひて
言
い
ひたまふ『
人々
ひとびと
は
人
ひと
の
子
こ
を
誰
たれ
と
言
い
ふか』
14
彼
かれ
等
ら
いふ『
或
ある
人
ひと
はバプテスマのヨハネ、
或
ある
人
ひと
はエリヤ、
或
ある
人
ひと
はエレミヤ、また
預言者
よげんしゃ
の
一人
ひとり
』
15
彼
かれ
らに
言
い
ひたまふ『なんぢらは
我
われ
を
誰
たれ
と
言
い
ふか』
16
シモン・ペテロ
答
こた
へて
言
い
ふ『なんぢはキリスト、
活
い
ける
神
かみ
の
子
こ
なり』
17
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『バルヨナ・シモン、
汝
なんぢ
は
幸福
さいはひ
なり、
汝
なんぢ
に
之
これ
を
示
しめ
したるは
血肉
けつにく
にあらず、
天
てん
にいます
我
わ
が
父󠄃
ちち
なり。
18
我
われ
はまた
汝
なんぢ
に
吿
つ
ぐ、
汝
なんぢ
は《[*]》ペテロなり、
我
われ
この
磐
いは
の
上
うへ
に
我
わ
が
敎會
けうくわい
を
建
た
てん、
黄泉
よみ
の
門
もん
はこれに
勝󠄃
か
たざるべし。[*ペテロとは「磐」の義なり。]
19
われ
天國
てんこく
の
鍵
かぎ
を
汝
なんぢ
に
與
あた
へん、
凡
おほよ
そ
汝
なんぢ
が
地
ち
にて《[*]》
縛
つな
ぐ
所󠄃
ところ
は
天
てん
にても
縛
つな
ぎ、
地
ち
にて
解
と
く
所󠄃
ところ
は
天
てん
にても
解
と
くなり』[*或は「禁ずる所󠄃は天にても禁じ、地にて許す所󠄃は天にても許さん」と譯す。]
20
爰
こゝ
にイエス
己
おの
がキリストなる
事
こと
を
誰
たれ
にも
吿
つ
ぐなと
弟子
でし
たちを
戒
いまし
め
給
たま
へり。
34㌻
21
この
時
とき
よりイエス・キリスト、
弟子
でし
たちに、
己
おのれ
のエルサレムに
徃
ゆ
きて、
長老
ちゃうらう
・
祭司長
さいしちゃう
・
學者
がくしゃ
らより
多
おほ
くの
苦難
くるしみ
を
受
う
け、かつ
殺
ころ
され、
三日
みっか
めに
甦
よみが
へるべき
事
こと
を
示
しめ
し
始
はじ
めたまふ。
22
ペテロ、イエスを
傍
かたへ
にひき
戒
いまし
め
出
い
でて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、《[*]》
然
しか
あらざれ、
此
こ
の
事
こと
なんぢに
起󠄃
おこ
らざるべし』[*原語「汝に憐みあれ」との義なり。]
〘25㌻〙
23
イエス
振反
ふりかへ
りてペテロに
言
い
ひ
給
たま
ふ『サタンよ、
我
わ
が
後
うしろ
に
退󠄃
しりぞ
け、
汝
なんぢ
はわが
躓物
つまづき
なり、
汝
なんぢ
は
神
かみ
のことを
思
おも
はず、
反
かへ
つて
人
ひと
のことを
思
おも
ふ』
24
爰
こゝ
にイエス
弟子
でし
たちに
言
い
ひたまふ『
人
ひと
もし
我
われ
に
從
したが
ひ
來
きた
らんと
思
おも
はば、
己
おのれ
をすて、
己
おの
が
十字架
じふじか
を
負󠄅
お
ひて、
我
われ
に
從
したが
へ。
25
己
おの
が
生命
いのち
を
救
すく
はんと
思
おも
ふ
者
もの
は、これを
失
うしな
ひ、
我
わ
がために、
己
おの
が
生命
いのち
をうしなふ
者
もの
は、
之
これ
を
得
う
べし。
26
人
ひと
、
全󠄃世界
ぜんせかい
を
贏
まう
くとも、
己
おの
が
生命
いのち
を
損
そん
せば、
何
なに
の
益
えき
あらん、
又󠄂
また
その
生命
いのち
の
代
しろ
に
何
なに
を
與
あた
へんや。
27
人
ひと
の
子
こ
は
父󠄃
ちち
の
榮光
えいくわう
をもて、
御使
みつかひ
たちと
共
とも
に
來
きた
らん。その
時
とき
おのおのの
行爲
おこなひ
に
隨
したが
ひて
報
むく
ゆべし。
28
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、ここに
立
た
つ
者
もの
のうちに、
人
ひと
の
子
こ
のその
國
くに
をもて
來
きた
るを
見
み
るまでは、
死
し
を
味
あぢ
はぬ
者
もの
どもあり』
第17章
1
六日
むゆか
の
後
のち
、イエス、ペテロ、ヤコブ
及
およ
びヤコブの
兄弟
きゃうだい
ヨハネを
率󠄃
ひ
きつれ、
人
ひと
を
避󠄃
さ
けて
高
たか
き
山
やま
に
登
のぼ
りたまふ。
2
斯
かく
て
彼
かれ
らの
前󠄃
まへ
にてその
狀
さま
かはり、
其
そ
の
顏
かほ
は
日
ひ
のごとく
輝
かゞや
き、その
衣
ころも
は
光
ひかり
のごとく
白
しろ
くなりぬ。
3
視
み
よ、モーセとエリヤとイエスに
語
かた
りつつ
彼
かれ
らに
現
あらは
る。
4
ペテロ
差出
さしい
でてイエスに
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
我
われ
らの
此處
ここ
に
居
を
るは
善
よ
し。
御意󠄃
みこゝろ
ならば
我
われ
ここに
三
み
つの
廬
いほり
を
造󠄃
つく
り、
一
ひと
つを
汝
なんぢ
のため、
一
ひと
つをモーセのため、
一
ひと
つをエリヤの
爲
ため
にせん』
5
彼
かれ
なほ
語
かた
りをるとき、
視
み
よ、
光
ひか
れる
雲
くも
、かれらを
覆
おほ
ふ。また
雲
くも
より
聲
こゑ
あり、
曰
いは
く『これは
我
わ
が
愛
いつく
しむ
子
こ
、わが
悅
よろこ
ぶ
者
もの
なり、
汝
なんぢ
ら
之
これ
に
聽
き
け』
35㌻
6
弟子
でし
たち
之
これ
を
聞
き
きて
倒
たふ
れ
伏
ふ
し、
懼
おそ
るること
甚
はなは
だし。
7
イエスその
許
もと
にきたり
之
これ
に
觸
さは
りて『
起󠄃
お
きよ、
懼
おそ
るな』と
言
い
ひ
給
たま
へば、
8
彼
かれ
ら
目
め
を
擧
あ
げしに、イエス
一人
ひとり
の
他
ほか
は
誰
たれ
も
見
み
えざりき。
9
山
やま
を
下
くだ
るとき、イエス
彼
かれ
らに
命
めい
じて
言
い
ひたまふ『
人
ひと
の
子
こ
の
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へるまでは、
見
み
たることを
誰
たれ
にも
語
かた
るな』
10
弟子
でし
たち
問
と
ひて
言
い
ふ『さらば、エリヤ
先
ま
づ
來
きた
るべしと
學者
がくしゃ
らの
言
い
ふは
何
なん
ぞ』
11
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
實
げ
にエリヤ
來
きた
りて
萬
よろづ
の
事
こと
をあらためん。
12
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、エリヤは
旣
すで
に
來
きた
れり。
然
さ
れど
人々
ひとびと
これを
知
し
らず、
反
かへ
つて
心
こゝろ
のままに
待
あしら
へり。
斯
かく
のごとく
人
ひと
の
子
こ
もまた
人々
ひとびと
より
苦
くる
しめらるべし』
13
爰
こゝ
に
弟子
でし
たちバプテスマのヨハネを
指
さ
して
言
い
ひ
給
たま
ひしなるを
悟
さと
れり。
〘26㌻〙
14
かれら
群衆
ぐんじゅう
の
許
もと
に
到
いた
りしとき、
或
ある
人
ひと
、
御許
みもと
にきたり
跪
ひざま
づきて
言
い
ふ、
15
『
主
しゅ
よ、わが
子
こ
を
憫
あはれ
みたまへ。
癲癇
てんかん
にて
難
なや
み、しばしば
火
ひ
の
中
なか
に、しばしば
水
みづ
の
中
なか
に
倒
たふ
るるなり。
16
之
これ
を
御弟子
みでし
たちに
連
つ
れ
來
きた
りしに、
醫
いや
すこと
能
あた
はざりき』
17
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『ああ
信
しん
なき
曲
まが
れる
代
よ
なるかな、
我
われ
いつまで
汝
なんぢ
らと
偕
とも
にをらん、
何時
いつ
まで
汝
なんぢ
らを
忍󠄄
しの
ばん。その
子
こ
を
我
われ
に
連
つ
れきたれ』
18
遂󠄅
つひ
にイエスこれを
禁
いまし
め
給
たま
へば、
惡鬼
あくき
いでてその
子
こ
この
時
とき
より
癒󠄄
い
えたり。
19
爰
こゝ
に
弟子
でし
たち
窃
ひそか
にイエスに
來
きた
りて
言
い
ふ『われらは
何
なに
故
ゆゑ
に
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
し
得
え
ざりしか』
20
彼
かれ
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
信仰
しんかう
うすき
故
ゆゑ
なり。
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、もし
芥種
からしだね
一粒
ひとつぶ
ほどの
信仰
しんかう
あらば、この
山
やま
に「
此處
ここ
より
彼處
かしこ
に
移
うつ
れ」と
言
い
ふとも
移
うつ
らん、
斯
かく
て
汝
なんぢ
ら
能
あた
はぬこと
無
な
かるべし』
21
[なし]《[*]》[*異本「この類は祈と斷食󠄃とに由らざれば出でぬなり」とあり。]
36㌻
22
彼
かれ
らガリラヤに
集
つど
ひをる
時
とき
、イエス
言
い
ひたまふ『
人
ひと
の
子
こ
は
人
ひと
の
手
て
に
付
わた
され、
23
人々
ひとびと
は
之
これ
を
殺
ころ
さん、
斯
かく
て
三日
みっか
めに
甦
よみが
へるべし』
弟子
でし
たち
甚
いた
く
悲
かな
しめり。
24
彼
かれ
らカペナウムに
到
いた
りしとき、
納󠄃金
をさめきん
を
集
あつ
むる
者
もの
ども、ペテロに
來
きた
りて
言
い
ふ『なんぢらの
師
し
は
納󠄃金
をさめきん
を
納󠄃
をさ
めぬか』
25
ペテロ『
納󠄃
をさ
む』と
言
い
ひ、
頓
やが
て
家
いへ
に
入
い
りしに、
逸速󠄃
いちはや
くイエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『シモンいかに
思
おも
ふか、
世
よ
の
王
わう
たちは
税
ぜい
または
貢
みつぎ
を
誰
たれ
より
取
と
るか、
己
おの
が
子
こ
よりか、
他
ほか
の
者
もの
よりか』
26
ペテロ
言
い
ふ『ほかの
者
もの
より』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『されば
子
こ
は
自由
じいう
なり。
27
されど
彼
かれ
らを
躓
つまづ
かせぬ
爲
ため
に、
海
うみ
に
徃
ゆ
きて
釣
つり
をたれ、
初
はじめ
に
上
あが
る
魚
うを
をとれ、
其
そ
の
口
くち
をひらかば《[*]》
銀貨
ぎんくわ
一
ひと
つを
得
え
ん、それを
取
と
りて
我
われ
と
汝
なんぢ
との
爲
ため
に
納󠄃
をさ
めよ』[*原語「スタテール」]
第18章
1
そのとき
弟子
でし
たち、イエスに
來
きた
りて
言
い
ふ『しからば
天國
てんこく
にて
大
おほい
なるは
誰
たれ
か』
2
イエス
幼兒
をさなご
を
呼
よ
び、
彼
かれ
らの
中
なか
に
置
お
きて
言
い
ひ
給
たま
ふ
3
『まことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、もし
汝
なんぢ
ら
飜
ひるが
へりて
幼兒
をさなご
の
如
ごと
くならずば、
天國
てんこく
に
入
い
るを
得
え
じ。
4
されば
誰
たれ
にても
此
こ
の
幼兒
をさなご
のごとく
己
おのれ
を
卑
ひく
うする
者
もの
は、これ
天國
てんこく
にて
大
おほい
なる
者
もの
なり。
5
また
我
わ
が
名
な
のために、
斯
かく
のごとき
一人
ひとり
の
幼兒
をさなご
を
受
う
くる
者
もの
は、
我
われ
を
受
う
くるなり。
6
然
さ
れど
我
われ
を
信
しん
ずる
此
こ
の
小
ちひさ
き
者
もの
の
一人
ひとり
を
躓
つまづ
かする
者
もの
は、
寧
むし
ろ
大
おほい
なる
碾臼
ひきうす
を
頸
くび
に
懸
か
けられ、
海
うみ
の
深處
ふかみ
に
沈
しづ
められんかた
益
えき
なり。
7
この
世
よ
は
躓物
つまづき
あるによりて
禍害󠄅
わざはひ
なるかな。
躓物
つまづき
は
必
かなら
ず
來
きた
らん、されど
躓物
つまづき
を
來
きた
らする
人
ひと
は
禍害󠄅
わざはひ
なるかな。
〘27㌻〙
8
もし
汝
なんぢ
の
手
て
、または
足
あし
、なんぢを
躓
つまづ
かせば、
切
き
りて
棄
す
てよ。
不具󠄄
かたは
または
蹇跛
あしなへ
にて
生命
いのち
に
入
い
るは、
兩手
りゃうて
・
兩足
りゃうあし
ありて
永遠󠄄
とこしへ
の
火
ひ
に
投
な
げ
入
い
れらるるよりも
勝󠄃
まさ
るなり。
9
もし
汝
なんぢ
の
眼
め
、なんぢを
躓
つまづ
かせば
拔
ぬ
きて
棄
す
てよ。
片眼
かため
にて
生命
いのち
に
入
い
るは、
兩眼
りゃうめ
ありて
火
ひ
のゲヘナに
投
な
げ
入
い
れらるるよりも
勝󠄃
まさ
るなり。
37㌻
10
汝
なんぢ
ら
愼
つゝし
みて
此
こ
の
小
ちひさ
き
者
もの
の
一人
ひとり
をも
侮
あなど
るな。
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
彼
かれ
らの
御使
みつかひ
たちは
天
てん
にありて、
天
てん
にいます
我
わ
が
父󠄃
ちち
の
御顏
みかほ
を
常
つね
に
見
み
るなり。
11
[なし]《[*]》[*異本「それ人の子の來れるに失せたる者を救はん爲なり」との句あり。]
12
汝
なんぢ
等
ら
いかに
思
おも
ふか、
百匹
ひゃくひき
の
羊
ひつじ
を
有
も
てる
人
ひと
あらんに、
若
も
しその
一匹
いっぴき
まよはば、
九
く
十
じふ
九
く
匹
ひき
を
山
やま
に
遺󠄃
のこ
しおき、
徃
ゆ
きて
迷󠄃
まよ
へるものを
尋󠄃
たづ
ねぬか。
13
もし
之
これ
を
見出
みいだ
さば、
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
迷󠄃
まよ
はぬ
九
く
十
じふ
九
く
匹
ひき
に
勝󠄃
まさ
りて
此
こ
の
一匹
いっぴき
を
喜
よろこ
ばん。
14
斯
かく
のごとく
此
こ
の
小
ちひさ
き
者
もの
の
一人
ひとり
の
亡
ほろ
ぶるは、
天
てん
にいます
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
の
御意󠄃
みこゝろ
にあらず。
15
もし
汝
なんぢ
の
兄弟
きゃうだい
、
罪
つみ
を
犯
をか
さば、
徃
ゆ
きてただ
彼
かれ
とのみ、
相
あひ
對
たい
して
諫
いさ
めよ。もし
聽
き
かば
其
そ
の
兄弟
きゃうだい
を
得
え
たるなり。
16
もし
聽
き
かずば
一人
ひとり
・
二人
ふたり
を
伴󠄃
ともな
ひ
徃
ゆ
け、これ
二
に
三
さん
の
證人
しょうにん
の
口
くち
に
由
よ
りて、
凡
すべ
ての
事
こと
の
慥
たしか
められん
爲
ため
なり。
17
もし
彼
かれ
等
ら
にも
聽
き
かずば、
敎會
けうくわい
に
吿
つ
げよ。もし
敎會
けうくわい
にも
聽
き
かずば、
之
これ
を
異邦人
いはうじん
または
取税人
しゅぜいにん
のごとき
者
もの
とすべし。
18
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、すべて
汝
なんぢ
らが
地
ち
にて《[*]》
縛
つな
ぐ
所󠄃
ところ
は
天
てん
にても
縛
つな
ぎ、
地
ち
にて
解
と
く
所󠄃
ところ
は
天
てん
にても
解
と
くなり。[*或は「禁ずる所󠄃は天にても禁じ、地にて許す所󠄃は天にても許すなり」と譯す。]
19
また
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、もし
汝
なんぢ
等
ら
のうち
二人
ふたり
、
何
なに
にても
求
もと
むる
事
こと
につき
地
ち
にて
心
こゝろ
を
一
ひと
つにせば、
天
てん
にいます
我
わ
が
父󠄃
ちち
は
之
これ
を
成
な
し
給
たま
ふべし。
20
二三人
にさんにん
わが
名
な
によりて
集
あつま
る
所󠄃
ところ
には、
我
われ
もその
中
うち
に
在
あ
るなり』
21
爰
こゝ
にペテロ
御許
みもと
に
來
きた
りて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、わが
兄弟
きゃうだい
われに
對
たい
して
罪
つみ
を
犯
をか
さば
幾
いく
たび
赦
ゆる
すべきか、
七度
なゝたび
までか』
22
イエス
言
い
ひたまふ『
否
いな
われ「
七度
なゞたび
まで」とは
言
い
はず「
七度
なゝたび
を
七
しち
十
じふ
倍
ばい
するまで」と
言
い
ふなり。
23
この
故
ゆゑ
に
天國
てんこく
はその
家來
けらい
どもと
計算
けいさん
をなさんとする
王
わう
のごとし。
24
計算
けいさん
を
始
はじ
めしとき、
一萬
いちまん
タラントの
負󠄅債
おひめ
ある
家來
けらい
つれ
來
きた
られしが、
25
償
つくの
ひ
方
かた
なかりしかば、
其
そ
の
主人
しゅじん
、この
者
もの
と、その
妻
つま
子
こ
と
凡
すべ
ての
所󠄃有
もちもの
とを
賣
う
りて
償
つぐの
ふことを
命
めい
じたるに、
38㌻
26
その
家來
けらい
ひれ
伏
ふ
し、
拜
はい
して
言
い
ふ「
寛
ゆる
くし
給
たま
へ、さらば
悉
ことご
とく
償
つぐの
はん」
27
その
家來
けらい
の
主人
しゅじん
、あはれみて
之
これ
を
解
と
き、その
負󠄅債
おひめ
を
免
ゆる
したり。
28
然
しか
るに
其
そ
の
家來
けらい
いでて、
己
おのれ
より
百
ひゃく
デナリを
負󠄅
お
ひたる
一人
ひとり
の
同僚
どうれう
にあひ、
之
これ
をとらへ、
喉
のど
を
締
し
めて
言
い
ふ「
負󠄅債
おひめ
を
償
つぐの
へ」
29
その
同僚
どうれう
ひれ
伏
ふ
し、
願
ねが
ひて「
寛
ゆる
くし
給
たま
へ、さらば
償
つぐの
はん」と
言
い
へど、
30
肯
うけが
はずして
徃
ゆ
き、その
負󠄅債
おひめ
を
償
つぐの
ふまで
之
これ
を
獄
ひとや
に
入
い
れたり。
〘28㌻〙
31
同僚
どうれう
ども
有
あ
りし
事
こと
を
見
み
て
甚
いた
く
悲
かな
しみ、
徃
ゆ
きて
有
あ
りし
凡
すべ
ての
事
こと
をその
主人
しゅじん
に
吿
つ
ぐ。
32
ここに
主人
しゅじん
かれを
呼
よ
び
出
いだ
して
言
い
ふ「
惡
あ
しき
家來
けらい
よ、なんぢ
願
ねが
ひしによりて、かの
負󠄅債
おひめ
をことごとく
免
ゆる
せり。
33
わが
汝
なんぢ
を
憫
あはれ
みしごとく
汝
なんぢ
もまた
同僚
どうれう
を
憫
あはれ
むべきにあらずや」
34
斯
か
くその
主人
しゅじん
、
怒
いか
りて、
負󠄅債
おひめ
をことごとく
償
つくの
ふまで
彼
かれ
を
獄卒
ごくそつ
に
付
わた
せり。
35
もし
汝
なんぢ
等
ら
おのおの
心
こゝろ
より
兄弟
きゃうだい
を
赦
ゆる
さずば、
我
わ
が
天
てん
の
父󠄃
ちち
も
亦
また
なんぢらに
斯
かく
のごとく
爲
な
し
給
たま
ふべし』
第19章
1
イエスこれらの
言
ことば
を
語
かた
り
終󠄃
を
へてガリラヤを
去
さ
り、ヨルダンの
彼方
かなた
なるユダヤの
地方
ちはう
に
來
きた
り
給
たま
ひしに、
2
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
、
從
したが
ひたれば、
此處
ここ
にて
彼
かれ
らを
醫
いや
し
給
たま
へり。
3
パリサイ
人
びと
ら
來
きた
り、イエスを
試
こゝろ
みて
言
い
ふ『
何
なに
の
故
ゆゑ
にかかはらず、
人
ひと
その
妻
つま
を
出
いだ
すは
可
よ
きか』
4
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
人
ひと
を
造󠄃
つく
り
給
たま
ひしもの、
元始
はじめ
より
之
これ
を
男
をとこ
と
女
をんな
とに
造󠄃
つく
り、
而
しか
して、
5
「
斯
かゝ
る
故
ゆゑ
に
人
ひと
は
父󠄃
ちち
母
はは
を
離
はな
れ、その
妻
つま
に
合
あ
ひて、
二人
ふたり
のもの
一體
いったい
となるべし」と
言
い
ひ
給
たま
ひしを
未
いま
だ
讀
よ
まぬか。
6
然
さ
れば、はや
二人
ふたり
にはあらず、
一體
いったい
なり。この
故
ゆゑ
に
神
かみ
の
合
あは
せ
給
たま
ひし
者
もの
は
人
ひと
これを
離
はな
すべからず』
7
彼
かれ
らイエスに
言
い
ふ『さらば
何
なに
故
ゆゑ
モーセは
離緣狀
りえんじゃう
を
與
あた
へて
出
いだ
すことを
命
めい
じたるか』
8
彼
かれ
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『モーセは
汝
なんぢ
の
心
こゝろ
、
無情󠄃
つれなき
によりて
妻
つま
を
出
いだ
すことを
許
ゆる
したり。されど
元始
はじめ
より
然
さ
にはあらぬなり。
39㌻
9
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、《[*]》おほよそ
淫行
いんかう
の
故
ゆゑ
ならで
其
そ
の
妻
つま
をいだし、
他
ほか
に
娶
めと
る
者
もの
は
姦淫
かんいん
を
行
おこな
ふなり』[*異本に五章三二と同一の句あり。]
10
弟子
でし
たちイエスに
言
い
ふ『
人
ひと
もし
妻
つま
のことに
於
おい
て
斯
かく
のごとくば、
娶
めと
らざるに
如
し
かず』
11
彼
かれ
らに
言
い
ひたまふ『
凡
すべ
ての
人
ひと
この
言
ことば
を
受
う
け
容
い
るるにはあらず、ただ
授
さづ
けられたる
者
もの
のみなり。
12
それ
生
うま
れながらの
閹人
えんじん
あり、
人
ひと
に
爲
せ
られたる
閹人
えんじん
あり、また
天國
てんこく
のために
自
みづか
らなりたる
閹人
えんじん
あり、
之
これ
を
受
う
け
容
い
れうる
者
もの
は
受
う
け
容
い
るべし』
13
爰
こゝ
に
人々
ひとびと
イエスの
手
て
をおきて
祈
いの
り
給
たま
はんことを
望󠄇
のぞ
みて、
幼兒
をさなご
らを
連
つ
れ
來
きた
りしに、
弟子
でし
たち
禁
いまし
めたれば、
14
イエス
言
い
ひたまふ『
幼兒
をさなご
らを
許
ゆる
せ、
我
われ
に
來
きた
るを
止
とゞ
むな、
天國
てんこく
は
斯
かく
のごとき
者
もの
の
國
くに
なり』
15
斯
かく
て
手
て
を
彼
かれ
らの
上
うへ
におきて
此處
ここ
を
去
さ
り
給
たま
へり。
16
視
み
よ、
或
ある
人
ひと
みもとに
來
きた
りて
言
い
ふ『
師
し
よ、われ
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
をうる
爲
ため
には
如何
いか
なる
善
よ
き
事
こと
を
爲
な
すべきか』
〘29㌻〙
17
イエス
言
い
ひたまふ『
善
よ
き
事
こと
につきて
何
なん
ぞ
我
われ
に
問
と
ふか、
善
よ
き
者
もの
は
唯
たゞ
ひとりのみ。
汝
なんぢ
もし
生命
いのち
に
入
い
らんと
思
おも
はば
誡命
いましめ
を
守
まも
れ』
18
彼
かれ
いふ『
孰
いづ
れを』イエス
言
い
ひたまふ『「
殺
ころ
すなかれ」「
姦淫
かんいん
するなかれ」「
盜
ぬす
むなかれ」「
僞證
ぎしょう
を
立
た
つる
勿
なか
れ」
19
「
父󠄃
ちち
と
母
はは
とを
敬
うやま
へ」また「
己
おのれ
のごとく
汝
なんぢ
の
隣
となり
を
愛
あい
すべし」』
20
その
若者
わかもの
いふ『
我
われ
みな
之
これ
を
守
まも
れり、なほ
何
なに
を
缺
か
くか』
21
イエス
言
い
ひたまふ『なんぢ
若
も
し
全󠄃
まった
からんと
思
おも
はば、
徃
ゆ
きて
汝
なんぢ
の
所󠄃有
もちもの
を
賣
う
りて
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
に
施
ほどこ
せ、さらば
財寶
たから
を
天
てん
に
得
え
ん。かつ
來
きた
りて
我
われ
に
從
したが
へ』
22
この
言
ことば
をききて
若者
わかもの
、
悲
かな
しみつつ
去
さ
りぬ。
大
おほい
なる
資產
しさん
を
有
も
てる
故
ゆゑ
なり。
23
イエス
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
富
と
める
者
もの
の
天國
てんこく
に
入
い
るは
難
かた
し。
24
復
また
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
富
と
める
者
もの
の
神
かみ
の
國
くに
に
入
い
るよりは、
駱駝
らくだ
の
針
はり
の
孔
あな
を
通󠄃
とほ
るかた
反
かへ
つて
易
やす
し』
25
弟子
でし
たち
之
これ
をきき、
甚
はなは
だしく
驚
をどろ
きて
言
い
ふ『さらば
誰
たれ
か
救
すく
はるることを
得
え
ん』
40㌻
26
イエス
彼
かれ
らに
目
め
を
注
と
めて
言
い
ひ
給
たま
ふ『これは
人
ひと
に
能
あた
はねど
神
かみ
は
凡
すべ
ての
事
こと
をなし
得
う
るなり』
27
爰
こゝ
にペテロ
答
こた
へて
言
い
ふ『
視
み
よ、われら
一切
いっさい
をすてて
汝
なんぢ
に
從
したが
へり、
然
さ
れば
何
なに
を
得
う
べきか』
28
イエス
彼
かれ
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
世
よ
あらたまりて
人
ひと
の
子
こ
その
榮光
えいくわう
の
座位
くらゐ
に
坐
ざ
するとき、
我
われ
に
從
したが
へる
汝
なんぢ
等
ら
もまた
十二
じふに
の
座位
くらゐ
に
坐
ざ
してイスラエルの
十二
じふに
の
族
やから
を
審
さば
かん。
29
また
凡
おほよ
そ
我
わ
が
名
な
のために
或
あるひ
は
家
いへ
、
或
あるひ
は
兄弟
きゃうだい
、あるひは
姉妹
しまい
、あるひは
父󠄃
ちち
、
或
あるひ
は
母
はは
、
或
あるひ
は
子
こ
、
或
あるひ
は
田畑
たはた
を
棄
す
つる
者
もの
は
數倍
すうばい
を
受
う
け、また
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
を
嗣
つ
がん。
30
然
さ
れど
多
おほ
くの
先
さき
なる
者
もの
後
あと
に、
後
あと
なる
者
もの
先
さき
になるべし。
第20章
1
天國
てんこく
は
勞動人
はたらきびと
を
葡萄園
ぶだうぞの
に
雇
やと
ふために、
朝󠄃
あさ
早
はや
く
出
い
でたる
主人
あるじ
のごとし。
2
一日
いちにち
、
一
いち
デナリの
約束
やくそく
をなして、
勞動人
はたらきびと
どもを
葡萄園
ぶだうぞの
に
遣󠄃
つかは
す。
3
また
九時
くじ
ごろ
出
い
でて
市場
いちば
に
空󠄃
むな
しく
立
た
つ
者
もの
どもを
見
み
て、
4
「なんぢらも
葡萄園
ぶだうぞの
に
徃
ゆ
け、
相當
さうたう
のものを
與
あた
へん」といへば、
彼
かれ
らも
徃
ゆ
く。
5
十二
じふに
時
じ
頃
ころ
と
三時
さんじ
頃
ころ
とに
復
また
いでて
前󠄃
まへ
のごとくす。
6
五
ご
時
じ
頃
ころ
また
出
い
でしに、なほ
立
た
つ
者
もの
どものあるを
見
み
ていふ「
何
なに
ゆゑ
終󠄃日
ひねもす
ここに
空󠄃
むな
しく
立
た
つか」
7
かれら
言
い
ふ「たれも
我
われ
らを
雇
やと
はぬ
故
ゆゑ
なり」
主人
あるじ
いふ「なんぢらも
葡萄園
ぶだうぞの
に
徃
ゆ
け」
8
夕
ゆふべ
になりて
葡萄園
ぶだうぞの
の
主人
あるじ
その
家
いへ
司
つかさ
に
言
い
ふ「
勞動人
はたらきびと
を
呼
よ
びて、
後
あと
の
者
もの
より
始
はじ
め
先
さき
の
者
もの
にまで
賃銀
ちんぎん
をはらへ」
9
斯
かく
て
五
ご
時
じ
ごろに
雇
やと
はれしもの
來
きた
りて、おのおの
一
いち
デナリを
受
う
く。
〘30㌻〙
10
先
さき
の
者
もの
きたりて、
多
おほ
く
受
う
くるならんと
思
おも
ひしに、
之
これ
も
亦
また
おのおの
一
いち
デナリを
受
う
く。
11
受
う
けしとき、
家主
いへあるじ
にむかひ
呟
つぶや
きて
言
い
ふ、
12
「この
後
あと
の
者
もの
どもは
僅
わづか
に
一
いち
時間
じかん
はたらきたるに、
汝
なんぢ
は
一日
いちにち
の
勞
らう
と
暑
あつ
さとを
忍󠄄
しの
びたる
我
われ
らと
均
ひと
しく、
之
これ
を
遇󠄃
あしら
へり」
13
主人
あるじ
こたへて
其
そ
の
一人
ひとり
に
言
い
ふ「
友
とも
よ、
我
われ
なんぢに
不正
ふせい
をなさず、
汝
なんぢ
は
我
われ
と
一
いち
デナリの
約束
やくそく
をせしにあらずや。
41㌻
14
己
おの
が
物
もの
を
取
と
りて
徃
ゆ
け、この
後
あと
の
者
もの
に
汝
なんぢ
とひとしく
與
あた
ふるは、
我
わ
が
意󠄃
こゝろ
なり。
15
わが
物
もの
を
我
わ
が
意󠄃
こゝろ
のままに
爲
す
るは
可
よ
からずや、
我
われ
よきが
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
の
目
め
あしきか」
16
斯
かく
のごとく
後
あと
なる
者
もの
は
先
さき
に、
先
さき
なる
者
もの
は
後
あと
になるべし』
17
イエス、エルサレムに
上
のぼ
らんと
爲
し
給
たま
ふとき、
窃
ひそか
に
十二
じふに
弟子
でし
を
近󠄃
ちか
づけて、
途󠄃
みち
すがら
言
い
ひ
給
たま
ふ、
18
『
視
み
よ、
我
われ
らエルサレムに
上
のぼ
る、
人
ひと
の
子
こ
は
祭司長
さいしちゃう
・
學者
がくしゃ
らに
付
わた
されん。
彼
かれ
ら
之
これ
を
死
し
に
定
さだ
め、
19
また
嘲弄
てうろう
し、
鞭
むちう
ち、
十字架
じふじか
につけん
爲
ため
に
異邦人
いはうじん
に
付
わた
さん、
斯
かく
て
彼
かれ
は
三日
みっか
めに
甦
よみが
へるべし』
20
爰
こゝ
にゼベダイの
子
こ
らの
母
はは
、その
子
こ
らと
共
とも
に
御許
みもと
にきたり、
拜
はい
して
何事
なにごと
か
求
もと
めんとしたるに、
21
イエス
彼
かれ
に
言
い
ひたまふ『
何
なに
を
望󠄇
のぞ
むか』かれ
言
い
ふ『この
我
わ
が
二人
ふたり
の
子
こ
が
汝
なんぢ
の
御國
みくに
にて
一人
ひとり
は
汝
なんぢ
の
右
みぎ
に、
一人
ひとり
は
左
ひだり
に
坐
ざ
せんことを
命
めい
じ
給
たま
へ』
22
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらは
求
もと
むる
所󠄃
ところ
を
知
し
らず、
我
わ
が
飮
の
まんとする
酒杯
さかづき
を
飮
の
み
得
う
るか』かれら
言
い
ふ『
得
う
るなり』
23
イエス
言
い
ひたまふ『
實
げ
に
汝
なんぢ
らは
我
わ
が
酒杯
さかづき
を
飮
の
むべし、
然
さ
れど
我
わ
が
右
みぎ
左
ひだり
に
坐
ざ
することは、これ
我
われ
の
與
あた
ふべきものならず、
我
わ
が
父󠄃
ちち
より
備
そな
へられたる
人
ひと
こそ
與
あた
へらるるなれ』
24
十
じふ
人
にん
の
弟子
でし
これを
聞
き
き、
二人
ふたり
の
兄弟
きゃうだい
の
事
こと
によりて
憤
いきど
ほる。
25
イエス
彼
かれ
らを
呼
よ
びて
言
い
ひたまふ『
異邦人
いはうじん
の
君
きみ
のその
民
たみ
を
宰
つかさ
どり、
大
おほい
なる
者
もの
の
民
たみ
の
上
うへ
に
權
けん
を
執
と
ることは
汝
なんぢ
らの
知
し
る
所󠄃
ところ
なり。
26
汝
なんぢ
らの
中
うち
にては
然
しか
らず、
汝
なんぢ
らの
中
うち
に
大
おほい
ならんと
思
おも
ふ
者
もの
は、
汝
なんぢ
らの
役者
えきしゃ
となり、
27
首
かしら
たらんと
思
おも
ふ
者
もの
は
汝
なんぢ
らの
僕
しもべ
となるべし。
28
斯
かく
のごとく
人
ひと
の
子
こ
の
來
きた
れるも
事
つか
へらるる
爲
ため
にあらず、
反
かへ
つて
事
つか
ふることをなし、
又󠄂
また
おほくの
人
ひと
の
贖償
あがなひ
として
己
おの
が
生命
いのち
を
與
あた
へん
爲
ため
なり』
42㌻
29
彼
かれ
らエリコを
出
い
づるとき、
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
イエスに
從
したが
へり。
30
視
み
よ、
二人
ふたり
の
盲人
めしひ
、
路
みち
の
傍
かたは
らに
坐
ざ
しをりしが、イエスの
過󠄃
す
ぎ
給
たま
ふことを
聞
き
き、
叫
さけ
びて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、ダビデの
子
こ
よ、
我
われ
らを
憫
あはれ
みたまへ』
31
群衆
ぐんじゅう
かれらを
禁
いまし
めて
默
もだ
さしめんと
爲
し
たれど、
愈々
いよいよ
叫
さけ
びて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、ダビデの
子
こ
よ、
我
われ
らを
憫
あはれ
み
給
たま
へ』
〘31㌻〙
32
イエス
立
た
ち
止
どま
り、
彼
かれ
らを
呼
よ
びて
言
い
ひ
給
たま
ふ『わが
汝
なんぢ
らに
何
なに
を
爲
な
さんことを
望󠄇
のぞ
むか』
33
彼
かれ
ら
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
目
め
の
開
ひら
かれんことなり』
34
イエスいたく
憫
あはれ
みて
彼
かれ
らの
目
め
に
觸
さは
り
給
たま
へば、
直
たゞ
ちに
物
もの
見
み
ることを
得
え
て、イエスに
從
したが
へり。
第21章
1
彼
かれ
らエルサレムに
近󠄃
ちか
づき、オリブ
山
やま
の
邊
ほとり
なるベテパゲに
到
いた
りし
時
とき
、イエス
二人
ふたり
の
弟子
でし
を
遣󠄃
つかは
さんとして
言
い
ひ
給
たま
ふ、
2
『
向
むかひ
の
村
むら
にゆけ、やがて
繋
つな
ぎたる
驢馬
ろば
のその
子
こ
とともに
在
あ
るを
見
み
ん、
解
と
きて
我
われ
に
牽
ひ
ききたれ。
3
誰
たれ
かもし
汝
なんぢ
らに
何
なに
とか
言
い
はば「
主
しゅ
の
用
よう
なり」と
言
い
へ、さらば
直
たゞ
ちに
之
これ
を
遣󠄃
つかは
さん』
4
此
こ
の
事
こと
の
起󠄃
おこ
りしは
預言者
よげんしゃ
によりて
云
い
はれたる
言
ことば
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり。
曰
いは
く、
5
『シオンの
娘
むすめ
に
吿
つ
げよ、 「
視
み
よ、
汝
なんぢ
の
王
わう
、なんぢに
來
きた
り
給
たま
ふ。
柔和
にうわ
にして
驢馬
ろば
に
乘
の
り、
軛
くびき
を
負󠄅
お
ふ
驢馬
ろば
の
子
こ
に
乘
の
りて」』
6
弟子
でし
たち
徃
ゆ
きて、イエスの
命
めい
じ
給
たま
へる
如
ごと
くして、
7
驢馬
ろば
とその
子
こ
とを
牽
ひ
ききたり、
己
おの
が
衣
ころも
をその
上
うへ
におきたれば、イエス
之
これ
に
乘
の
りたまふ。
8
群衆
ぐんじゅう
の
多
おほ
くはその
衣
ころも
を
途󠄃
みち
にしき、
或
ある
者
もの
は
樹
き
の
枝
えだ
を
伐
き
りて
途󠄃
みち
に
敷
し
く。
9
かつ
前󠄃
まへ
にゆき
後
あと
にしたがふ
群衆
ぐんじゅう
よばはりて
言
い
ふ、『ダビデの
子
こ
に《[*]》ホサナ、
讃
ほ
むべきかな、
主
しゅ
の
御名
みな
によりて
來
きた
る
者
もの
。いと
高
たか
き
處
ところ
にてホサナ』[*「救あれ」との義なり。]
10
遂󠄅
つひ
にエルサレムに
入
い
り
給
たま
へば、
都
みやこ
擧
こぞ
りて
騷
さわぎ
立
た
ちて
言
い
ふ『これは
誰
たれ
なるぞ』
11
群衆
ぐんじゅう
いふ『これガリラヤのナザレより
出
い
でたる
預言者
よげんしゃ
イエスなり』
12
イエス
宮
みや
に
入
い
り、その
內
うち
なる
凡
すべ
ての
賣買
うりかひ
する
者
もの
を
逐󠄃
お
ひいだし、
兩替
りゃうがへ
する
者
もの
の
臺
だい
・
鴿
はと
を
賣
う
る
者
もの
の
腰掛
こしかけ
を
倒
たふ
して
言
い
ひ
給
たま
ふ、
43㌻
13
『「わが
家
いへ
は
祈
いのり
の
家
いへ
と
稱
とな
へらるべし」と
錄
しる
されたるに
汝
なんぢ
らは
之
これ
を
强盜
がうたう
の
巢
す
となす』
14
宮
みや
にて
盲人
めしひ
・
跛者
あしなへ
ども
御許
みもと
に
來
きた
りたれば、
之
これ
を
醫
いや
したまへり。
15
祭司長
さいしちゃう
・
學者
がくしゃ
らイエスの
爲
な
し
給
たま
へる
不思議
ふしぎ
なる
業
わざ
と
宮
みや
にて
呼
よば
はり『ダビデの
子
こ
にホサナ』と
言
い
ひをる
子
こ
等
ども
とを
見
み
、
憤
いきど
ほりて、
16
イエスに
言
い
ふ『なんぢ
彼
かれ
らの
言
い
ふところを
聞
き
くか』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『
然
しか
り「
嬰兒
みどりご
・
乳󠄃兒
ちのみご
の
口
くち
に
讃美
さんび
を
備
そな
へ
給
たま
へり」とあるを
未
いま
だ
讀
よ
まぬか』
17
遂󠄅
つひ
に
彼
かれ
らを
離
はな
れ、
都
みやこ
を
出
い
でてベタニヤにゆき、
其處
そこ
に
宿
やど
り
給
たま
ふ。
18
朝󠄃
あさ
早
はや
く、
都
みやこ
にかへる
時
とき
イエス
飢󠄄
う
ゑたまふ。
19
路
みち
の
傍
かたへ
なる
一
ひと
もとの
無花果
いちぢく
の
樹
き
を
見
み
て、その
下
もと
に
到
いた
り
給
たま
ひしに、
葉
は
のほかに
何
なに
をも
見出
みいだ
さず、
之
これ
に
對
むか
ひて『
今
いま
より
後
のち
いつまでも
果
み
を
結
むす
ばざれ』と
言
い
ひ
給
たま
へば、
無花果
いちぢく
の
樹
き
たちどころに
枯
か
れたり。
〘32㌻〙
20
弟子
でし
たち
之
これ
を
見
み
、
怪
あや
しみて
言
い
ふ、『
無花果
いちぢく
の
樹
き
の
斯
か
く
立刻
たちどころ
に
枯
か
れたるは
何
なん
ぞや』
21
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、もし
汝
なんぢ
ら
信仰
しんかう
ありて
疑
うたが
はずば、
啻
たゞ
に
此
こ
の
無花果
いちぢく
の
樹
き
にありし
如
ごと
きことを
爲
な
し
得
う
るのみならず、
此
こ
の
山
やま
に「
移
うつ
りて
海
うみ
に
入
い
れ」と
言
い
ふとも
亦
また
成
な
るべし。
22
かつ
祈
いのり
のとき
何
なに
にても
信
しん
じて
求
もと
めば、ことごとく
得
う
べし』
23
宮
みや
に
到
いた
りて
敎
をし
へ
給
たま
ふとき、
祭司長
さいしちゃう
・
民
たみ
の
長老
ちゃうらう
ら
御許
みもと
に
來
きた
りて
言
い
ふ『
何
なに
の
權威
けんゐ
をもて
此
これ
等
ら
の
事
こと
をなすか、
誰
た
がこの
權威
けんゐ
を
授
さづ
けしか』
24
イエス
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
我
われ
も
一言
ひとこと
なんぢらに
問
と
はん、もし
夫
それ
を
吿
つ
げなば、
我
われ
もまた
何
なに
の
權威
けんゐ
をもて
此
これ
等
ら
のことを
爲
な
すかを
吿
つ
げん。
25
ヨハネのバプテスマは
何處
いづこ
よりぞ、
天
てん
よりか、
人
ひと
よりか』かれら
互
たがひ
に
論
ろん
じて
言
い
ふ『もし
天
てん
よりと
言
い
はば「
何
なに
故
ゆゑ
かれを
信
しん
ぜざりし」と
言
い
はん。
26
もし
人
ひと
よりと
言
い
はんか、
人
ひと
みなヨハネを
預言者
よげんしゃ
と
認󠄃
みと
むれば、
我
われ
らは
群衆
ぐんじゅう
を
恐
おそ
る』
44㌻
27
遂󠄅
つひ
に
答
こた
へて『
知
し
らず』と
言
い
へり。イエスもまた
言
い
ひたまふ『
我
われ
も
何
なに
の
權威
けんゐ
をもて
此
これ
等
ら
のことを
爲
な
すか
汝
なんぢ
らに
吿
つ
げじ。
28
なんぢら
如何
いか
に
思
おも
ふか、
或
ある
人
ひと
ふたりの
子
こ
ありしが、その
兄
あに
にゆきて
言
い
ふ「
子
こ
よ、
今日
けふ
、
葡萄園
ぶだうぞの
に
徃
ゆ
きて
働
はたら
け」
29
答
こた
へて「
主
しゅ
よ、
我
われ
ゆかん」と
言
い
ひて
終󠄃
つひ
に
徃
ゆ
かず。
30
また
弟
おとうと
にゆきて
同
おな
じやうに
言
い
ひしに、
答
こた
へて「
徃
ゆ
かじ」と
言
い
ひたれど、
後
のち
くいて
徃
ゆ
きたり。
31
この
二人
ふたり
のうち
孰
いづれ
か
父󠄃
ちち
の
意󠄃
こゝろ
を
爲
な
しし』
彼
かれ
らいふ『
後
のち
の
者
もの
なり』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
取税人
しゅぜいにん
と
遊󠄃女
あそびめ
とは
汝
なんぢ
らに
先
さき
だちて
神
かみ
の
國
くに
に
入
い
るなり。
32
それヨハネ
義
ぎ
の
道󠄃
みち
をもて
來
きた
りしに、
汝
なんぢ
らは
彼
かれ
を
信
しん
ぜず、
取税人
しゅぜいにん
と
遊󠄃女
あそびめ
とは
信
しん
じたり。
然
しか
るに
汝
なんぢ
らは
之
これ
を
見
み
し
後
のち
もなほ
悔改
くいあらた
めずして
信
しん
ぜざりき。
33
また
一
ひと
つの
譬
たとへ
を
聽
き
け、ある
家主
いへあるじ
、
葡萄園
ぶだうぞの
をつくりて
籬
まがき
をめぐらし、
中
なか
に
酒槽
さかぶね
を
掘
ほ
り、
櫓
やぐら
を
建
た
て、
農夫
のうふ
どもに
貸
か
して
遠󠄄
とほ
く
旅立
たびだち
せり。
34
果期
みのりどき
ちかづきたれば、その
果
み
を
受
う
け
取
と
らんとて
僕
しもべ
らを
農夫
のうふ
どもの
許
もと
に
遣󠄃
つかは
ししに、
35
農夫
のうふ
どもその
僕
しもべ
らを
執
とら
へて
一人
ひとり
を
打
う
ちたたき、
一人
ひとり
をころし、
一人
ひとり
を
石
いし
にて
擊
う
てり。
36
復
また
ほかの
僕
しもべ
らを
前󠄃
まへ
よりも
多
おほ
く
遣󠄃
つかは
ししに、
之
これ
をも
同
おな
じやうに
遇󠄃
あしら
へり。
37
「わが
子
こ
は
敬
うやま
ふならん」と
言
い
ひて、
遂󠄅
つひ
にその
子
こ
を
遣󠄃
つかは
ししに、
38
農夫
のうふ
ども
此
こ
の
子
こ
を
見
み
て
互
たがひ
に
言
い
ふ「これは
世嗣
よつぎ
なり、いざ
殺
ころ
して、その
嗣業
しげふ
を
取
と
らん」
39
斯
かく
て
之
これ
をとらへ
葡萄園
ぶだうぞの
の
外
そと
に
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
して
殺
ころ
せり。
〘33㌻〙
40
さらば
葡萄園
ぶだうぞの
の
主人
あるじ
きたる
時
とき
、この
農夫
のうふ
どもに
何
なに
を
爲
な
さんか』
41
かれら
言
い
ふ『その
惡人
あくにん
どもを
飽󠄄
あ
くまで
滅
ほろぼ
し、
果期
みのりどき
におよびて
果
み
を
納󠄃
をさ
むる
他
ほか
の
農夫
のうふ
どもに
葡萄園
ぶだうぞの
を
貸
か
し
與
あた
ふべし』
42
イエス
言
い
ひたまふ『
聖󠄄書
せいしょ
に、 「
造󠄃家者
いへつくり
らの
棄
す
てたる
石
いし
は、 これぞ
隅
すみ
の
首石
おやいし
となれる、 これ
主
しゅ
によりて
成
な
れるにて、
我
われ
らの
目
め
には
奇
くす
しきなり」とあるを
汝
なんぢ
ら
未
いま
だ
讀
よ
まぬか。
45㌻
43
この
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
汝
なんぢ
らは
神
かみ
の
國
くに
をとられ、
其
そ
の
果
み
を
結
むす
ぶ
國人
くにびと
は、
之
これ
を
與
あた
へらるべし。
44
この
石
いし
の
上
うへ
に
倒
たふ
るる
者
もの
はくだけ、
又󠄂
また
この
石
いし
、
人
ひと
のうへに
倒
たふ
るれば、
其
そ
の
人
ひと
を
微塵
みじん
とせん』
45
祭司長
さいしちゃう
・パリサイ
人
びと
ら、イエスの
譬
たとへ
をきき、
己
おのれ
らを
指
さ
して
語
かた
り
給
たま
へるを
悟
さと
り、
46
イエスを
執
とら
へんと
思
おも
へど
群衆
ぐんじゅう
を
恐
おそ
れたり、
群衆
ぐんじゅう
かれを
預言者
よげんしゃ
とするに
因
よ
る。
第22章
1
イエスまた
譬
たとへ
をもて
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ
2
『
天國
てんこく
は
己
おの
が
子
こ
のために
婚筵
こんえん
を
設
まう
くる
王
わう
のごとし。
3
婚筵
こんえん
に
招
まね
きおきたる
人々
ひとびと
を
迎󠄃
むか
へんとて
僕
しもべ
どもを
遺󠄃
つかは
ししに、
來
きた
るを
肯
うけが
はず。
4
復
また
ほかの
僕
しもべ
どもを
遣󠄃
つかは
すとて
言
い
ふ「
招
まね
きたる
人々
ひとびと
に
吿
つ
げよ、
視
み
よ、
晝餐󠄃
ひるげ
は
旣
すで
に
備
そなは
りたり。
我
わ
が
牛
うし
も
肥
こ
えたる
畜
けもの
も
屠
ほふ
られて、
凡
すべ
ての
物
もの
備
そなは
りたれば、
婚筵
こんえん
に
來
きた
れと」
5
然
しか
るに
人々
ひとびと
顧󠄃
かへり
みずして、
或
ある
者
もの
は
己
おの
が
畑
はた
に、
或
ある
者
もの
は
己
おの
が
商賣
あきなひ
に
徃
ゆ
けり。
6
また
他
ほか
の
者
もの
は
僕
しもべ
どもを
執
とら
へて、
辱
はづか
しめ、かつ
殺
ころ
したれば、
7
王
わう
、
怒
いか
りて
軍勢
ぐんぜい
を
遣󠄃
つかは
し、かの
兇行者
きゃうかうしゃ
を
滅
ほろぼ
して、
其
そ
の
町
まち
を
燒
や
きたり。
8
斯
かく
て
僕
しもべ
どもに
言
い
ふ「
婚筵
こんえん
は
旣
すで
に
備
そなは
りたれど、
招
まね
きたる
者
もの
どもは
相應
ふさは
しからず。
9
然
さ
れば
汝
なんぢ
ら
街
ちまた
に
徃
ゆ
きて
遇󠄃
あ
ふほどの
者
もの
を
婚筵
こんえん
に
招
まね
け」
10
僕
しもべ
ども
途󠄃
みち
に
出
い
でて
善
よ
きも
惡
あ
しきも
遇󠄃
あ
ふほどの
者
もの
をみな
集
あつ
めたれば、
婚禮
こんれい
の
席
せき
は
客
きゃく
にて
滿
み
てり。
11
王
わう
、
客
きゃく
を
見
み
んとて
入
い
り
來
きた
り、
一人
ひとり
の
禮服󠄃
れいふく
を
著
つ
けぬ
者
もの
あるを
見
み
て、
12
之
これ
に
言
い
ふ「
友
とも
よ、
如何
いか
なれば
禮服󠄃
れいふく
を
著
つ
けずして
此處
ここ
に
入
い
りたるか」かれ
默
もだ
しゐたり。
13
ここに
王
わう
、
侍者
じしゃ
らに
言
い
ふ「その
手
て
足
あし
を
縛
しば
りて
外
そと
の
暗󠄃黑
くらき
に
投
な
げいだせ、
其處
そこ
にて
哀哭
なげき
・
切齒
はがみ
することあらん」
14
それ
招
まね
かるる
者
もの
は
多
おほ
かれど、
選󠄄
えら
ばるる
者
もの
は
少
すくな
し』
15
爰
こゝ
にパリサイ
人
びと
ら
出
い
でて
如何
いか
にしてかイエスを
言
ことば
の
羂
わな
に
係
か
けんと
相
あひ
議
はか
り、
16
その
弟子
でし
らをヘロデ
黨
たう
の
者
もの
どもと
共
とも
に
遺󠄃
のこ
して
言
い
はしむ『
師
し
よ、
我
われ
らは
知
し
る、なんぢは
眞
まこと
にして、
眞
まこと
をもて
神
かみ
の
道󠄃
みち
を
敎
をし
へ、かつ
誰
たれ
をも
憚
はゞか
りたまふ
事
こと
なし、
人
ひと
の
外貌
うはべ
を
見
み
給
たま
はぬ
故
ゆゑ
なり。
〘34㌻〙
46㌻
17
されば
我
われ
らに
吿
つ
げたまへ、
貢
みつぎ
をカイザルに
納󠄃
をさ
むるは
可
よ
きか、
惡
あ
しきか、
如何
いか
に
思
おも
ひたまふ』
18
イエスその
邪曲
よこしま
なるを
知
し
りて
言
い
ひたまふ『
僞善者
ぎぜんしゃ
よ、なんぞ
我
われ
を
試
こゝろ
むるか。
19
貢
みつぎ
の
金
かね
を
我
われ
に
見
み
せよ』
彼
かれ
らデナリ
一
ひと
つを
持
も
ち
來
きた
る。
20
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『これは
誰
たれ
の
像
かたち
、たれの
號
しるし
なるか』
21
彼
かれ
ら
言
い
ふ『カイザルのなり』ここに
彼
かれ
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『さらばカイザルの
物
もの
はカイザルに、
神
かみ
の
物
もの
は
神
かみ
に
納󠄃
をさ
めよ』
22
彼
かれ
ら
之
これ
を
聞
き
きて
怪
あや
しみ、イエスを
離
はな
れて
去
さ
り
徃
ゆ
けり。
23
復活
よみがへり
なしといふサドカイ
人
びと
ら、その
日
ひ
、みもとに
來
きた
り
問
と
ひて
言
い
ふ
24
『
師
し
よ、モーセは「
人
ひと
もし
子
こ
なくして
死
し
なば、
其
そ
の
兄弟
きゃうだい
かれの
妻
つま
を
娶
めと
りて
兄弟
きゃうだい
のために
世嗣
よつぎ
を
擧
あ
ぐべし」と
云
い
へり。
25
我
われ
らの
中
うち
に
七人
しちにん
の
兄弟
きゃうだい
ありしが、
兄
あに
めとりて
死
し
に、
世嗣
よつぎ
なくして
其
そ
の
妻
つま
を
弟
おとうと
に
遺󠄃
のこ
したり。
26
その
二
に
、その
三
さん
より、その
七
しち
まで
皆
みな
かくの
如
ごと
く
爲
な
し、
27
最後
いやはて
にその
女
をんな
も
死
し
にたり。
28
されば
復活
よみがへり
の
時
とき
その
女
をんな
は
七人
しちにん
のうち
誰
たれ
の
妻
つま
たるべきか、
彼
かれ
ら
皆
みな
これを
妻
つま
としたればなり』
29
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
聖󠄄書
せいしょ
をも
神
かみ
の
能力
ちから
をも
知
し
らぬ
故
ゆゑ
に
誤
あやま
れり。
30
それ
人
ひと
よみがへりの
時
とき
は
娶
めと
らず、
嫁
とつ
がず、
天
てん
に
在
あ
る
御使
みつかひ
たちの
如
ごと
し。
31
死人
しにん
の
復活
よみがへり
に
就
つ
きては
神
かみ
なんぢらに
吿
つ
げて、
32
「
我
われ
はアブラハムの
神
かみ
、イサクの
神
かみ
、ヤコブの
神
かみ
なり」と
言
い
ひ
給
たま
へることを
未
いま
だ
讀
よ
まぬか。
神
かみ
は
死
し
にたる
者
もの
の
神
かみ
にあらず、
生
い
ける
者
もの
の
神
かみ
なり』
33
群衆
ぐんじゅう
これを
聞
き
きて
其
そ
の
敎
をしへ
に
驚
をどろ
けり。
34
パリサイ
人
びと
ら、イエスのサドカイ
人
びと
らを
默
もだ
さしめ
給
たま
ひしことを
聞
き
きて
相
あひ
集
あつま
り、
35
その
中
うち
なる
一人
ひとり
の
敎法師
けうはふし
、イエスを
試
こゝろ
むる
爲
ため
に
問
と
ふ
47㌻
36
『
師
し
よ、
律法
おきて
のうち
孰
いづれ
の
誡命
いましめ
が
大
おほい
なる』
37
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『「なんぢ
心
こゝろ
を
盡
つく
し、
精神
せいしん
を
盡
つく
し、
思
おもひ
を
盡
つく
して
主
しゅ
なる
汝
なんぢ
の
神
かみ
を
愛
あい
すべし」
38
これは
大
おほい
にして
第一
だいいち
の
誡命
いましめ
なり。
39
第二
だいに
もまた
之
これ
にひとし「おのれの
如
ごと
く、なんぢの
隣
となり
を
愛
あい
すべし」
40
律法
おきて
全󠄃體
ぜんたい
と
預言者
よげんしゃ
とは
此
こ
の
二
ふた
つの
誡命
いましめ
に
據
よ
るなり』
41
パリサイ
人
びと
らの
集
あつま
りたる
時
とき
、イエス
彼
かれ
らに
問
と
ひて
言
い
ひ
給
たま
ふ
42
『なんぢらはキリストに
就
つ
きて
如何
いか
に
思
おも
ふか、
誰
たれ
の
子
こ
なるか』かれら
言
い
ふ『ダビデの
子
こ
なり』
43
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『さらばダビデ
御靈
みたま
に
感
かん
じて
何
なに
故
ゆゑ
かれを
主
しゅ
と
稱
とな
ふるか。
曰
いは
く
44
「
主
しゅ
、わが
主
しゅ
に
言
い
ひ
給
たま
ふ、 われ
汝
なんぢ
の
敵
てき
を
汝
なんぢ
の
足
あし
の
下
した
に
置
お
くまでは、
我
わ
が
右
みぎ
に
坐
ざ
せよ」
45
斯
か
くダビデ
彼
かれ
を
主
しゅ
と
稱
とな
ふれば、
爭
いか
でその
子
こ
ならんや』
〘35㌻〙
46
誰
たれ
も
一言
ひとこと
だに
答
こた
ふること
能
あた
はず、その
日
ひ
より
敢
あへ
て
復
また
イエスに
問
と
ふ
者
もの
なかりき。
第23章
1
爰
こゝ
にイエス
群衆
ぐんじゅう
と
弟子
でし
たちとに
語
かた
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ、
2
『
學者
がくしゃ
とパリサイ
人
びと
とはモーセの
座
ざ
を
占
し
む。
3
されば
凡
すべ
てその
言
い
ふ
所󠄃
ところ
は、
守
まも
りて
行
おこな
へ、されど、その
所󠄃作
しわざ
には
效
なら
ふな、
彼
かれ
らは
言
い
ふのみにて
行
おこな
はぬなり。
4
また
重
おも
き
荷
に
を
括
くゝ
りて
人
ひと
の
肩
かた
にのせ、
己
おのれ
は
指
ゆび
にて
之
これ
を
動
うご
かさんともせず。
5
凡
すべ
てその
所󠄃作
しわざ
は
人
ひと
に
見
み
られん
爲
ため
にするなり。
即
すなは
ちその
經札
きゃうふだ
を
幅
はゞ
ひろくし、
衣
ころも
の
總
ふさ
を
大
おほき
くし、
6
饗宴
ふるまひ
の
上席
じゃうせき
、
會堂
くわいだう
の
上座
じゃうざ
、
7
市場
いちば
にての
敬禮
けいれい
、また
人
ひと
にラビと
呼
よ
ばるることを
好
この
む。
8
されど
汝
なんぢ
らはラビの
稱
となへ
を
受
う
くな、
汝
なんぢ
らの
師
し
は
一人
ひとり
にして、
汝
なんぢ
等
ら
はみな
兄弟
きゃうだい
なり。
9
地
ち
にある
者
もの
を
父󠄃
ちち
と
呼
よ
ぶな、
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
は
一人
ひとり
、すなはち
天
てん
に
在
いま
す
者
もの
なり。
10
また
導󠄃師
だうし
の
稱
となへ
を
受
う
くな、
汝
なんぢ
らの
導󠄃師
だうし
はひとり、
即
すなは
ちキリストなり。
48㌻
11
汝
なんぢ
等
ら
のうち
大
おほい
なる
者
もの
は、
汝
なんぢ
らの
役者
えきしゃ
とならん。
12
凡
おほよ
そおのれを
高
たか
うする
者
もの
は
卑
ひく
うせられ、
己
おのれ
を
卑
ひく
うする
者
もの
は
高
たか
うせらるるなり。
13
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、
僞善
ぎぜん
なる
學者
がくしゃ
、パリサイ
人
びと
よ、なんぢらは
人
ひと
の
前󠄃
まへ
に
天國
てんこく
を
閉
とざ
して、
自
みづか
ら
入
い
らず、
入
い
らんとする
人
ひと
の
入
い
るをも
許
ゆる
さぬなり。
14
[なし]《[*]》[*異本にマルコ傳十二章一四ルカ傳二十章四七とほぼ同じ句あり。]
15
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、
僞善
ぎぜん
なる
學者
がくしゃ
、パリサイ
人
びと
よ、
汝
なんぢ
らは
一人
ひとり
の
改宗者
かいしゅうしゃ
を
得
え
んために
海
うみ
陸
をか
を
經
へ
めぐり、
旣
すで
に
得
う
れば、
之
これ
を
己
おのれ
に
倍
ばい
したる《[*]》ゲヘナの
子
こ
となすなり。[*譯して「地獄の子」とす。]
16
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、
盲目
めしひ
なる
手引
てびき
よ、なんぢらは
言
い
ふ「
人
ひと
もし
宮
みや
を
指
さ
して
誓
ちか
はば
事
こと
なし、
宮
みや
の
黄金
こがね
を
指
さ
して
誓
ちか
はば
果
はた
さざるべからず」と。
17
愚
おろか
にして
盲目
めしひ
なる
者
もの
よ、
黄金
こがね
と
黄金
こがね
を
聖󠄄
せい
ならしむる
宮
みや
とは
孰
いづれ
か
貴
たふと
き。
18
なんぢら
又󠄂
また
いふ「
人
ひと
もし
祭壇
さいだん
を
指
さ
して
誓
ちか
はば
事
こと
なし、
其
そ
の
上
うへ
の
供物
そなへもの
を
指
さ
して
誓
ちか
はば
果
はた
さざるべからず」と。
19
盲目
めしひ
なる
者
もの
よ、
供物
そなへもの
と
供物
そなへもの
を
聖󠄄
せい
ならしむる
祭壇
さいだん
とは
孰
いづれ
か
貴
たふと
き。
20
されば
祭壇
さいだん
を
指
さ
して
誓
ちか
ふ
者
もの
は、
祭壇
さいだん
とその
上
うへ
の
凡
すべ
ての
物
もの
とを
指
さ
して
誓
ちか
ふなり。
21
宮
みや
を
指
さ
して
誓
ちか
ふ
者
もの
は、
宮
みや
とその
內
うち
に
住󠄃
す
みたまふ
者
もの
とを
指
さ
して
誓
ちか
ふなり。
22
また
天
てん
を
指
さ
して
誓
ちか
ふ
者
もの
は、
神
かみ
の
御座
みくら
とその
上
うへ
に
坐
ざ
したまふ
者
もの
とを
指
さ
して
誓
ちか
ふなり。
23
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、
僞善
ぎぜん
なる
學者
がくしゃ
、パリサイ
人
びと
よ、
汝
なんぢ
らは
薄荷
はくか
・
蒔蘿
いのんど
・クミンの
十分󠄃
じふぶん
の
一
いち
を
納󠄃
をさ
めて、
律法
おきて
の
中
うち
にて
尤
もっと
も
重
おも
き
公平󠄃
こうへい
と
憐憫
あはれみ
と
忠信
ちうしん
とを
等閑
なほざり
にす。
然
さ
れど
之
これ
は
行
おこな
ふべきものなり、
而
しか
して
彼
かれ
もまた
等閑
なほざり
にすべきものならず。
24
盲目
めしひ
なる
手引
てびき
よ、
汝
なんぢ
らは
蚋
ぶよ
を
漉
こ
し
出
いだ
して
駱駝
らくだ
を
呑
の
むなり。
〘36㌻〙
25
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、
僞善
ぎぜん
なる
學者
がくしゃ
、パリサイ
人
びと
よ、
汝
なんぢ
らは
酒杯
さかづき
と
皿
さら
との
外
そと
を
潔󠄄
きよ
くす、されど
內
うち
は
貪慾
どんよく
と
放縱
はうじゅう
とにて
滿
み
つるなり。
49㌻
26
盲目
めしひ
なるパリサイ
人
びと
よ、
汝
なんぢ
まづ
酒杯
さかづき
の
內
うち
を
潔󠄄
きよ
めよ、
然
さ
らば
外
そと
も
潔󠄄
きよ
くなるべし。
27
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、
僞善
ぎぜん
なる
學者
がくしゃ
、パリサイ
人
びと
よ、
汝
なんぢ
らは
白
しろ
く
塗
ぬ
りたる
墓
はか
に
似
に
たり、
外
そと
は
美
うつく
しく
見
み
ゆれども
內
うち
は
死人
しにん
の
骨
ほね
とさまざまの
穢
けがれ
とにて
滿
み
つ。
28
斯
かく
のごとく
汝
なんぢ
らも
外
そと
は
人
ひと
に
正
たゞ
しく
見
み
ゆれども、
內
うち
は
僞善
ぎぜん
と
不法
ふほふ
とにて
滿
み
つるなり。
29
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、
僞善
ぎぜん
なる
學者
がくしゃ
、パリサイ
人
びと
よ、
汝
なんぢ
らは
預言者
よげんしゃ
の
墓
はか
をたて、
義人
ぎじん
の
碑
ひ
を
飾󠄃
かざ
りて
言
い
ふ、
30
「
我
われ
らもし
先祖
せんぞ
の
時
とき
にありしならば、
預言者
よげんしゃ
の
血
ち
を
流
なが
すことに
與
くみ
せざりしものを」と。
31
かく
汝
なんぢ
らは
預言者
よげんしゃ
を
殺
ころ
しし
者
もの
の
子
こ
たるを
自
みづか
ら
證
あかし
す。
32
なんぢら
己
おの
が
先祖
せんぞ
の
桝目
ますめ
を
充
みた
せ。
33
蛇
へび
よ、
蝮
まむし
の
裔
すゑ
よ、なんぢら
爭
いか
でゲヘナの
刑罰
けいばつ
を
避󠄃
さ
け
得
え
んや。
34
この
故
ゆゑ
に
視
み
よ、
我
われ
なんぢらに
預言者
よげんしゃ
・
智者
ちしゃ
・
學者
がくしゃ
らを
遣󠄃
つかは
さんに、
其
そ
の
中
うち
の
或
ある
者
もの
を
殺
ころ
し、
十字架
じふじか
につけ、
或
ある
者
もの
を
汝
なんぢ
らの
會堂
くわいだう
にて
鞭
むちう
ち、
町
まち
より
町
まち
に
逐󠄃
お
ひ
苦
くる
しめん。
35
之
これ
によりて
義人
ぎじん
アベルの
血
ち
より、
聖󠄄所󠄃
せいじょ
と
祭壇
さいだん
との
間
あひだ
にて
汝
なんぢ
らが
殺
ころ
ししバラキヤの
子
こ
ザカリヤの
血
ち
に
至
いた
るまで、
地上
ちじゃう
にて
流
なが
したる
正
たゞ
しき
血
ち
は、
皆
みな
なんぢらに
報
むく
い
來
きた
らん。
36
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、これらの
事
こと
はみな
今
いま
の
代
よ
に
報
むく
い
來
きた
るべし。
37
ああエルサレム、エルサレム、
預言者
よげんしゃ
たちを
殺
ころ
し、
遣󠄃
つかは
されたる
人々
ひとびと
を
石
いし
にて
擊
う
つ
者
もの
よ、
牝鷄
めんどり
のその
雛
ひな
を
翼
つばさ
の
下
した
に
集
あつ
むるごとく、
我
われ
なんぢの
子
こ
どもを
集
あつ
めんと
爲
せ
しこと
幾度
いくたび
ぞや、
然
さ
れど
汝
なんぢ
らは
好
この
まざりき。
38
視
み
よ、
汝
なんぢ
らの
家
いへ
は
廢
す
てられて
汝
なんぢ
らに
遺󠄃
のこ
らん。
39
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ「
讃
ほ
むべきかな、
主
しゅ
の
名
な
によりて
來
きた
る
者
もの
」と、
汝
なんぢ
等
ら
のいふ
時
とき
の
至
いた
るまでは、
今
いま
より
我
われ
を
見
み
ざるべし』
50㌻
第24章
1
イエス
宮
みや
を
出
い
でてゆき
給
たま
ふとき、
弟子
でし
たち
宮
みや
の
建造󠄃物
たてもの
を
示
しめ
さんとて
御許
みもと
に
來
きた
りしに、
2
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
此
こ
の
一切
すべて
の
物
もの
を
見
み
ぬか。
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
此處
ここ
に
一
ひと
つの
石
いし
も
崩󠄃
くづ
されずしては
石
いし
の
上
うへ
に
遺󠄃
のこ
らじ』
3
オリブ
山
やま
に
坐
ざ
し
給
たま
ひしとき、
弟子
でし
たち
窃
ひそか
に
御許
みもと
に
來
きた
りて
言
い
ふ『われらに
吿
つ
げ
給
たま
へ、これらの
事
こと
は
何時
いつ
あるか、
又󠄂
また
なんぢの
來
きた
り
給
たま
ふと
世
よ
の
終󠄃
をはり
とには、
何
なに
の
兆
しるし
あるか』
〘37㌻〙
4
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
人
ひと
に
惑
まどは
されぬやうに
心
こゝろ
せよ。
5
多
おほ
くの
者
もの
わが
名
な
を
冐
をか
し
來
きた
り「
我
われ
はキリストなり」と
言
い
ひて
多
おほ
くの
人
ひと
を
惑
まどは
さん。
6
又󠄂
また
なんぢら
戰爭
いくさ
と
戰爭
いくさ
の
噂
うはさ
とを
聞
き
かん、
愼
つゝし
みて
懼
おそ
るな。
斯
かゝ
る
事
こと
はあるべきなり、
然
さ
れど
未
いま
だ
終󠄃
をはり
にはあらず。
7
即
すなは
ち「
民
たみ
は
民
たみ
に、
國
くに
は
國
くに
に
逆󠄃
さから
ひて
起󠄃
た
たん」また
處々
ところどころ
に
饑饉
ききん
と
地震
ぢしん
とあらん、
8
此
これ
等
ら
はみな
產
うみ
の
苦難
くるしみ
の
始
はじめ
なり。
9
そのとき
人々
ひとびと
なんぢらを
患難
なやみ
に
付
わた
し、また
殺
ころ
さん、
汝
なんぢ
等
ら
わが
名
な
の
爲
ため
に、もろもろの
國人
くにびと
に
憎
にく
まれん。
10
その
時
とき
おほくの
人
ひと
つまづき、
且
かつ
たがひに
付
わた
し、
互
たがひ
に
憎
にく
まん。
11
多
おほ
くの
僞
にせ
預言者
よげんしゃ
おこりて
多
おほ
くの
人
ひと
を
惑
まどは
さん。
12
また
不法
ふほふ
の
增
ま
すによりて
多
おほ
くの
人
ひと
の
愛
あい
、
冷
ひやゝ
かにならん。
13
然
さ
れど
終󠄃
をはり
まで
耐
た
へしのぶ
者
もの
は
救
すく
はるべし。
14
御國
みくに
のこの
福音󠄃
ふくいん
は、もろもろの
國人
くにびと
に
證
あかし
をなさんため
全󠄃世界
ぜんせかい
に
宣傅
のべつた
へられん、
而
しか
して
後
のち
、
終󠄃
をはり
は
至
いた
るべし。
15
なんぢら
預言者
よげんしゃ
ダニエルによりて
言
い
はれたる「
荒
あら
す
惡
にく
むべき
者
もの
」の
聖󠄄
せい
なる
處
ところ
に
立
た
つを
見
み
ば(
讀
よ
む
者
もの
さとれ)
16
その
時
とき
ユダヤに
居
を
る
者
もの
どもは
山
やま
に
遁
のが
れよ。
17
屋
や
の
上
うへ
に
居
を
る
者
もの
はその
家
いへ
の
物
もの
を
取
と
り
出
いだ
さんとして
下
くだ
るな。
18
畑
はた
にをる
者
もの
は
上衣
うはぎ
を
取
と
らんとて
歸
かへ
るな。
19
その
日
ひ
には
孕
みごも
りたる
者
もの
と
乳󠄃
ちゝ
を
哺
の
まする
者
もの
とは
禍害󠄅
わざはひ
なるかな。
20
汝
なんぢ
らの
遁
に
ぐることの
冬
ふゆ
または
安息
あんそく
日
にち
に
起󠄃
おこ
らぬように
祈
いの
れ。
51㌻
21
そのとき
大
おほい
なる
患難
なやみ
あらん、
世
よ
の
創
はじめ
より
今
いま
に
至
いた
るまで
斯
かゝ
る
患難
なやみ
はなく、また
後
のち
にも
無
な
からん。
22
その
日
ひ
もし
少
すくな
くせられずば、
一人
ひとり
だに
救
すく
はるる
者
もの
なからん、されど
選󠄄民
せんみん
の
爲
ため
にその
日
ひ
少
すくな
くせらるべし。
23
その
時
とき
あるひは「
視
み
よ、キリスト
此處
ここ
にあり」
或
あるひ
は「
此處
ここ
にあり」と
言
い
ふ
者
もの
ありとも
信
しん
ずな。
24
僞
にせ
キリスト・
僞
にせ
預言者
よげんしゃ
おこりて
大
おほい
なる
徴
しるし
と
不思議
ふしぎ
とを
現
あらは
し、
爲
な
し
得
う
べくば
選󠄄民
せんみん
をも
惑
まどは
さんと
爲
す
るなり。
25
視
み
よ、
預
あらか
じめ
之
これ
を
汝
なんぢ
らに
吿
つ
げおくなり。
26
されば
人
ひと
もし
汝
なんぢ
らに「
視
み
よ、
彼
かれ
は
荒野
あらの
にあり」といふとも
出
い
で
徃
ゆ
くな「
視
み
よ、
彼
かれ
は
部屋
へや
にあり」と
言
い
ふとも
信
しん
ずな。
27
電光
いなづま
の
東
ひがし
より
出
い
でて
西
にし
にまで
閃
ひらめ
きわたる
如
ごと
く、
人
ひと
の
子
こ
の
來
きた
るも
亦
また
然
しか
らん。
28
それ
死骸
しがい
のある
處
ところ
には《[*]》
鷲
わし
あつまらん。[*或は「兀鷹」と譯す。]
29
これらの
日
ひ
の
患難
なやみ
ののち
直
たゞ
ちに
日
ひ
は
暗󠄃
くら
く、
月
つき
は
光
ひかり
を
發
はな
たず、
星
ほし
は
空󠄃
そら
より
隕
お
ち、
天
てん
の
萬象
ばんしゃう
、ふるひ
動
うご
かん。
30
そのとき
人
ひと
の
子
こ
の
兆
しるし
、
天
てん
に
現
あらは
れん。そのとき
地上
ちじゃう
の
諸族
しょぞく
みな
嘆
なげ
き、かつ
人
ひと
の
子
こ
の
能力
ちから
と
大
おほい
なる
榮光
えいくわう
とをもて
天
てん
の
雲
くも
に
乘
の
り
來
きた
るを
見
み
ん。
31
また
彼
かれ
は
使
つかひ
たちを
大
おほい
なるラッパの
聲
こゑ
とともに
遣󠄃
つかは
さん。
使
つかひ
たちは
天
てん
の
此
こ
の
極
はて
より
彼
か
の
極
はて
まで
四方
しはう
より
選󠄄民
せんみん
を
集
あつ
めん。
〘38㌻〙
32
無花果
いちぢく
の
樹
き
よりの
譬
たとへ
をまなべ、その
枝
えだ
すでに
柔
やはら
かくなりて
葉
は
芽
め
ぐめば、
夏
なつ
の
近󠄃
ちか
きを
知
し
る。
33
斯
かく
のごとく
汝
なんぢ
らも
此
これ
等
ら
のすべての
事
こと
を
見
み
ば《[*]》
人
ひと
の
子
こ
すでに
近󠄃
ちか
づきて
門邊
かどべ
に
到
いた
るを
知
し
れ。[*或は「時」と譯す。]
34
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、これらの
事
こと
ことごとく
成
な
るまで、
今
いま
の
代
よ
は
過󠄃
す
ぎ
徃
ゆ
くまじ。
35
天
てん
地
ち
は
過󠄃
す
ぎゆかん、
然
さ
れど
我
わ
が
言
ことば
は
過󠄃
す
ぎ
徃
ゆ
くことなし。
36
その
日
ひ
その
時
とき
を
知
し
る
者
もの
なし、
天
てん
の
使
つかひ
たちも
知
し
らず《[*]》
子
こ
も
知
し
らず、ただ
父󠄃
ちち
のみ
知
し
り
給
たま
ふ。[*異本「子も知らず」の句なし。]
52㌻
37
ノアの
時
とき
のごとく
人
ひと
の
子
こ
の
來
きた
るも
然
しか
あるべし。
38
曾
かつ
て
洪水
こうずゐ
の
前󠄃
まへ
ノア
方舟
はこぶね
に
入
い
る
日
ひ
までは、
人々
ひとびと
飮
の
み
食󠄃
く
ひ、
娶
めと
り
嫁
とつ
がせなどし、
39
洪水
こうずゐ
の
來
きた
りて
悉
ことご
とく
滅
ほろぼ
すまでは
知
し
らざりき、
人
ひと
の
子
こ
の
來
きた
るも
然
しか
あるべし。
40
その
時
とき
ふたりの
男
をとこ
、
畑
はた
にをらんに、
一人
ひとり
は
取
と
られ、
一人
ひとり
は
遺󠄃
のこ
されん。
41
二人
ふたり
の
女
をんな
、
磨
うす
碾
ひ
きをらんに、
一人
ひとり
は
取
と
られ、
一人
ひとり
は
遺󠄃
のこ
されん。
42
されば
目
め
を
覺
さま
しをれ、
汝
なんぢ
らの
主
しゅ
のきたるは、
何
いづ
れの
日
ひ
なるかを
知
し
らざればなり。
43
汝
なんぢ
等
ら
これを
知
し
れ、
家主
いへあるじ
もし
盜人
ぬすびと
いづれの
時
とき
きたるかを
知
し
らば、
目
め
をさまし
居
ゐ
て、その
家
いへ
を
穿
うが
たすまじ。
44
この
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
らも
備
そな
へをれ、
人
ひと
の
子
こ
は
思
おも
はぬ
時
とき
に
來
きた
ればなり。
45
主人
しゅじん
が
時
とき
に
及
およ
びて
食󠄃物
しょくもつ
を
與
あた
へさする
爲
ため
に、
家
いへ
の
者
もの
のうへに
立
た
てたる
忠實
まめやか
にして
慧󠄄
さと
き
僕
しもべ
は
誰
たれ
なるか。
46
主人
しゅじん
のきたる
時
とき
かく
爲
な
し
居
を
るを
見
み
らるる
僕
しもべ
は
幸福
さいはひ
なり。
47
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
主人
しゅじん
すべての
所󠄃有
もちもの
を
彼
かれ
に
掌
つかさ
どらすべし。
48
若
も
しその
僕
しもべ
、
惡
あ
しくして
心
こゝろ
のうちに
主人
しゅじん
は
遲
おそ
しと
思
おも
ひて、
49
その
同輩
どうはい
を
扑
たゝ
きはじめ、
酒徒
さけのみ
らと
飮食󠄃
のみくひ
を
共
とも
にせば、
50
その
僕
しもべ
の
主人
しゅじん
おもはぬ
日
ひ
しらぬ
時
とき
に
來
きた
りて、
51
之
これ
を《[*]》
烈
はげ
しく
笞
しもと
うち、その
報
むくい
を
僞善者
ぎぜんしゃ
と
同
おな
じうせん。
其處
そこ
にて
哀哭
なげき
・
切齒
はがみ
することあらん。[*或は「挽き斬り」と譯す。]
第25章
1
このとき
天國
てんこく
は
燈火
ともしび
を
執
と
りて、
新郎
はなむこ
を
迎󠄃
むか
へに
出
い
づる
十
じふ
人
にん
の
處女
をとめ
に
比
なずら
ふべし。
2
その
中
うち
の
五
ご
人
にん
は
愚
おろか
にして
五
ご
人
にん
は
慧󠄄
さと
し。
3
愚
おろか
なる
者
もの
は
燈火
ともしび
をとりて
油
あぶら
を
携
たづさ
へず、
4
慧󠄄
さと
きものは
油
あぶら
を
器
うつは
に
入
い
れて
燈火
ともしび
とともに
携
たづさ
へたり。
5
新郎
はなむこ
、
遲
おそ
かりしかば、
皆
みな
まどろみて
寢
い
ぬ。
6
夜半󠄃
よなか
に「やよ、
新郎
はなむこ
なるぞ、
出
い
で
迎󠄃
むか
へよ」と
呼
よば
はる
聲
こゑ
す。
7
ここに
處女
をとめ
みな
起󠄃
お
きてその
燈火
ともしび
を
整
とゝの
へたるに、
8
愚
おろか
なる
者
もの
は
慧󠄄
さと
きものに
言
い
ふ「なんぢらの
油
あぶら
を
分󠄃
わ
けあたへよ、
我
われ
らの
燈火
ともしび
きゆるなり」
〘39㌻〙
53㌻
9
慧󠄄
さと
きもの
答
こた
へて
言
い
ふ「
恐
おそ
らくは
我
われ
らと
汝
なんぢ
らとに
足
た
るまじ、
寧
むし
ろ
賣
う
るものに
徃
ゆ
きて
己
おの
がために
買
か
へ」
10
彼
かれ
ら
買
か
はんとて
徃
ゆ
きたる
間
ま
に
新郎
はなむこ
きたりたれば、
備
そな
へをりし
者
もの
どもは
彼
かれ
とともに
婚筵
こんえん
にいり、
而
しか
して
門
もん
は
閉
とざ
されたり。
11
その
後
のち
かの
他
ほか
の
處女
をとめ
ども
來
きた
りて「
主
しゅ
よ、
主
しゅ
よ、われらの
爲
ため
にひらき
給
たま
へ」と
言
い
ひしに、
12
答
こた
へて「まことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
我
われ
は
汝
なんぢ
らを
知
し
らず」と
言
い
へり。
13
されば
目
め
を
覺
さま
しをれ、
汝
なんぢ
らは
其
そ
の
日
ひ
その
時
とき
を
知
し
らざるなり。
14
また
或
ある
人
ひと
とほく
旅立
たびだち
せんとして
其
そ
の
僕
しもべ
どもを
呼
よ
び、
之
これ
に
己
おの
が
所󠄃有
もちもの
を
預
あづ
くるが
如
ごと
し。
15
各人
おのおの
の
能力
ちから
に
應
おう
じて
或
ある
者
もの
には
五
ご
タラント、
或
ある
者
もの
には
二
に
タラント、
或
ある
者
もの
には
一
いち
タラントを
與
あた
へ
置
お
きて
旅立
たびだち
せり。
16
五
ご
タラントを
受
う
けし
者
もの
は、
直
たゞ
ちに
徃
ゆ
き、
之
これ
をはたらかせて
他
ほか
に
五
ご
タラントを
贏
まう
け、
17
二
に
タラントを
受
う
けし
者
もの
も
同
おな
じく
他
ほか
に
二
に
タラントを
贏
まう
く。
18
然
しか
るに
一
いち
タラントを
受
う
けし
者
もの
は、
徃
ゆ
きて
地
ち
を
掘
ほ
り、その
主人
しゅじん
の
銀
かね
をかくし
置
お
けり。
19
久
ひさ
しうして
後
のち
この
僕
しもべ
どもの
主人
しゅじん
きたりて、
彼
かれ
らと
計算
けいさん
したるに、
20
五
ご
タラントを
受
う
けし
者
もの
は
他
ほか
に
五
ご
タラントを
持
も
ちきたりて
言
い
ふ「
主
しゅ
よ、なんぢ
我
われ
に
五
ご
タラントを
預
あづ
けたりしが、
視
み
よ、
他
ほか
に
五
ご
タラントを
贏
まう
けたり」
21
主人
しゅじん
いふ「
宜
よ
いかな、
善
ぜん
かつ
忠
ちゅう
なる
僕
しもべ
、なんぢは
僅
わづか
なる
物
もの
に
忠
ちゅう
なりき。
我
われ
なんぢに
多
おほ
くの
物
もの
を
掌
つかさ
どらせん、
汝
なんぢ
の
主人
しゅじん
の
勸喜
よろこび
に
入
い
れ」
22
二
に
タラントを
受
う
けし
者
もの
も
來
きた
りて
言
い
ふ「
主
しゅ
よ、なんぢ
我
われ
に
二
に
タラントを
預
あづ
けたりしが、
視
み
よ、
他
ほか
に
二
に
タラントを
贏
まう
けたり」
23
主人
しゅじん
いふ「
宜
よ
いかな、
善
ぜん
かつ
忠
ちゅう
なる
僕
しもべ
、なんぢは
僅
わづか
なる
物
もの
に
忠
ちゅう
なりき。
我
われ
なんぢに
多
おほ
くの
物
もの
を
掌
つかさ
どらせん、
汝
なんぢ
の
主人
しゅじん
の
勸喜
よろこび
にいれ」
54㌻
24
また
一
いち
タラントを
受
う
けし
者
もの
もきたりて
言
い
ふ「
主
しゅ
よ、
我
われ
はなんぢの
嚴
きび
しき
人
ひと
にて、
播
ま
かぬ
處
ところ
より
刈
か
り、
散
ち
らさぬ
處
ところ
より
斂
あつ
むることを
知
し
るゆゑに、
25
懼
おそ
れてゆき、
汝
なんぢ
のタラントを
地
ち
に
藏
かく
しおけり。
視
み
よ、
汝
なんぢ
はなんぢの
物
もの
を
得
え
たり」
26
主人
しゅじん
こたへて
言
い
ふ「
惡
あ
しく、かつ
惰
おこた
れる
僕
しもべ
、わが
播
ま
かぬ
處
ところ
より
刈
か
り、
散
ちら
さぬ
處
ところ
より
斂
あつ
むることを
知
し
るか。
27
さらば
我
わ
が
銀
かね
を
銀行
ぎんかう
にあづけ
置
お
くべかりしなり、
我
われ
きたりて
利子
りし
とともに
我
わ
が
物
もの
をうけ
取
と
りしものを。
28
然
さ
れば
彼
かれ
のタラントを
取
と
りて
十
じふ
タラントを
有
も
てる
人
ひと
に
與
あた
へよ。
29
すべて
有
も
てる
人
ひと
は、
與
あた
へられて
愈々
いよいよ
豐
ゆたか
ならん。
然
さ
れど
有
も
たぬ
者
もの
は、その
有
も
てる
物
もの
をも
取
と
らるべし。
30
而
しか
して
此
こ
の
無
む
益
えき
なる
僕
しもべ
を
外
そと
の
暗󠄃黑
くらき
に
逐󠄃
お
ひいだせ、
其處
そこ
にて
哀哭
なげき
・
切齒
はがみ
することあらん」
〘40㌻〙
31
人
ひと
の
子
こ
その
榮光
えいくわう
をもて、もろもろの
御使
みつかひ
を
率󠄃
ひき
ゐきたる
時
とき
、その
榮光
えいくわう
の
座位
くらゐ
に
坐
ざ
せん。
32
斯
かく
て、その
前󠄃
まへ
にもろもろの
國人
くにびと
あつめられん、
之
これ
を
別
わか
つこと
牧羊者
ひつじかい
が
羊
ひつじ
と
山羊
やぎ
とを
別
わか
つ
如
ごと
くして、
33
羊
ひつじ
をその
右
みぎ
に、
山羊
やぎ
をその
左
ひだり
におかん。
34
爰
こゝ
に
王
わう
その
右
みぎ
にをる
者
もの
どもに
言
い
はん「わが
父󠄃
ちち
に
祝
しく
せられたる
者
もの
よ、
來
きた
りて
世
よ
の
創
はじめ
より
汝
なんぢ
等
ら
のために
備
そな
へられたる
國
くに
を
嗣
つ
げ。
35
なんぢら
我
わ
が
飢󠄄
う
ゑしときに
食󠄃
くら
はせ、
渇
かわ
きしときに
飮
の
ませ、
旅人
たびびと
なりし
時
とき
に
宿
やど
らせ、
36
裸
はだか
なりしときに
衣
き
せ、
病
や
みしときに
訪
とぶら
ひ、
獄
ひとや
に
在
あ
りしときに
來
きた
りたればなり」
37
爰
こゝ
に
正
たゞ
しき
者
もの
ら
答
こた
へて
言
い
はん「
主
しゅ
よ、
何時
いつ
なんぢの
飢󠄄
う
ゑしを
見
み
て
食󠄃
くら
はせ、
渇
かわ
きしを
見
み
て
飮
の
ませし。
38
何時
いつ
なんぢの
旅人
たびびと
なりしを
見
み
て
宿
やど
らせ、
裸
はだか
なりしを
見
み
て
衣
き
せし。
39
何時
いつ
なんぢの
病
や
み、また
獄
ひとや
に
在
あ
りしを
見
み
て、
汝
なんぢ
にいたりし」
40
王
わう
こたへて
言
い
はん「まことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、わが
兄弟
きゃうだい
なる
此
これ
等
ら
のいと
小
ちひさ
き
者
もの
の
一人
ひとり
になしたるは、
即
すなは
ち
我
われ
に
爲
な
したるなり」
41
斯
かく
てまた
左
ひだり
にをる
者
もの
どもに
言
い
はん「
詛
のろ
はれたる
者
もの
よ、
我
われ
を
離
はな
れて
惡魔󠄃
あくま
とその
使
つかひ
らとのために
備
そな
へられたる
永遠󠄄
とこしへ
の
火
ひ
に
入
い
れ。
55㌻
42
なんぢら
我
わ
が
飢󠄄
う
ゑしときに
食󠄃
くら
はせず、
渇
かわ
きしときに
飮
の
ませず、
43
旅人
たびびと
なりしときに
宿
やど
らせず、
裸
はだか
なりしときに
衣
き
せず、
病
や
みまた
獄
ひとや
にありしときに
訪
とぶら
はざればなり」
44
爰
こゝ
に
彼
かれ
らも
答
こた
へて
言
い
はん「
主
しゅ
よ、いつ
汝
なんぢ
の
飢󠄄
う
ゑ、
或
あるひ
は
渇
かわ
き、
或
あるひ
は
旅人
たびびと
、あるひは
裸
はだか
、あるひは
病
や
み、
或
あるひ
は
獄
ひとや
に
在
あ
りしを
見
み
て
事
つか
へざりし」
45
ここに
王
わう
こたへて
言
い
はん「
誠
まこと
になんぢらに
吿
つ
ぐ、
此
これ
等
ら
のいと
小
ちひさ
きものの
一人
ひとり
に
爲
な
さざりしは、
卽
すなは
ち
我
われ
になさざりしなり」と。
46
斯
かく
て、これらの
者
もの
は
去
さ
りて
永遠󠄄
とこしへ
の
刑罰
けいばつ
にいり、
正
たゞ
しき
者
もの
は
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
に
入
い
らん』
第26章
1
イエスこれらの
言
こと
をみな
語
かた
りをへて、
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ
2
『なんぢらの
知
し
るごとく、
二日
ふつか
の
後
のち
は
過󠄃越
すぎこし
の
祭
まつり
なり、
人
ひと
の
子
こ
は
十字架
じふじか
につけられん
爲
ため
に
賣
う
らるべし』
3
そのとき
祭司長
さいしちゃう
・
民
たみ
の
長老
ちゃうらう
ら、カヤパといふ
大
だい
祭司
さいし
の
中庭
なかには
に
集
あつま
り、
4
詭計
たばかり
をもてイエスを
捕
とら
へ、かつ
殺
ころ
さんと
相
あひ
議
はか
りたれど、
5
又󠄂
また
いふ『まつりの
間
あひだ
は
爲
な
すべからず、
恐
おそ
らくは
民
たみ
の
中
うち
に
亂
らん
起󠄃
おこ
らん』
6
イエス、ベタニヤにて
癩病人
らいびゃうにん
シモンの
家
いへ
に
居給
ゐたま
ふ
時
とき
、
7
ある
女
をんな
、
石膏
せきかう
の
壺
つぼ
に
入
い
りたる
貴
たふと
き
香
にほひ
油
あぶら
を
持
も
ちて、
近󠄃
ちか
づき
來
きた
り
食󠄃事
しょくじ
の
席
せき
に
就
つ
き
居給
ゐたま
ふイエスの
首
かうべ
に
注
そゝ
げり。
〘41㌻〙
8
弟子
でし
たち
之
これ
を
見
み
て
憤
いきど
ほり
言
い
ふ『
何
なに
故
ゆゑ
かく
濫
みだり
なる
費
つひえ
を
爲
な
すか。
9
之
これ
を
多
おほ
くの
金
かね
に
賣
う
りて、
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
に
施
ほどこ
すことを
得
え
たりしものを』
10
イエス
之
これ
を
知
し
りて
言
い
ひたまふ『
何
なん
ぞこの
女
をんな
を
惱
なやま
すか、
我
われ
に
善
よ
き
事
こと
をなせるなり。
11
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
は
常
つね
に
汝
なんぢ
らと
偕
とも
にをれど、
我
われ
は
常
つね
に
偕
とも
に
居
を
らず。
12
この
女
をんな
の
我
わ
が
體
からだ
に
香
にほひ
油
あぶら
を
注
そゝ
ぎしは、わが
葬
はうむ
りの
備
そなへ
をなせるなり。
56㌻
13
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
全󠄃世界
ぜんせかい
、
何處
いづこ
にてもこの
福音󠄃
ふくいん
の
宣傅
のべつた
へらるる
處
ところ
には、この
女
をんな
のなしし
事
こと
も、
記念
きねん
として
語
かた
らるべし』
14
ここに
十二
じふに
弟子
でし
の
一人
ひとり
イスカリオテのユダといふ
者
もの
、
祭司長
さいしちゃう
らの
許
もと
にゆきて
言
い
ふ
15
『なんぢらに
彼
かれ
を
付
わた
さば、
何
なに
ほど
我
われ
に
與
あた
へんとするか』
彼
かれ
ら《[*]》
銀
ぎん
三十
さんじふ
を
量
はか
り
出
いだ
せり。[*或は「銀三十と定めたり」と譯す。]
16
ユダこの
時
とき
よりイエスを
付
わた
さんと
好
よ
き
機
をり
を
窺
うかゞ
ふ。
17
除酵祭
じょかうさい
の
初
はじめ
の
日
ひ
、
弟子
でし
たちイエスに
來
きた
りて
言
い
ふ『
過󠄃越
すぎこし
の
食󠄃
しょく
をなし
給
たま
ふために
何處
いづこ
に
我
われ
らが
備
そな
ふる
事
こと
を
望󠄇
のぞ
み
給
たま
ふか』
18
イエス
言
い
ひたまふ『
都
みやこ
にゆき、
某
それがし
のもとに
到
いた
りて「
師
し
いふ、わが
時
とき
近󠄃
ちか
づけり。われ
弟子
でし
たちと
共
とも
に
過󠄃越
すぎこし
を
汝
なんぢ
の
家
いへ
にて
守
まも
らん」と
言
い
へ』
19
弟子
でし
たちイエスの
命
めい
じ
給
たま
ひし
如
ごと
くして、
過󠄃越
すぎこし
の
備
そなへ
をなせり。
20
日
ひ
暮
く
れて
十二
じふに
弟子
でし
とともに
席
せき
に
就
つ
きて、
21
食󠄃
しょく
するとき
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
汝
なんぢ
らの
中
うち
の
一人
ひとり
、われを
賣
う
らん』
22
弟子
でし
たち
甚
いた
く
憂
うれ
ひて、おのおの『
主
しゅ
よ、
我
われ
なるか』と
言
い
ひいでしに、
23
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
我
われ
とともに
手
て
を
鉢
はち
に
入
い
るる
者
もの
われを
賣
う
らん。
24
人
ひと
の
子
こ
は
己
おのれ
に
就
つ
きて
錄
しる
されたる
如
ごと
く
逝󠄃
ゆ
くなり。されど
人
ひと
の
子
こ
を
賣
う
る
者
もの
は
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、その
人
ひと
は
生
うま
れざりし
方
かた
よかりしものを』
25
イエスを
賣
う
るユダ
答
こた
へて
言
い
ふ『ラビ、
我
われ
なるか』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
言
い
へる
如
ごと
し』
26
彼
かれ
ら
食󠄃
しょく
しをる
時
とき
イエス、パンをとり、
祝
しく
してさき、
弟子
でし
たちに
與
あた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『
取
と
りて
食󠄃
くら
へ、これは
我
わ
が
體
からだ
なり』
27
また
酒杯
さかづき
をとりて
謝
しゃ
し、
彼
かれ
らに
與
あた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
皆
みな
この
酒杯
さかづき
より
飮
の
め。
28
これは
契約
けいやく
のわが
血
ち
なり、
多
おほ
くの
人
ひと
のために
罪
つみ
の
赦
ゆるし
を
得
え
させんとて、
流
なが
す
所󠄃
ところ
のものなり。
29
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、わが
父󠄃
ちち
の
國
くに
にて
新
あたら
しきものを
汝
なんぢ
らと
共
とも
に
飮
の
む
日
ひ
までは、われ
今
いま
より
後
のち
この
葡萄
ぶだう
の
果
み
より
成
な
るものを
飮
の
まじ』
57㌻
30
彼
かれ
ら
讃美
さんび
を
歌
うた
ひて
後
のち
オリブ
山
やま
に
出
い
でゆく。
31
ここにイエス
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ『
今宵󠄃
こよひ
なんぢら
皆
みな
われに
就
つ
きて
躓
つまづ
かん「われ
牧羊者
ひつじかい
を
打
う
たん、さらば
群
むれ
の
羊
ひつじ
散
ち
るべし」と
錄
しる
されたるなり。
32
されど
我
われ
よみがへりて
後
のち
、なんぢらに
先
さき
だちてガリラヤに
徃
ゆ
かん』
〘42㌻〙
33
ペテロ
答
こた
へて
言
い
ふ『
假令
たとひ
みな
汝
なんぢ
に
就
つ
きて
躓
つまづ
くとも
我
われ
はいつまでも
躓
つまづ
かじ』
34
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『まことに
汝
なんぢ
に
吿
つ
ぐ、
今宵󠄃
こよひ
、
鷄
にはとり
鳴
な
く
前󠄃
まへ
に、なんぢ
三
み
たび
我
われ
を
否
いな
むべし』
35
ペテロ
言
い
ふ『
我
われ
なんぢと
共
とも
に
死
し
ぬべき
事
こと
ありとも
汝
なんぢ
を
否
いな
まず』
弟子
でし
たち
皆
みな
かく
言
い
へり。
36
爰
こゝ
にイエス
彼
かれ
らと
共
とも
にゲツセマネといふ
處
ところ
にいたりて、
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ『わが
彼處
かしこ
にゆきて
祈
いの
る
間
あひだ
、なんぢら
此處
ここ
に
坐
ざ
せよ』
37
斯
かく
てペテロとゼベダイの
子
こ
二人
ふたり
とを
伴󠄃
ともな
ひゆき、
憂
うれ
ひ
悲
かな
しみ
出
い
でて
言
い
ひ
給
たま
ふ、
38
『わが
心
こゝろ
いたく
憂
うれ
ひて
死
し
ぬばかりなり。
汝
なんぢ
ら
此處
ここ
に
止
とゞ
まりて
我
われ
と
共
とも
に
目
め
を
覺
さま
しをれ』
39
少
すこ
し
進󠄃
すゝ
みゆきて、
平󠄃伏
ひれふ
し
祈
いの
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ『わが
父󠄃
ちち
よ、もし
得
う
べくば
此
こ
の
酒杯
さかづき
を
我
われ
より
過󠄃
す
ぎ
去
さ
らせ
給
たま
へ。されど
我
わ
が
意󠄃
こゝろ
の
儘
まゝ
にとにはあらず、
御意󠄃
みこゝろ
のままに
爲
な
し
給
たま
へ』
40
弟子
でし
たちの
許
もと
にきたり、その
眠
ねむ
れるを
見
み
てペテロに
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
斯
か
く
一
ひと
時
とき
も
我
われ
と
共
とも
に
目
め
を
覺
さま
し
居
を
ること
能
あた
はぬか。
41
誘惑
まどはし
に
陷
おちい
らぬやう
目
め
を
覺
さま
し、かつ
祈
いの
れ。
實
げ
に
心
こゝろ
は
熱
ねつ
すれども
肉體
にくたい
よわきなり』
42
また
二度
ふたゝび
ゆき
祈
いの
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ『わが
父󠄃
ちち
よ、この
酒杯
さかづき
もし
我
われ
飮
の
までは
過󠄃
す
ぎ
去
さ
りがたくば、
御意󠄃
みこゝろ
のままに
成
な
し
給
たま
へ』
43
復
また
きたりて
彼
かれ
らの
眠
ねむ
れるを
見
み
たまふ、
是
これ
その
目
め
疲
つか
れたるなり。
44
また
離
はな
れゆきて
三
み
たび
同
おな
じ
言
ことば
にて
祈
いの
り
給
たま
ふ。
58㌻
45
而
しか
して
弟子
でし
たちの
許
もと
に
來
きた
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ『
今
いま
は
眠
ねむ
りて
休
やす
め。
視
み
よ、
時
とき
近󠄃
ちか
づけり、
人
ひと
の
子
こ
は
罪人
つみびと
らの
手
て
に
付
わた
さるるなり。
46
起󠄃
お
きよ、
我
われ
ら
徃
ゆ
くべし。
視
み
よ、
我
われ
を
賣
う
るもの
近󠄃
ちか
づけり』
47
なほ
語
かた
り
給
たま
ふほどに、
視
み
よ、
十二
じふに
弟子
でし
の
一人
ひとり
なるユダ
來
きた
る、
祭司長
さいしちゃう
・
民
たみ
の
長老
ちゃうらう
らより
遣󠄃
つかは
されたる
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
、
劍
つるぎ
と
棒
ぼう
とをもちて
之
これ
に
伴󠄃
ともな
ふ。
48
イエスを
賣
う
るもの
預
あらか
じめ
合圖
あひづ
を
示
しめ
して
言
い
ふ『わが
接吻
くちつけ
する
者
もの
はそれなり、
之
これ
を
捕
とら
へよ』
49
かくて
直
たゞ
ちにイエスに
近󠄃
ちか
づき『ラビ、
安
やす
かれ』といひて
接吻
くちつけ
したれば、
50
イエス
言
い
ひたまふ『
友
とも
よ《[*]》
何
なに
とて
來
きた
る』このとき
人々
ひとびと
すすみてイエスに
手
て
をかけて
捕
とら
ふ。[*或は「なんぢの成さんとて來れることを成せ」と譯す。]
51
視
み
よ、イエスと
偕
とも
にありし
者
もの
のひとり
手
て
をのべ、
劍
つるぎ
を
拔
ぬ
きて、
大
だい
祭司
さいし
の
僕
しもべ
をうちて、その
耳
みゝ
を
切
き
り
落
おと
せり。
52
ここにイエス
彼
かれ
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
劍
つるぎ
をもとに
收
をさ
めよ、すべて
劍
つるぎ
をとる
者
もの
は
劍
つるぎ
にて
亡
ほろ
ぶるなり。
53
我
われ
わが
父󠄃
ちち
に
請󠄃
こ
ひて
十二
じふに
軍
ぐん
に
餘
あま
る
御使
みつかひ
を
今
いま
あたへらるること
能
あた
はずと
思
おも
ふか。
54
もし
然
しか
せば
斯
か
くあるべく
錄
しる
したる
聖󠄄書
せいしょ
はいかで
成就
じゃうじゅ
すべき』
55
この
時
とき
イエス
群衆
ぐんじゅう
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
强盜
がうたう
に
向
むか
ふごとく
劍
つるぎ
と
棒
ぼう
とをもち、
我
われ
を
捕
とら
へんとて
出
い
で
來
きた
るか。
我
われ
は
日々
ひゞ
宮
みや
に
坐
ざ
して
敎
をし
へたりしに、
汝
なんぢ
ら
我
われ
を
捕
とら
へざりき。
〘43㌻〙
56
されど
斯
かく
の
如
ごと
くなるは、みな
預言者
よげんしゃ
たちの
書
ふみ
の
成就
じゃうじゅ
せん
爲
ため
なり』
爰
こゝ
に
弟子
でし
たち
皆
みな
イエスを
棄
す
てて
逃󠄄
に
げさりぬ。
57
イエスを
捕
とら
へたる
者
もの
ども、
學者
がくしゃ
・
長老
ちゃうらう
らの
集
あつま
り
居
を
る
大
だい
祭司
さいし
カヤパの
許
もと
に
曵
ひ
きゆく。
58
ペテロ
遠󠄄
とほ
く
離
はな
れイエスに
從
したが
ひて
大
だい
祭司
さいし
の
中庭
なかには
まで
到
いた
り、その
成行
なりゆき
を
見
み
んとて、そこに
入
い
り
下役
したやく
どもと
共
とも
に
坐
ざ
せり。
59
祭司長
さいしちゃう
らと
全󠄃
ぜん
議會
ぎくわい
と、イエスを
死
し
に
定
さだ
めんとて、
僞
いつは
りの
證據
しょうこ
を
求
もと
めたるに、
60
多
おほ
くの
僞證者
ぎしょうしゃ
いでたれども
得
え
ず。
後
のち
に
二人
ふたり
の
者
もの
いでて
言
い
ふ
59㌻
61
『この
人
ひと
は「われ
神
かみ
の《[*]》
宮
みや
を
毀
こぼ
ち
三日
みっか
にて
建
た
て
得
う
べし」と
云
い
へり』[*或は「聖󠄄所󠄃」と譯す。]
62
大
だい
祭司
さいし
たちてイエスに
言
い
ふ『この
人々
ひとびと
が
汝
なんぢ
に
對
たい
して
立
た
つる
證據
しょうこ
に
何
なに
をも
答
こた
へぬか』
63
されどイエス
默
もだ
し
居給
ゐたま
ひたれば、
大
だい
祭司
さいし
いふ『われ
汝
なんぢ
に
命
めい
ず、
活
い
ける
神
かみ
に
誓
ちか
ひて
我
われ
らに
吿
つ
げよ、
汝
なんぢ
はキリスト、
神
かみ
の
子
こ
なるか』
64
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
言
い
へる
如
ごと
し。かつ
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
今
いま
より
後
のち
、なんぢら
人
ひと
の
子
こ
の、
全󠄃能者
ぜんのうしゃ
の
右
みぎ
に
坐
ざ
し、
天
てん
の
雲
くも
に
乘
の
りて
來
きた
るを
見
み
ん』
65
ここに
大
だい
祭司
さいし
おのが
衣
ころも
を
裂
さ
きて
言
い
ふ『かれ
瀆言
けがしごと
をいへり、
何
なん
ぞ
他
ほか
に
證人
しょうにん
を
求
もと
めん。
視
み
よ、なんぢら
今
いま
この
瀆言
けがしごと
をきけり。
66
いかに
思
おも
ふか』
答
こた
へて
言
い
ふ『かれは
死
し
に
當
あた
れり』
67
ここに
彼
かれ
等
ら
その
御顏
みかほ
に
唾
つばき
し
拳
こぶし
にて
搏
う
ち、
或
ある
者
もの
どもは
手掌
てのひら
にて
批
たゝ
きて
言
い
ふ
68
『キリストよ、
我
われ
らに
預言
よげん
せよ、
汝
なんぢ
をうちし
者
もの
は
誰
たれ
なるか』
69
ペテロ
外
そと
にて
中庭
なかには
に
坐
ざ
しゐたるに、
一人
ひとり
の
婢女
はしため
きたりて
言
い
ふ『なんぢも、ガリラヤ
人
びと
イエスと
偕
とも
にゐたり』
70
かれ
凡
すべ
ての
人
ひと
の
前󠄃
まへ
に
肯
うけが
はずして
言
い
ふ『われは
汝
なんぢ
の
言
い
ふことを
知
し
らず』
71
かくて
門
かど
まで
出
い
で
徃
ゆ
きたるとき
他
ほか
の
婢女
はしため
かれを
見
み
て、
其處
そこ
にをる
者
もの
どもに
向
むか
ひて『この
人
ひと
はナザレ
人
びと
イエスと
偕
とも
にゐたり』と
言
い
へるに、
72
重
かさ
ねて
肯
うけが
はず
契
ちか
ひて『
我
われ
はその
人
ひと
を
知
し
らず』といふ。
73
暫
しばら
くして
其處
そこ
に
立
た
つ
者
もの
ども
近󠄃
ちか
づきてペテロに
言
い
ふ『なんぢも
慥
たしか
にかの
黨與
ともがら
なり、
汝
なんぢ
の
國訛
くになまり
なんぢを
表
あらは
せり』
74
爰
こゝ
にペテロ
盟
うけ
ひ、かつ
契
ちか
ひて『
我
われ
その
人
ひと
を
知
し
らず』と
言
い
ひ
出
い
づるをりしも、
鷄
にはとり
鳴
な
きぬ。
75
ペテロ『にはとり
鳴
な
く
前󠄃
まへ
に、なんぢ
三度
みたび
われを
否
いな
まん』とイエスの
言
い
ひ
給
たま
ひし
御言
みことば
を
思
おも
ひだし、
外
そと
に
出
い
でて
甚
いた
く
泣
な
けり。
〘44㌻〙
第27章
1
夜明
よあけ
になりて
凡
すべ
ての
祭司長
さいしちゃう
・
民
たみ
の
長老
ちゃうらう
ら、イエスを
殺
ころ
さんと
相
あひ
議
はか
り、
2
遂󠄅
つひ
に
之
これ
を
縛
しば
り、
曵
ひ
きゆきて
總督
そうとく
ピラトに
付
わた
せり。
60㌻
3
爰
こゝ
にイエスを
賣
う
りしユダ、その
死
し
に
定
さだ
められ
給
たま
ひしを
見
み
て
悔
く
い、
祭司長
さいしちゃう
・
長老
ちゃうらう
らに、かの
三十
さんじふ
の
銀
ぎん
をかへして
言
い
ふ、
4
『われ
罪
つみ
なきの
血
ち
を
賣
う
りて
罪
つみ
を
犯
をか
したり』
彼
かれ
らいふ『われら
何
なん
ぞ
干
あづか
らん、
汝
なんぢ
みづから
當
あた
るべし』
5
彼
かれ
その
銀
ぎん
を
聖󠄄所󠄃
せいじょ
に
投
な
げすてて
去
さ
り、ゆきて
自
みづか
ら
縊
くび
れたり。
6
祭司長
さいしちゃう
ら、その
銀
ぎん
をとりて
言
い
ふ『これは
血
ち
の
價
あたひ
なれば、
宮
みや
の
庫
くら
に
納󠄃
をさ
むるは
可
よ
からず』
7
斯
かく
て
相
あひ
議
はか
り、その
銀
ぎん
をもて
陶工
すゑつくり
の
畑
はた
を
買
か
ひ、
旅人
たびびと
らの
墓地
ぼち
とせり。
8
之
これ
によりて
其
そ
の
畑
はた
は、
今
いま
に
至
いた
るまで
血
ち
の
畑
はた
と
稱
とな
へらる。
9
ここに
預言者
よげんしゃ
エレミヤによりて
云
い
はれたる
言
ことば
は
成就
じゃうじゅ
したり。
曰
いは
く『かくて《[*]》
彼
かれ
ら
値積
ねづも
られしもの、
即
すなは
ちイスラエルの
子
こ
らが
値積
ねづも
りし
者
もの
の
價
あたひ
の
銀
ぎん
三十
さんじふ
をとりて、[*或は「われ」と譯す。]
10
陶工
すゑつくり
の
畑
はた
の
代
しろ
に
之
これ
を
與
あた
へたり。
主
しゅ
の
我
われ
に
命
めい
じ
給
たま
ひし
如
ごと
し』
11
さてイエス、
總督
そうとく
の
前󠄃
まへ
に
立
た
ち
給
たま
ひしに、
總督
そうとく
、
問
と
ひて
言
い
ふ『なんぢはユダヤ
人
びと
の
王
わう
なるか』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
言
い
ふが
如
ごと
し』
12
祭司長
さいしちゃう
・
長老
ちゃうらう
ら
訴
うった
ふれども、
何
なに
をも
答
こた
へ
給
たま
はず。
13
爰
こゝ
にピラト
彼
かれ
に
言
い
ふ『
聞
き
かぬか、
彼
かれ
らが
汝
なんぢ
に
對
たい
して
如何
いか
に《[*]》おほくの
證據
しょうこ
を
立
た
つるを』[*或ば「重大なる」と譯す。]
14
されど
總督
そうとく
の
甚
いた
く
怪
あや
しむまで、
一言
ひとこと
をも
答
こた
へ
給
たま
はず。
15
祭
まつり
の
時
とき
には、
總督
そうとく
群衆
ぐんじゅう
の
望󠄇
のぞみ
にまかせて、
囚人
めしうど
一人
ひとり
を
之
これ
に
赦
ゆる
す
例
れい
あり。
16
爰
こゝ
にバラバといふ
隱
かく
れなき
囚人
めしうど
あり。
17
されば
人々
ひとびと
の
集
あつま
れる
時
とき
、ピラト
言
い
ふ『なんぢら
我
わ
が
誰
たれ
を
赦
ゆる
さんことを
願
ねが
ふか。バラバなるか、キリストと
稱
とな
ふるイエスなるか』
18
これピラト
彼
かれ
らのイエスを
付
わた
ししは
嫉
ねたみ
に
因
よ
ると
知
し
る
故
ゆゑ
なり。
19
彼
かれ
なほ
審判󠄄
さばき
の
座
ざ
にをる
時
とき
、その
妻
つま
、
人
ひと
を
遣󠄃
つかは
して
言
い
はしむ『かの
義人
ぎじん
に
係
かゝは
ることを
爲
す
な、
我
われ
けふ
夢
ゆめ
の
中
なか
にて
彼
かれ
の
故
ゆゑ
にさまざま
苦
くる
しめり』
20
祭司長
さいしちゃう
・
長老
ちゃうらう
ら、
群衆
ぐんじゅう
にバラバの
赦
ゆる
されん
事
こと
を
請󠄃
こ
はしめ、イエスを
亡
ほろぼ
さんことを
勸
すゝ
む。
61㌻
21
總督
そうとく
こたへて
彼
かれ
らに
言
い
ふ『
二人
ふたり
の
中
うち
いづれを
我
わ
が
赦
ゆる
さん
事
こと
を
願
ねが
ふか』
彼
かれ
らいふ『バラバなり』
22
ピラト
言
い
ふ『さらばキリストと
稱
とな
ふるイエスを
我
われ
いかに
爲
す
べきか』
皆
みな
いふ『
十字架
じふじか
につくべし』
23
ピラト
言
い
ふ『かれ
何
なに
の
惡事
あくじ
をなしたるか』
彼
かれ
ら
烈
はげ
しく
叫
さけ
びていふ『
十字架
じふじか
につくべし』
24
ピラトは
何
なに
の
效
かひ
なく
反
かへ
つて
亂
らん
にならんとするを
見
み
て、
水
みづ
をとり
群衆
ぐんじゅう
のまへに
手
て
を
洗
あら
ひて
言
い
ふ『この
人
ひと
の
血
ち
につきて
我
われ
は
罪
つみ
なし、
汝
なんぢ
等
ら
みづから
當
あた
れ』
〘45㌻〙
25
民
たみ
みな
答
こた
へて
言
い
ふ『
其
そ
の
血
ち
は、
我
われ
らと
我
われ
らの
子孫
しそん
とに
歸
き
すべし』
26
爰
こゝ
にピラト、バラバを
彼
かれ
らに
赦
ゆる
し、イエスを
鞭
むち
うちて
十字架
じふじか
につくる
爲
ため
に
付
わた
せり。
27
ここに
總督
そうとく
の
兵卒
へいそつ
ども、イエスを
官邸
くわんてい
につれゆき、
全󠄃
ぜん
隊
たい
を
御許
みもと
に
集
あつ
め、
28
その
衣
ころも
をはぎて、
緋色
ひいろ
の
上衣
うはぎ
をきせ、
29
茨
いばら
の
冠冕
かんむり
を
編
あ
みて、その
首
かうべ
に
冠
かむ
らせ、
葦
あし
を
右
みぎ
の
手
て
にもたせ
且
かつ
その
前󠄃
まへ
に
跪
ひざま
づき、
嘲弄
てうろう
して
言
い
ふ『ユダヤ
人
びと
の
王
わう
、
安
やす
かれ』
30
また
之
これ
に
唾
つばき
し、かの
葦
あし
をとりて
其
そ
の
首
かうべ
を
叩
たゝ
く。
31
かく
嘲弄
てうろう
してのち、
上衣
うはぎ
を
剝
は
ぎて、
故
もと
の
衣
ころも
をきせ、
十字架
じふじか
につけんとて
曵
ひ
きゆく。
32
その
出
い
づる
時
とき
、シモンといふクレネ
人
びと
にあひしかば、
强
し
ひて
之
これ
にイエスの
十字架
じふじか
をおはしむ。
33
斯
かく
てゴルゴタといふ
處
ところ
、
即
すなは
ち
髑髏
されかうべ
の
地
ち
にいたり、
34
苦味
にがみ
を
混
ま
ぜたる
葡萄酒
ぶだうしゅ
を
飮
の
ませんとしたるに、
嘗
な
めて、
飮
の
まんとし
給
たま
はず。
35
彼
かれ
らイエスを
十字架
じふじか
につけてのち、
籤
くじ
をひきて
其
そ
の
衣
ころも
をわかち、
36
且
かつ
そこに
坐
ざ
して、イエスを
守
まも
る。
37
その
首
かうべ
の
上
うへ
に『これはユダヤ
人
びと
の
王
わう
イエスなり』と
記
しる
したる
罪標
すてふだ
を
置
お
きたり。
38
爰
こゝ
にイエスとともに
二人
ふたり
の
强盜
がうたう
、
十字架
じふじか
につけられ、
一人
ひとり
はその
右
みぎ
に、
一人
ひとり
はその
左
ひだり
におかる。
62㌻
39
徃來
ゆきき
の
者
もの
どもイエスを
譏
そし
り、
首
かうべ
を
振
ふ
りていふ、
40
『《[*]》
宮
みや
を
毀
こぼ
ちて
三日
みっか
のうちに
建
た
つる
者
もの
よ、もし
神
かみ
の
子
こ
ならば
己
おのれ
を
救
すく
へ、
十字架
じふじか
より
下
お
りよ』[*或は「聖󠄄所󠄃」と譯す。]
41
祭司長
さいしちゃう
らも、また
同
おな
じく
學者
がくしゃ
・
長老
ちゃうらう
らとともに、
嘲弄
てうろう
して
言
い
ふ、
42
『
人
ひと
を
救
すく
ひて
己
おのれ
を
救
すく
ふこと
能
あた
はず。
彼
かれ
はイスラエルの
王
わう
なり、いま
十字架
じふじか
より
下
お
りよかし、さらば
我
われ
ら
彼
かれ
を
信
しん
ぜん。
43
彼
かれ
は
神
かみ
に
依
よ
り
賴
たの
めり、
神
かみ
かれを
愛
いつく
しまば
今
いま
すくひ
給
たま
ふべし「
我
われ
は
神
かみ
の
子
こ
なり」と
云
い
へり』
44
ともに
十字架
じふじか
につけられたる
强盜
がうたう
どもも、
同
おな
じ
事
こと
をもてイエスを
罵
のゝし
れり。
45
晝
ひる
の
十二
じふに
時
じ
より
地
ち
の
上
うへ
あまねく
暗󠄃
くら
くなりて、
三時
さんじ
に
及
およ
ぶ。
46
三時
さんじ
ごろイエス
大聲
おほごゑ
に
叫
さけ
びて『エリ、エリ、レマ、サバクタニ』と
言
い
ひ
給
たま
ふ。わが
神
かみ
、わが
神
かみ
、なんぞ
我
われ
を
見
み
棄
す
て
給
たま
ひしとの
意󠄃
こゝろ
なり。
47
そこに
立
た
つ
者
もの
のうち
或
あ
る
人々
ひとびと
これを
聞
き
きて『
彼
かれ
はエリヤを
呼
よ
ぶなり』と
言
い
ふ。
48
直
たゞ
ちにその
中
うち
の
一人
ひとり
はしりゆきて
海綿
うみわた
をとり、
酸
す
き
葡萄酒
ぶだうしゅ
を
含
ふく
ませ、
葦
あし
につけてイエスに
飮
の
ましむ。
49
その
他
ほか
の
者
もの
ども
言
い
ふ『まて、エリヤ
來
きた
りて
彼
かれ
を
救
すく
ふや
否
いな
や、
我
われ
ら
之
これ
を
見
み
ん』
50
イエス
再
ふたゝ
び
大聲
おほごゑ
に
呼
よば
はりて
息
いき
絕
た
えたまふ。
51
視
み
よ、
聖󠄄所󠄃
せいじょ
の
幕
まく
、
上
うへ
より
下
した
まで
裂
さ
けて
二
ふた
つとなり、また
地震
ちふる
ひ、
磐
いは
さけ、
52
墓
はか
ひらけて、
眠
ねむ
りたる
聖󠄄徒
せいと
の
屍體
しかばね
おほく
活
い
きかへり、
〘46㌻〙
53
イエスの
復活
よみがへり
ののち
墓
はか
をいで、
聖󠄄
せい
なる
都
みやこ
に
入
い
りて、
多
おほ
くの
人
ひと
に
現
あらは
れたり。
54
百卒長
ひゃくそつちゃう
および
之
これ
と
共
とも
にイエスを
守
まも
りゐたる
者
もの
ども、
地震
ぢしん
とその
有
あ
りし
事
こと
とを
見
み
て、
甚
いた
く
懼
おそ
れ『
實
げ
に
彼
かれ
は
神
かみ
の
子
こ
なりき』と
言
い
へり。
55
その
處
ところ
にて
遙
はるか
に
望󠄇
のぞ
みゐたる
多
おほ
くの
女
をんな
あり、イエスに
事
つか
へてガリラヤより
從
したが
ひ
來
きた
りし
者
もの
どもなり。
56
その
中
なか
には、マグダラのマリヤ、ヤコブとヨセフとの
母
はは
マリヤ
及
およ
びゼベダイの
子
こ
らの
母
はは
などもゐたり。
63㌻
57
日
ひ
暮
く
れて、ヨセフと
云
い
ふアリマタヤの
富
と
める
人
ひと
きたる。
彼
かれ
もイエスの
弟子
でし
なるが、
58
ピラトに
徃
ゆ
きてイエスの
屍體
しかばね
を
請󠄃
こ
ふ。ここにピラト
之
これ
を
付
わた
すことを
命
めい
ず。
59
ヨセフ
屍體
しかばね
をとりて
淨
きよ
き
亞麻󠄃
あま
布
ぬの
につつみ、
60
岩
いは
にほりたる
己
おの
が
新
あたら
しき
墓
はか
に
納󠄃
をさ
め、
墓
はか
の
入口
いりくち
に
大
おほい
なる
石
いし
を
轉
まろば
しおきて
去
さ
りぬ。
61
其處
そこ
にはマグダラのマリヤと
他
ほか
のマリヤと
墓
はか
に
向
むか
ひて
坐
ざ
しゐたり。
62
あくる
日
ひ
、
即
すなは
ち
準備
そなへ
日
び
の
翌󠄃日
よくじつ
、
祭司長
さいしちゃう
らとパリサイ
人
びと
らとピラトの
許
もと
に
集
あつま
りて
言
い
ふ、
63
『
主
しゅ
よ、かの
惑
まどは
すもの
生
い
き
居
を
りし
時
とき
「われ
三日
みっか
の
後
のち
に
甦
よみが
へらん」と
言
い
ひしを、
我
われ
ら
思
おも
ひいだせり。
64
されば
命
めい
じて
三日
みっか
に
至
いた
るまで
墓
はか
を
固
かた
めしめ
給
たま
へ、
恐
おそ
らくはその
弟子
でし
ら
來
きた
りて
之
これ
を
盜
ぬす
み「
彼
かれ
は
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へれり」と
民
たみ
に
言
い
はん。
然
しか
らば
後
のち
の
惑
まどひ
は
前󠄃
まへ
のよりも
甚
はなは
だしからん』
65
ピラト
言
い
ふ『《[*]》なんぢらに
番兵
ばんぺい
あり、
徃
ゆ
きて
力
ちから
限
かぎ
り
固
かた
めよ』[*或は「汝ら番兵か用ひよ」と譯す。]
66
乃
すなは
ち
彼
かれ
らゆきて
石
いし
に
封印
ふういん
し、
番兵
ばんぺい
を
置
お
きて
墓
はか
を
固
かた
めたり。
第28章
1
さて
安息
あんそく
日
にち
をはりて、
一週󠄃
ひとまはり
の
初
はじめ
の
日
ひ
のほの
明
あか
き
頃
ころ
、マグダラのマリヤと
他
ほか
のマリヤと
墓
はか
を
見
み
んとて
來
きた
りしに、
2
視
み
よ、
大
おほい
なる
地震
ぢしん
あり、これ
主
しゅ
の
使
つかひ
、
天
てん
より
降
くだ
り
來
きた
りて、かの
石
いし
を
轉
まろ
ばし
退󠄃
の
け、その
上
うへ
に
坐
ざ
したるなり。
3
その
狀
さま
は
電光
いなづま
のごとく
輝
かゞや
き、その
衣
ころも
は
雪󠄃
ゆき
のごとく
白
しろ
し。
4
守
まもり
の
者
もの
ども
彼
かれ
を
懼
おそ
れたれば、
戰
おのゝ
きて
死人
しにん
の
如
ごと
くなりぬ。
5
御使
みつかひ
、こたへて
女
をんな
たちに
言
い
ふ『なんぢら
懼
おそ
るな、
我
われ
なんぢらが
十字架
じふじか
につけられ
給
たま
ひしイエスを
尋󠄃
たづ
ぬるを
知
し
る。
6
此處
ここ
には
在
いま
さず、その
言
い
へる
如
ごと
く
甦
よみが
へり
給
たま
へり。
來
きた
りてその
置
お
かれ
給
たま
ひし
處
ところ
を
見
み
よ。
7
かつ
速󠄃
すみや
かに
徃
ゆ
きて、その
弟子
でし
たちに「
彼
かれ
は
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へり
給
たま
へり。
視
み
よ、
汝
なんぢ
らに
先
さき
だちてガリラヤに
徃
ゆ
き
給
たま
ふ、
彼處
かしこ
にて
謁
まみ
ゆるを
得
え
ん」と
吿
つ
げよ。
視
み
よ、
汝
なんぢ
らに
之
これ
を
吿
つ
げたり』
〘47㌻〙
64㌻
8
女
をんな
たち
懼
おそれ
と
大
おほい
なる
歡喜
よろこび
とをもて、
速󠄃
すみや
かに
墓
はか
を
去
さ
り、
弟子
でし
たちに
知
し
らせんとて
走
はし
りゆく。
9
視
み
よ、イエス
彼
かれ
らに
遇󠄃
あ
ひて『
安
やす
かれ』と
言
い
ひ
給
たま
ひたれば、
進󠄃
すゝ
みゆき、
御足
みあし
を
抱
いだ
きて
拜
はい
す。
10
爰
こゝ
にイエス
言
い
ひたまふ『
懼
おそ
るな、
徃
ゆ
きて
我
わ
が
兄弟
きゃうだい
たちに、ガリラヤにゆき、
彼處
かしこ
にて
我
われ
を
見
み
るべきことを
知
し
らせよ』
11
女
をんな
たちの
徃
ゆ
きたるとき、
視
み
よ、
番兵
ばんぺい
のうちの
數人
すにん
、
都
みやこ
にいたり、
凡
すべ
て
有
あ
りし
事
こと
どもを
祭司長
さいしちゃう
らに
吿
つ
ぐ。
12
祭司長
さいしちゃう
ら、
長老
ちゃうらう
らと
共
とも
に
集
あつま
りて
相
あひ
議
はか
り、
兵卒
へいそつ
どもに
多
おほ
くの
銀
かね
を
與
あた
へて
言
い
ふ、
13
『なんぢら
言
い
へ「その
弟子
でし
ら
夜
よる
きたりて、
我
われ
らの
眠
ねむ
れる
間
ま
に
彼
かれ
を
盜
ぬす
めり」と。
14
この
事
こと
もし
總督
そうとく
に
聞
きこ
えなば、
我
われ
ら
彼
かれ
を
宥
なだ
めて
汝
なんぢ
らに
憂
うれひ
なからしめん』
15
彼
かれ
ら
銀
かね
をとりて
言
い
ひ
含
ふく
められたる
如
ごと
く
爲
し
たれば、
此
こ
の
話
はなし
ユダヤ
人
びと
の
中
うち
にひろまりて、
今日
けふ
に
至
いた
れり。
16
十
じふ
一
いち
弟子
でし
たちガリラヤに
徃
ゆ
きて、イエスの
命
めい
じ
給
たま
ひし
山
やま
にのぼり、
17
遂󠄅
つひ
に
謁
まみ
えて
拜
はい
せり。
然
さ
れど
疑
うたが
ふ
者
もの
もありき。
18
イエス
進󠄃
すゝ
みきたり、
彼
かれ
らに
語
かた
りて
言
い
ひたまふ『
我
われ
は
天
てん
にても
地
ち
にても
一切
すべて
の
權
けん
を
與
あた
へられたり。
19
然
さ
れば
汝
なんぢ
ら
徃
ゆ
きて、もろもろの
國人
くにびと
を
弟子
でし
となし、
父󠄃
ちち
と
子
こ
と
聖󠄄
せい
靈
れい
との
名
な
によりてバプテスマを
施
ほどこ
し、
20
わが
汝
なんぢ
らに
命
めい
ぜし
凡
すべ
ての
事
こと
を
守
まも
るべきを
敎
をし
へよ。
視
み
よ、
我
われ
は
世
よ
の
終󠄃
をはり
まで
常
つね
に
汝
なんぢ
らと
偕
とも
に
在
あ
るなり』
〘48㌻〙
65㌻